表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/131

76話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 一瞬の空白の後に凄まじい爆発音が樹海内に轟き、少し遅れて熱を持った爆風が吹き寄せてくる。

 スピード特化タイプは紙装甲なのがお約束、いくらエスカペ草といえどもこの爆発じゃ逃げられないだろう。

 未だに消えない爆発で発生した煙の向こう側、爆心地を睨みつけるがその中から動く物の気配は無い。


 やがて煙が消え、爆心地が見えるようになった。クレーター、という言葉がぴったり過ぎるほど言葉通り地面が半球状に抉られ、茶色い地面が露出している。近くに生えていた木は一本として形をとどめている物は無く、辛うじて根を残しているのがやっとだ。


「探知に反応はありません」

「こっちも見当たらないね」


 ユリアさんと双眼鏡を覗くネコネコさんの報告を聞いてようやく一安心する。これで婆さんのクエストは終わりだな。


「これで集めた材料全部使っちゃいましたよぉ〜」

「いっそ買っちゃいなよ。経費で落ちるかもよ?」


 今にも泣きそうな表情のサツキさんを宥めつつ、イベントリを開いてドロップアイテムが無いか確かめる。そもそもうちのギルドに経費ってあったっけ?

 イベントリの中身を新しい順に並び替えるが、それらしいアイテムは入っていなかった。おかしいな、ドロップはLucの影響を少なからず受けるらしいから俺には基本的に毎回ドロップが入っていたのに。ボスの時だって大抵は俺のところにレアドロップが入っていたしね。

 なのに今回に限って俺のところには一つもドロップアイテムが無い。今回だけ運悪く手に入れられなかったのか、それともドロップアイテムを落とさないモンスターだったのか?


 一人首を傾げていると、別の所からも声が上がる。声の主はユリアさんだ。


「キントウ様、図鑑が更新されていません……」

「どいういうこと?」


 俺にも見せてもらうが、確かに最初の時と同じまま、エスカペ草のページだけほぼ真っ白だ。


 何故? という疑問が頭を埋め尽くす。確かに爆発したし、ユリアさんの探知にも引っかからなかった。ネコネコさんにも確認してもらった。

 なのにどうして図鑑の更新が無い?


 可能性の一つとして、今の倒し方じゃカウントされない。

 あり得なくも無いが、スルストだって撃破でカウントされたんだしもし、爆弾の使用が不可だったら何かしらのヒントがあってもいいはずだ。


 そしてもう一つの可能性。できれば考えたくない状況だ。


「えっ、嘘!? 探知に反応です! 後ろです、速すぎる!」


 突然、探知に引っかかった反応に、かなり動揺気味のユリアさんの声で後ろを振り返る。

 一瞬、白い物が見えたと思ったその刹那、地面が眼前に迫っていた。気付けば俺は地面にうつ伏せで倒れていた。HPも少しだが減っている。


「ど、どうしたんですかキントウさん!?」

「今何か見えたんだけど……」


 サツキさんもネコネコさんも俺の身に起こったことが信じられないとでもいいたそうな顔をしている。俺だって信じたくないよ。


 あの爆発の中、エスカペ草が逃げ切ってユリアさんの魔力探知の網の外から攻撃してくるなんて。


△ ▲ △ ▲


「どうする? こっちの攻撃が全く当たらないんだけど」


 ネコネコさんに聞かれるが、俺も良い案は思いついていない。今はただ次に来る攻撃を避けるのに精一杯だ。


 爆発が起きてから二十分、エスカペ草を追い詰めていた俺たちは逆にエスカペ草に追い詰められていた。


 やられたらやり返すのが生き物の本能なのか、あの爆発を逃げ延びたエスカペ草はあろうことか俺たちに反撃してきたのだ。反撃なんてしないで、さっさと逃げて欲しかったよ。

 戦法はいたって単純、ユリアさんの探知外からあり得ないほどの速度で走ってきて俺たちの誰かに攻撃、そのまま探知外へ走り去るというヒットアンドアウェイだ。


 ただ、その走る速度が速すぎて対応が全く追いつかない。反応があったと思ったら、誰かが吹っ飛ばされているという状況だ。

 ユリアさんの探知の範囲が大体直径百mほど、半径五十mなので、奴は五十mを一秒ほどで走り、そのままの速度で離脱しているのだ。


「来ます! 十時の方向です!」

「きゃっ!」


 今度はサツキさんがやられた。一回のダメージは大きくないが、何回も積み重なればやがて力尽きる。まして相手には攻撃が当たらないのだ。俺たちを逃がしてくれそうに無いし、どうしたものか。


「いくら逃げたとはいえ、ダメージは受けているはずです。あと一回攻撃が当たれば倒せると思うのですが」

「それが当たらないんだよねぇ」

「ネコネコさん、動物の勘でどうにかならないですか?」

「いくら私のジョブでもそんなのは無いからね」


 そうこうしているうちにまた一人、吹っ飛ばされ地面に伏せる。今度はネコネコさんだ。


「あーもう嫌だ! あいつ絶対ふっ飛ばしてやる」

「それができたらいいんですけどね」

「残念ながらパーティーに広範囲魔法を使えるジョブはおりませんので」


 広範囲なら大体の位置に放てば当たる可能性があるんだけどな。今この場にいるのが勝負師、メイド、爆破魔、猫憑き。なんだよこの集団。


 広範囲ね、広範囲広範囲こうはんい……

 その時一つだけ方法があることに気付いた。うーん、でもどうだろう。成功するのかなこれ。

 一人で悩んでいてもエスカペ草は止まらない。とりあえず皆に話してみる。





「──っていうのはどう?」

「システム上はそうなりますけど、本当に吹っ飛びますよ? それに手持ちも少ないですし」

「安心しろ、もう吹っ飛ばされるのには慣れた」

「そうだよ、何回吹っ飛ばされたことやら……」

「次、三時です!」


 ユリアさんの言葉と同時に茶色い地面が正面に来る。今度は俺かよ。

 早く終わらせてぇ……


 結果俺の案を試してみることになった。

 まず、全員が出来るだけ固まり、誰が狙われてもいいように一点に集まる。それも確認したらサツキさんの出番だ。


「ほ、本当にやりますよ?」

「早くやらないと、次の攻撃が来るよ」

「りょ、了解です……はい、私たちを囲むように地雷を埋めました。一つ爆発したら連鎖で全部爆発します」


 あとはエスカペ草が突っ込んでくるのを待つだけだ。いくら速くてもあの速度で突っ込んできたら回避は不可能だろう。今度こそ木っ端微塵にしてやんよ。


 そして次の攻撃がやってきた。


「六時方向から来ます!」


 その言葉と同時に皆が身構える。


 そして白い物が目の前に迫った瞬間、再び視界が真っ白に染まり、世界から音が消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ