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96話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 ガネーシャさんが「よろしければご案内致しましょうか?」と申し出てくれたので、ありがたく案内してもらうことにした。


 最初は今、俺たちがいる1階のレストランフロアからのようだ。


「この階はご覧の通り、一度に大勢のお客様をご案内できるよう、このようなシステムにしました。これで人件費も抑えられますしね」


 カウンターの奥には今も料理を作っているプレイヤーが数人いる。1つのカウンターごとに3、4人はいるから数十人近くはこのギルドに調理系ジョブのプレイヤーが所属していることになのか。


「これだけの人数揃えるのどうやったんだ?」

「他のギルドから来てもらったんですよ」

「つまり、引き抜き?」

「ええ、例えばあそこにいる方はメイカーの転移門広場前のレストランにいた方ですよ」


 そう言ってガネーシャさんが指差したのは俺が食べたカレーを作ったプレイヤーだ。

 ちょっと待てよ、俺、そのレストラン行ったことあるよな。ヘムジン商会に加入した日ぐらいにマリオと2人で入った広場に面した店、たしかそこでも俺はカレーを食べたんだっけ。 

 同じプレイヤーが作っていたから前に食べたような気がしたんだろうか。


「それにしても、引き抜きねぇ……」

「はい、それ相応の額でこちらに移籍していただきました」


 笑顔で答えるガネーシャさんとは対照的にマスターは浮かない顔をしていた。





 あまり長くは店を開けていられないマスターとアガサが一足先に帰り、俺一人が次に案内されたのは、玄関をまっすぐ進んだ先にある階段を昇った2階のフロアだ。こちらも多くのお客で溢れかえっていた。

 この階はアイテムや武器防具などの販売をしているフロアのようだ。受付のようなカウンターで仕切られた向こう側で数名のプレイヤーがアイテムを作っている。こっちも下と同じで多くの生産職のプレイヤーが仕事をしていた。


「このフロアは武器防具などを作っているフロアですね。もちろんお客様にも販売もしていますよ? オーソドックスな武器を始めとして装飾品やネタ装備などさまざまな生産系ジョブのプレイヤーを集めました。そして、なんといっても目玉商品はこちらです!」


 連れてこられたのは、フロアの一番奥、最もお客が集まっている店だ。その人ごみの向こうからは慌てたような女の子の声が聞こえてくる。


「はーい、ちょっと待っていてくださいね。はいポーション30個ですね、合計で──」


 聞こえてくるのはマリオが露天を開いていた時のような台詞ばかりだ。マリオがポーション製作が可能だと知られて一気にプレイヤーがポーションを買い求めて来て俺とマスターで列形成をしたのを覚えている。

 つまり、これって……そういうこと?


「そうです、うちでもポーション販売をしているんですよ」


 う、嘘だろ? マリオからは【調薬】持ちが増えているとは聞いていたけど、まさかこんな近所にもう1つポーション屋が出来るなんて何考えてるんだよこいつ。下手したら客が割れてお互いに稼ぎが減るだけじゃないか。

 俺の驚く顔に満足気なガネーシャさんだが、さらに驚くべきことを追加してきた。


「さらに、値段をよく見てください」


 脇に置いてあるメニュー表を覗くと、MPポーションなどいくつか種類のあるポーションの値段がそれぞれ表示されている。

 その中にある普通のHPポーションの値段は80エンと表示されている。マリオの店で売っている普通のHPポーションの値段は1個100エンだからこっちの方が20エン安いことになる。


 正直なところ、普通のポーションなら薬草系のアイテムとポーション製作キットさえあれば作れるらしいから、マリオ曰くビニール傘並みに原価の割には定価が高いそうだ。今は素材アイテム等はわざわざフィールドに採りに行かずに全部店で買っているから少しはお金がかかるらしいけど。


「うちに所属する【農家】のジョブのプレイヤーがメイカーに買った畑で薬草等を大量生産しているので、材料費を安く済ますことが出来るんですよ」


 あー、そういやダイモンさんとこのギルドホームがある辺りって畑とかったよな。あそこ買えるんだ。

 確かにそれなら種さえ買っちゃえば一気に素材が手に入るよな。


「このメイカーという街は現在、低から中レベルのプレイヤーの主な拠点となっています。ですので出来るだけ安く提供できるように思いまして」


 少しの間待ってお客が途絶えたタイミングを見計らってポーション屋の女の子に話しかける。

 マリオと同じような白衣を着たその女の子は俺の半分くらいの高さしかなく、眉毛にかかるくらいの長さで切り揃えられた前髪が特徴でデフォルトのままなのだろうか、黒い髪と幼さの残る顔立ちが合わさって日本人形みたいな女の子だった。見た目的には白に近いかもしれない。

 だが、その子は初対面のはずなのに、何故か俺のことを知っている様子だった。


「もしかしてあなたがキントウさんですか?」

「え、何で知ってるの?」

「マリオさんからいろいろとお話を聞いてますよ。なんでも金遣いが荒くて女の子ばかりを働かせているとか」

「……うん、まあそうなんだけど」


 おい、マリオのやつ、明らかに悪意のある紹介の仕方だろそれ。金遣いが荒いのはジョブの性質上なだけであってな、白ばかりを働かせているのは認めるけど。

 最近任せっきりだし、久しぶりにトランプとか使うか。あと新しい武器も見つけたいな……ダルクさんに頼んでみよ。


「えーっと、君の名前を教えてくれる?」

「あっ、すいません自己紹介がまだでしたね。わたしミナモトといいます。これでも19なんですよ? キントウさん、年下だと思ってたでしょ」


 ミナモトと名乗った19歳(自称)の女の子は悪戯っぽく笑いながら俺の顔を覗き込んでくる。うん、完全に年下だと思ってました、女の子って年齢が分かりにくい人とかたまにいるよね。





 お客が入ることができるのはこの2階までで、残りはギルドメンバー専用のフロアになっているそうだ。

 再び1階に降りてきてガネーシャさんの説明を聞いている。


「現在のギルドメンバーは総勢で300名程で今も募集中です。どうです、キントウさんもうちに来ませんか? お金とか大変でしょう?」

「今のところは大丈夫ですよ」


 適当に誤魔化して俺はガネーシャさんのギルドを出た。


△ ▲ △ ▲


「今戻りましたー」

「それで、どうだった?」

「なんというか、駅前に出来た大型スーパーに客を取られる地元商店街の気持ちが分かったような気がします……」


 通りを挟んで反対の自分のギルドに帰り、3階にいたヘムジンさんに報告する。実際、さっき帰ってきた時もクランキーズには人があまり入っていないようだった。

 ちょうどマリオが2階から上がってきたところだったので、ミナモトさんのことも伝えておいた。  


「えっ、嘘でしょ? ミナちゃんがあのギルドに入ってるって!?」

「本当だよ、お前俺のこと変な風に紹介しただろ」

「あ、バレた?」


 まったく、あの紹介だけじゃ俺が最低な人間みたいじゃないか。ミナモトさんは信じてなかったから良かったものの、サツキさんとかだったら簡単に騙されそうだ。


「それで、どうなんですか? クランキーズに影響は出ますかね」

「聞いた感じじゃあまり客層は被らなそうだけど……」

「だけど?」

「僕以外に儲けている奴がいるのはなんか嫌だ!」


 ですよねー、きっとそう言うと思ってましたよ。

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