表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/131

84話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 ユリアさん達と別れてからもう三十分ほど経っている。王子の泊まっている宿を出て集合場所である転移門広場に向かおうとしているのだが案の定、迷ってしまった。


 マップを頼りになんとか現在地は判明したのだが、ここはまだ慣れていない街の路地裏だ。そこら中に同じような外見の建物が並びいくら歩いても進んだような気になれない。街を造った奴は最初から迷わせるつもりで設計してるのかね。

 おまけに宿を出てから時々すれ違うNPCらしき人々の視線が360度から突き刺さり、なんとも居心地が悪いのだ。誰もが、敵意は無いけど警戒はしている、みたいな目で見てくる。 

 やっぱりよそ者は嫌われるのかね。こういうのもクエストを消化していけばフレンドリーになってくれたりするのかも。






 それから40分ほどかけて、ようやく目的地に辿り着くことが出来た。改めてマップを確認してみれば、王子の居る宿からここまではほんの2~3キロの距離で走れば数分で着くのに何故40分もの時間を要したのかというと、単純に土地勘が無く迷っていたのとあともう一つ、


「おっさん達に騙された……」


 途中、路地で出会ったおっさんNPCに道を聞いたところ「ギブアンドテイクだ」と言われ、つまり金を要求されたのだが、渡す額は自由に決められるらしく、いくら渡せばいいのか分からなかったので適当に100エンを渡し、「……あっちだ」とおっさんが指さした方向に走ったら何故か広場から離れていてそこでようやく騙されたことに気が付いたわけだ。


 たぶん渡した金額が一定以下の場合嘘の情報を流すNPCだったんだろう。流石に100エンじゃ安いだろうと思っていたが、まさか騙されるとまでは思っていなかったな。


 おかげで宿からさらに遠い地点からこの広場まで走ることになり、たったいま着いたわけだ。


「あ、キントウさん、こっちですよ」


 声の方へ顔を向けると、先に来ていた二人の姿が目に入る。うん、どこにいても目立つな。

 二人と合流して、それぞれ自由時間の出来事を報告することになった。


「では私から、街の店を主に見てまわったのですが、荒野の街というだけあって、ポーションなどの回復アイテムや薬草系の素材はどれも値段が高いようですね。その代わり、武器防具は若干性能は下がりますがどれも低価格でした」

「え、えっと、私は素材屋を探していたんですけど、ユリアさんの言っていた通りでした。特に情報が無くてすいませんっ!」

「自由行動だし、別に構わないよ」

「そうですよ、私が好きでやっているだけなので」


 申し訳無さそうな顔をするサツキさんを見て、俺とユリアさんは苦笑する。前もだけどサツキさんってしょっちゅう謝ってるよな。謝ること自体は悪いわけじゃなくてむしろ良いことなんだろうけど、他人行儀というか遠慮しているというか……

 同じギルドのメンバーなんだし、そんな事でいちいち謝らなくても誰も気にしないしな。きっとジョブの所為で苦労したんだろうな、爆弾魔。


「えー、じゃあ最後に俺の報告。要約すると、セイレス王国王子に貸しを作ることになりそうです」

「……どういうことですか(でしょうか)?」


 二人にクエストを受けたら依頼者がセイレスの王子だったこと、依頼の内容が金を集めることだということ、遺跡の方が片付いたらしばらく自由行動をしたいことを説明する。


 二人とも最初は依頼者が王子という部分に驚いていたが、目標金額を聞いた時には更に驚いている様子だった。

 サツキさんは「わけがわからないよ」とでも言うようにポカンとしているし、ユリアさんに至ってはキャラがブレていた。


「え、ちょ、ひゃ、100億エンって!? ……オホン、キントウ様、どうするお積もりなのですか」

「この街に裏カジノがあるらしいのでそこで稼ごうかと」

「裏カジノですか」

「王子もそこでスッったみたいですし、そういうところなら100億くらいは一日で集まると思います」

「でしたら早く遺跡に向かって【怨念】の謎を解決致しましょうか」


△ ▲ △ ▲


 茶色い荒れた大地を一台の馬車が走り抜ける。動く物が少なく、吹き付ける風の音以外はほとんど無音と言っていい土地の中ををただ一つ音を発てている馬車の中に俺たちはいた。


「馬車ってすっごい揺れるんだな」

「舗装もされてないところを走っていまので」

「ゴムタイヤって偉大な発明だったんですね、うっぷ……」


 サツキさんが盛大に酔っている様子が最早状態異常レベルに達したところで一旦馬車を止めてもらう。


「あんたら、こんなところまで何の用だね。ここいらには何にも無いぞ?」


 馬車の運転手であるおっさんNPC(騙されたのとは別人)が汗を拭きながらこちらにやってくる。

 遺跡に向かうためにバックスを出ようとした時、門の近くで客引きをやっていたのがこのおっさんだ。話を聞いてみれば指定した場所まで馬車で運んでくれるらしい。要はタクシーだな、歩くより断然速く進むことが出来る。

 唯一の懸念は襲ってくるモンスターは自分で相手をしなければならず、もし馬車がモンスターに壊されたら弁償しなければいけない点だろうか。


「そりゃ、馬車が通れれば何処にでも連れて行ってやるとは言ったがこんな所に運んだのはあんたらが始めてだよ」


 どうやらNPCたちは遺跡の存在を知らないみたいだな。その遺跡は随分と僻地にあるのか、巧妙に隠されているのか。





 サツキさんが落ち着いたところで再び馬車が走り出す。時々モンスターに遭遇するが、大抵はスピードで振り切ることが出来る。しかし《リザードランナー》だけはしつこく何処までも追いかけてくるので迎撃しなければならない。

 初めて見た時は地平線の向こうから土埃を上げてこちらに向かってくる姿に驚いたが、ユリアさんの狙撃とサツキさんの置きボムであっさり撃破し、俺はただ見ているだけの状態だった。


「3時と8時方向から敵です。3時がリザードランナーのようですので8時は無視して構いません」

「しっかり守っておくれよ~」


 呑気に手綱を弄びながら馬を走らせるおっさんの声を聞きながら右手に目を向けると確かに土埃を上げて近づくリザードランナーの姿が確認出来る。


「すいませんっ、ユリアさんお願いしますっ」


 マンガに出てきそうな黒くて丸い爆弾を抱えたサツキさんに応えるようにユリアさんが馬車の後ろから身を乗り出すようにして弓を構える。


 俺はこの前ネコネコさんが持っていた物と同じ双眼鏡を取り出して目標の動きを観察する。まだ距離があり土埃もたっているので肉眼ではまっすぐ馬車に向かっているのか、並んで走っているのか分からないからな。


「リザードランナーは馬車と並走してます」

「ありがとうございますキントウ様」

「ほら近づいてくるぞ~」

「おっさんは運転に集中しろ!」


 茶々を入れてくるおっさんを黙らせてユリアさんの方に視線を戻す。あのおっさん、商売文句で「この道40年!」とか言ってたし、慣れてるのかね。だからあんなに余裕そうなのかも。


 そんな事を考えているうちにユリアさんが放った矢は土埃の中心に向かっていき、数秒後パッと土埃が消える。彼女の矢が足かどこかに刺さって足が止まったのだろう、その間に馬車は速度を上げて逃げ切ることが出来た。


△ ▲ △ ▲ 


「ほい、到着。ここがあんたらの指定した場所だ」


 おっさんの声と同時に馬車は停止する。目の前には他のと比較にならないくらい巨大な岩が転がっていた。


「この通りデカイ岩しか無いが……いいのか?」

「ああ、運んでくれてありがとう」

「また使う時にはよろいしくな~」


 そう言い残して元来た道を引き返していく。……モンスターは大丈夫なのだろうか。


 改めて地面から生える様にして立っている岩の正面に立つ。縦に長い柱のような形をしていて、高さは5m幅は1.5mちょっと、イベントで戦った石像と同じくらいだが、土の下にも続いているみたいで全体の大きさは分からない。

 そこら辺にも岩は転がっているが、これほどの大きさを持つ物はほとんど無く、この岩だけが異様に目立っていた。


「お母様から受け取ったメモによれば、これが遺跡の入り口のようですね」

「入り口って言ったって……」

「どう見てもただのおっきい岩ですよね?」


 岩の周りをグルッと1周して岩を観察するが、どこからどう見ても正真正銘ただの岩だ。軽く殴ったり蹴ったりしてみるも、手足が痛くなるだった。


「試しに発破します?」

「そ、それは最終手段だから!」


 薄茶色で筒状の爆弾らしき物を取り出して早くも何処に仕掛けるか検討中のサツキさんを慌てて押しとどめる。この娘、危険だわ……


 とそこで、ビビちゃんのお母さんに渡されたメモを読んでいたユリアさんが「あっ」と小さく声を漏らした。そして食い入るようにメモを見つめている。


「遺跡はここで間違いないようです。入り口もその岩です、正しい手順を踏まないと入れないようです」

「本当ですか?」

「先ほどまでこの場所しか書かれていなかったメモですが、たった今見てみたら内容が変わっておりました。目的地に着くと変化する仕組みだったようですね」

「なるほど、それで入り口の開け方は?」

「まずはキントウ様、岩の正面に立って下さい」

「……分かりました」


 開け方を聞いたのにいきなり岩の前に立てって、意味不明だがとりあえず従っておく。となりではサツキさんがワクワクしながら発破の準備を進めている。……絶対これで開けないと。


「ではまず、岩に沿って時計回りで1周してください」

「はぁ」


 言われた通りに岩に沿って右回りで1周する。


「次に反時計回りに2週してください」

「2週ですね」

「更にその場で3回飛び跳ねてから三跪九叩頭です」


 さ、三跪九叩頭って、確か一回跪いて三回頭を地面に付けるのを三回繰り返す奴だっけ? 世界史か何かで写真を見たことがあるような。まあ、やるか。


 1,2,3……9と、まさかとは思うけどこれが入り口を開ける方法じゃないよね? ユリアさんの冗談か何かでしょ?

 やだなーこんなタイミングで冗談なんて、真面目にやっちゃったじゃん。今考えてみれば岩に向かって三跪九叩頭なんて傍から見ればただのバカじゃん。早く開ける方法教えて下さいよ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


 ……嘘だぁ、こんなのってあり得るのかよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ