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83話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 

「ちょ、落ちついて! どうしたんですか」


 クエストを受注してくれたプレイヤーが居たことがよほど嬉しかったのか未だ興奮気味の金髪青年を宥めながらクエストの詳しい内容を聞き出すために話を進める。今、取り戻せるとか何とか言ってたけど、何か無くしたんだろうか。


「え、ああ、すいません。やっと受けてくれる人が来てつい……それで頼みたいことなんだけど、君はこの街に裏カジノがあることは知ってるかい?」

「裏カジノ?」


 なんか新しい単語が出てきたぞ。そもそもこの街に着いたばかりだし、裏なんてつくぐらいなんだからきっと簡単には行けない様な場所なんだろう。


「裏カジノっていうのは、簡単に言えば国営じゃないカジノのことかな。この国(セイレス)では普通のカジノは全て国営のカジノなんだけど、裏カジノは個人とかが運営していて、要は非合法カジノかな」

「それで、その非合法カジノがどうかしたんですか?」

「うん、それでなんだけどね……えっとね……」


 今まで裏カジノについてペラペラ説明していたと思ったら、肝心なところで歯切れが悪くなる金髪。まぁカジノっていう単語が出てきた時点で大体の内容は察したけど。

 バツの悪そうに頭を掻く金髪青年の姿を改めて上から下まで見る。

 綺麗な金髪に俺よりもやや高い身長、全体的にスラリとした印象を受ける。

 身に着けている服は俺たちが始めに着ていた様な初心者用の服や街のNPC達が着ているようなものと同じだが、右手の中指にはまっている指輪だけが場違いなほど目立っていた。それだけ服に似合わず高そうというか、高貴な感じがするというか。


「つまり裏カジノで負けたんですよね?」

「……はい」

「ちなみにおいくらほど?」

「100億エンほど……」

「そうですか、それでは頑張って下さい私はこれで」

「えっ! ちょっと、待ってよ! このままじゃ俺ヤバいんだよ! 親に殺されるかもしれない」


 真に申し訳ないがこの件はお断りさせてもらおう。ハッキリ言って桁が違い過ぎた。なんですか100億って、そもそもよくそんな大金持ってるな金髪。っていうかこんなバカする息子は殺されて当然だろうが。


 うちのギルドの総資産がどれくらいか把握してないけど、このゲーム内で一番稼いでるであろう我がヘムジン商会をもってしても一度にそんなには集められないんじゃないんだろうか。


「なんでそんな大金注ぎ込んだんですか!?」

「いや、次に勝てばー! って繰り返してたらさ」


 ダメだ、こいつ典型的な賭け事で破滅するタイプだわ、やっぱり関わるべきじゃないかも。

 集合時間まで一時間だし100億なんて大金ポンと渡せるわけ無いだろ。


「まぁ、そのなんだ、強く生きて下さい?」

「み、見捨てないでよ!?」

「いやだって不可能でしょそれとも取り返す方法があるの?」

「うん、ある」


 金髪はそこだけははっきりと明言した、顔もかなり本気だ。これは冗談抜きで100億集める方法があるみたいだな。


「わかった、まず話だけ聞きます。その前に依頼内容をはっきりさせて下さい。100億欲しいのか、それとも100億集めるのを手伝って欲しいのか」


 前者ならこのまま回れ右だ、報酬が何であれ現実的に厳しすぎる。

 後者だった場合は……まぁ、こちらも方法次第だな。


 青年はオホンと咳払いをし、背筋を正す。ついさっきまでは今にも泣きそうな敗者の顔だったのがもうギャンブラーの顔つきに戻っている。


「それでもちろん100億集めるのを手伝ってもらいたいんだけど。方法はやっぱりカジノで稼ぐのが手っ取り早いよね」

「お前はバカか!」


 やっぱり無理だったとドアの方へ向かおうとするが、金髪が服を掴んで話さない。ついこの間カジノで負けたばかりなのにまたカジノって、こいつ頭おかしいんじゃないの?


「最後まで聞いてよ、次にやるのは俺じゃなくて」

「まさか、俺が?」


 金髪が指差すのは俺だ。つまり金髪のために俺が裏カジノで100稼げということらしい。

 うーん、どうだろうカジノかぁ、最近行ってないな。

 ……なんか出来そうな気してきたんだけど。ってか負ける気が無いわ、だってLuc特化だもん、唯一の武器だもんLuc。


「この依頼を受けたったことは条件をクリアしてるんでしょ? ならイケるはずだよ」


 そりゃ条件はクリアしてますよ、軽く10倍くらいは。確かMAXで600はいってたはず。

 俺が悩み始めたのを見て、好機と思ったのかそこで金髪は更に驚くべき事実で追い討ちをかけて来る。


「それで成功報酬なんだけど、実は俺……この国(セイレス)の王子だったりするんだよね」

「……おーじ?」

「そうそうプリンス。そういえば自己紹介がまだだったね。俺はセイレス王国王子、リリックだ」


 そう言うって右手の指輪を見せつけてくる。そこにはセイレスの湖で捕れる鮭モドキが二匹交差している姿が彫られていた。これが王家の証ってことか、だからこれだけは手放さなかったんだな。

 服装の割りにやけに浮いた指輪を着けてると思ったらあなた王族の方でしたか。

 おい待てよ、こいつ王子なんだろ? だとしたら、


「なに国民の税金を賭けでスってるんだよ!? なんのための税金だよ!?」

「そこだけは本当に申し訳ない……」


 まったく、民主主義じゃ考えられないぞこんなこと。民衆にバレたら革命ものだな確実に。


「そ、そういうわけで、お金さえ戻ってくればバレる事もないし、権力に物言わせてある程度ならなんでも報酬として渡せるけど……どうかな、取引成立?」

「あー、もうわかった! やるだけやってみますよ。でも今は時間あまり無いからすぐには無理ですよ」

「じゃあこの宿で待ってるからなるべく早く来てね」 


 取引成立、ということで金髪青年改めセイレス王国王子、リリックの摩った金を集めることになった。まさかこんなクエストだったとは夢にも思わなかったな。

 べ、別に報酬に目が眩んだわけではない、断じて釣られたわけではないからな。

 それにしても100億か、途轍もない額だな。グラムの王城とまではいかないが、それだけあれば宮殿クラスのギルドホームを買えるくらいの額だろうし。


 だが内心、俺の運がどこまで通用するか案外楽しみだったりもするのは内緒だ。

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