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82話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 視界一面に広がる茶色の大地。時折吹く乾いた風が頬を撫で、僅かに生えた植物を揺らす。

 ここは湖に浮かぶ街セイレスから東に進んだところに広がる【スタル荒野】という名前の荒野だ。ゴロゴロとした大きな岩など以外はほとんど何も無く、木々が多く視界の悪かったグリスとは対照的な印象を受ける。


 あれほど来たがっていた荒野だが、いざ来てみても特に何も感じなかった。ただ「荒野に来たなぁ」くらいにしか思わなかった。もっと感動する予定だったんだけどなぁ、事情が事情なだけにな。


 グリスに住むビビちゃんのお母さんの謎の状態異常【怨念】の元を探すべくお母さんに教えてもらった遺跡とやらに向かうためにこうして荒野に足を踏み入れたわけなのだが。


「何も無いな……」

「視界も良いから遠くでも見つけられるし、ユリアさんの弓で狙撃できますしね」

「この一帯は魔法職や遠距離型ジョブのレベル上げの場として有名ですね。八時の方向に一体居ました」


 と言いながら、矢を何本か放って遠くのモンスターを串刺しにするユリアさん。【魔力探知】と遠距離攻撃のコンボってえげつないな。


 今日は先日、アガサが無理言ってサツキさんと店番を変わってもらっていたのでサツキさんが戦闘班に加わっている。ネコネコさんも行きたがっていたが、流石に自分のギルドをこれ以上放置するわけにも行かず、泣く泣く離脱していった。

 今日から再び三人パーティに戻ることになる。ネコネコさんみたいな前衛職がいるとずいぶん楽できるんだけどな。今度メンバーが増える時には条件を前衛職のプレイヤーにしてもらおう。





 さんさんと照りつける太陽の下を歩き、最初の目的地である荒野の街【バックス】に到着する。ユリアさんのおかげで戦闘らしい戦闘も無くあっさりと着いてしまった。

 あれ、おかしいな、ここら辺はまだ最前線のはずなんだけど?


 【WELCOME!!】と大きく書かれた看板の横を通り過ぎ、少し進むとそこには西部劇の様な町並みが広がっていた。街の真ん中を貫いている大きな通りが奥の方まで伸びていて、その通りに沿うように店やら家やらが並んでいる。

 マップを確認すると、やはり大きな通りと無数の路地で形成されていて、初見なら確実に迷いそうな街の構造をしていた。


 ただ、最前線でしかも人気の街というだけあってプレイヤーの数はグリスとは比較にならないくらい多く、通りも大勢のプレイヤーでごった返していた。


「うわぁ、人多いですね」

「現在、全プレイヤーの約四割ほどがこの街を拠点に活動しているそうです」

「それにしてはここまで来る時にあまり人を見かけなかったけどな」


 すれ違ったのが何組か、追い越したのも数組程だろう。本当に四割もこの街にいるのか?


「基本この街で宿を取るか、転移門を使ってますからね。セイレスから歩くのなんて、初めての人か変わり者くらいですよ」


 初めてでも誰かに転移門で連れて行ってもらうこともありますし、と付け加えるサツキさんの話を聞きながら、行き交う人たちを観察する。

 

 どいつもこいつも強そうな装備で身を固めていて、レベルも高いみたいだ。所属ギルドも分かるのでついでに見ておくと、やはり【軍】や【まほいち】所属のプレイヤーが多く、他にもいくつか同じようなギルド名を見ることが出来た。ネコネコさんとこのギルドメンバーも数人見かけた。


△ ▲ △ ▲


 今回の目的がダンジョンの調査ということで、グリスの様に一日や二日で終わりそうにないので、先に宿を取っておくことにした。ユリアさんとサツキさんは毎回メイカーのギルドホームまで帰るそうだ。


「宿も取ったし、これから遺跡に行ってみますか。それとも自由時間取ります?」


 もしくは、街の外に出てモンスターと戦ってみるか、かな。

 まあ、少しでも路地に入ったら何時間か出てこられない自信があるし俺は街探検がいいな。どんな店とかがあるのか気になるしね。


「そうですね、それでは一時間後に転移門前に集合でよろしいですか?」

「それなら私は素材が無いか見てきますね」


 というわけで、一時解散となり、各々が行きたい場所に散っていく。サツキさんは素材探しに、ユリアさんは店などのチェックだろうな。


 一応、自由行動を提案したものの、正直言って特にやることもない俺なのだが、何をして時間を潰そうか。


 これだけプレイヤーもいるんだから生産職のプレイヤーも多いだろうし、露天も沢山出ているだろう。そこでぶらぶら冷やかすのもいいだろうし、何処か適当な店に入ってみるのもいいかもしれない。もしかしたらクエストとかが発生するかもしれないし。


 今までの経験則的に関係無さそうなクエストでも何回かクリアしていくうちに街の人の好感度が上がっていくらしい、といことは分かっている。

 仲良くなれば何か新しい情報が貰えるかもしれないし、只今絶賛クエスト進行中の身だが、別のクエストにも挑戦してみようか。一時間もあるし二、三個くらいはクリアできるだろ。


 少し通りを歩くと、大きな掲示板のような物が道の端に立っていて、その周りには小さな人だかりが出来ている。

 バックスではこの掲示板から街のクエストを受けることができ、随時更新中だそうだ。今も何人かのプレイヤーがクエストを受けてその場を立ち去ったと思ったら、別のプレイヤーがやってきて受けるクエストを探し始めていた。


 俺もその人ごみに混ざって、クエスト一覧を眺める。

 基本的にモンスターの素材集めやポーション系などの納品クエスト、他にも荷馬車護衛などのどの街でも見かけるようなクエストが並んでいる。どの街でも同じような悩み事を抱えているってことだろうか。


 何を受けようか一覧を見ていると、下の方に一つだけ気になるクエストを見つけた。


△ ▲ △ ▲


クエスト:リベンジマッチ

依頼者:バックスの青年


 青年の話を聞き、手助けをせよ!

※受注条件Luc40以上


△ ▲ △ ▲


 クエストの種類によってはこのように受注条件がついていたりするクエストもある。例えば【生産系のクエストならDexが30以上】などステータス以外にも、【片手剣が装備可能なプレイヤー】などの条件も存在する。

 このクエストもそれらと同じような条件付きクエストなのだろうが、なんとなく気になったのだ。


 相変わらず説明が説明じゃない内容なのだが、クエスト名的に何かをリベンジをしたいのだろう。なにはともあれ、受けるだけ受けてみるか。話を聞ければ詳しい内容も分かるだろうし、時間がかかりそうなら後回しにしよう。






 クエストを受注し、その青年が居るというさびれた宿屋の一室にやってくる。扉をノックし返事があったので中に入ると、部屋の中には金髪の青年がベッドに腰掛けて座っていた。

 が、青年は俺の姿を確認した途端、立ち上がってこちらに詰め寄ってきた。えっ、ちょっと何!?


「あなたがクエストを受けてくれた人ですか!?」 

「そ、そうですけど」

「ありがとうございますっ! これで取り返せる!」


 は、取り返す? 何を? さっさとクエスト内容の説明プリーズ。

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