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91話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 暗い地下遺跡から元来た道を戻り、地上に出る。

 いつの間にか太陽は地平線の彼方へ沈み、岩と茶色い地面だけが広がる荒野は真っ暗になっていた。


 イベントリから転移門を使って、メイカーのギルドホームに戻ってきた。ここ最近はずっとグリスとバックスの宿でログインしていたので久しぶりに戻ってきたことになる。

 1階のクランキーズから中に入るなり店の手伝いに行こうとするユリアさんを3階のリビングまで引っ張ってきて、座らせる。


「じゃ、ユリアさん、謎の解説をお願いします」

「お願いしますっ!」


 俺とサツキさんが向かいに腰掛け、話を聞くモードになる。ホームズだって最後にはワトソンに説明してるんだ、ユリアさんだって説明してくれないと、モヤモヤが取れなくて気持ち悪い。


「そうですね、それでは僭越ながらご説明させていただきます」


 と言ってユリアさんは1つのウィンドウを俺たちにも見えるようにして出す。真っ白で何も書かれていないウィンドウだ。

 これはプレイヤーがメニューから使えるメモ機能で、自由に書いたり消したりすることができる。これを出したってことは図を描きながらの説明になるということだろう。


「まず、あの部屋には棺桶が円形に20個並び、中心に1つ置かれていました」


 メモに20個長方形を円形に並べ、中央に1個長方形を書く。あの部屋の見取り図だろう。


「始めと2行目の文章はそのまま、腕輪と首輪の説明です。そして3行目【おひるをすぎたおひさまは、ちへいせんへおりていく】という文章です。その時に使ったのがこちらです」


 ユリアさんはここで一旦話を切り、イベントリから新たにアイテムを取り出した。あの部屋でも見ていた箱だ。そこまで大きくなく、手のひらサイズといったところだろうか。

 その箱の中から出てきたのは、円盤状の物体だった。表面には時計でいう、12時、3時、6時、9時のところにN,E,S,Wとかかれていて、円盤の中心には時計の短針のようなものが1本付いている。それがクルクルと回り、ある一方向を指して止まった。


「コンパスですか?」

「はい」


 コンパスはもう用済みなのか再びイベントリに閉まったユリアさんは次にメモの上に並んでいる20個の棺桶のうち、1つにNと書き入れた。


「あそこで方角を調べ、東西南北の確認をしました。その時にサツキさんには真南の棺桶のそばに立ってもらいました。いちいちコンパスを見ながらでは面倒でしたので」

「私、ただの目印だったんですか……」


 落ち込むサツキさんは置いといて、ユリアさんはNの反対側の棺桶にSと書き、Sの棺桶から時計回りに5個進んだ棺桶にWの文字を書いてその反対の棺桶にはEと書いた。

 これで方角は分かったわけだが、それでどうなるのかはまだ分からない。ユリアさんの説明は続く。


「3行目の前半部分【おひるをすぎたおひさまは】の部分ですが、昼とは太陽が南に来た時のことを意味します。つまり「南側にある棺桶から数えろ」というわけです。次に【ちへいせんへおりていく】はその通り、太陽が西に沈んでいくという意味で「南から西に向え」ということです。南から数えて西までの間には棺桶がちょうど5個、つまり指輪の返す棺桶を表していたのです。指輪には赤い宝石がはまっておりましたので、それも太陽を意味していたのではないかと思います」


 そう言いながらメモの左下に並んでいる5個の棺桶にチェックを入れていく。真南に指輪が入らないのは「すぎたころ」って書いてあるからだろうか。


「そして最後の3行が残りの剣を入れる棺桶の場所を示しているのです。3行目から【おひさま】は南を表すことが分かっておりますので、【おう】は北向きであることが分かります。ですので1本目は【おう】つまり中心の棺桶に、2本目は【かべ】つまり真北の棺桶に、最後の剣は【せなか】、真南の棺桶に入ることになります。以上がこの謎の説明でございます」


 解説を聞いて、なるほどと感心してしまった。はっきり言ってユリアさんが居なかったら絶対に解けなかっただろう。俺なんかマジ役立たずだし。ただの金稼ぎ屋だし。





 翌日、今日はアガサが戦闘班の日だったけど、待ってもログインしてくる気配が無かったのでユリアさんと二人でグリスのビビちゃんの家へ向かう。


「あっ! もしかしてあなた達が……?」

「ええ、まあ」


 家を訪ねるとそこには元気に快復したお母さんの姿が、隣にいるビビちゃんも嬉しそうにしてる。

 どうしてもお礼がしたいとそのまま中に案内され、リビングのテーブルに座らされる。


「今回は本当にありがとうございました」

「ございました」


 2人揃って頭を下げてくる。ここまで感謝されると、なんだか恥ずかしいな。


「何かお礼に渡せるものがあればいいのですが……」

「そんなに気にしないで下さい」

「しかしそれでは私の気が治まりません」


 どうしても何かお礼がしたいと言い張るお母さん。報酬なんかは関係ないとまではいかないけど、あまり気にしていないから別に無くても構わないんだけどな。

 しばらく何かないものかと悩んでいる様子のお母さんだったが、なにかピンとくるものがあったのだろうか、「ちょっと待っていてください」と言い残して2階へ行ってしまう。

 少しして降りてきたお母さんの腕にはなにやら古そうな木でできた箱が抱えられていた。


「これは我が家で代々受け継がれていたものです」


 開けられた箱の中に納まっていたのは小さいハンドベルのような物。取っ手の部分には何かの生き物の形が彫られている。


「私の家は昔からこのグリスで生活していたそうで、このベルはグリスに棲む生物との約束の品だそうです。これを鳴らせばどんな所へでも1回だけグリスの動物が助けに来てくれるという約束をご先祖様が樹海の主と交わしたらしいのですが、私には無用の長物ですのでお譲りします」


 突然のレアアイテムの登場に驚きを隠せないでいる俺とユリアさん。グリスの動物が助けてくれる? なにそれ、超レアじゃないの?


アイテム名:約束の小鐘 レア度10


効果:使用すると1回のみグリス樹海に生息するモンスターがプレイヤーを助けてくれる。出現するモンスターはランダム。


【クエスト:少女の母親 をクリアしました】


 ハンドベルを受け取るのと同時にシステムメッセージが届く。これでビビちゃん達のクエストは完了だな。


 お母さんに改めて御礼を言ってから家を出る。ギルドに帰るために転移門へ向かって少し歩くと、後ろから誰かにちょいちょい、と裾を引っ張られた。振り返ってみれば息を切らして荒い呼吸をしているビビちゃんが。


「あの……これ」


 彼女の手に握られていたのはいくつかの薬草。どこででも手に入るようなやつだ。


「お母さんを助けてくれてありがとう」


 そう言って俺に薬草を握らせると、すぐに引き返して行ってしまった。彼女なりのお礼ということだろう。


「良かったですねキントウ様」

「帰ったらマリオにポーション作って貰いましょうか」

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