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75話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 ネコネコさんの目撃情報を頼りに再びエスカペ草の捜索に戻る俺たち。今回は目撃者でもあるネコネコさんも同伴してくれているので、期待できそうだ。

 歩きづらい森の中をスイスイと木々の隙間を縫うように進んでいくネコネコさんについて行きながら遭遇時のことについて聞いてみる。


「それでどんな感じだったんですか?」

「んー、たまたま見つけてなんだろう、って近づいたらこっちに気付いた途端に一目散に逃げ出したから追いかけたんだけど、途中で撒かれちゃった」

「ちなみに速度はどのくらいでしたか?」

「だいたい《リザードランナー》と同じくらいかな」

「なるほど……」


 俺の後に聞いたユリアさんの質問にネコネコさんが答え、ユリアさんは納得の様子だが……

 リザードランナーって何? 新しいモンスター?


「あれ、キントウ君まだ東に行ってなかったけ? 《リザードランナー》はバックス周辺に出るモンスターで、スピードがもの凄く速いの。最近うちのギルドで人気なの、乗れば移動速度が一気に上がるからね」


 コージ君も最近乗ってるよ、と付け加えるネコネコさん。そのリザードランナーがどのくらいの速さか知らないけど、とりあえずエスカペ草は森の中でも荒野で速いと称されるモンスター並みの逃げ足を持っていることだけは分かった。

 それ、どうやって捕まえるん? 無理な気がしてきたの。


△ ▲ △ ▲


 ネコネコさんの案内で連れてこられたのは彼女と遭遇したセーフティーエリアから南に進んだ地点だ。といっても、周り中同じような木ばかりなので地図で確認しなければ実際に移動したのかもわからないくらい同じような風景が広がっているけど。

 とりあえずそれぞれ付近を捜索してみるが、ネコネコさんが見かけたのはもう数十分前のことで案の定、カリフラワー姿のモンスターは居なかった。


「やっぱり居ないか」

「ここで見かけたんですよね」

「うん、方角的にはここら辺のはず」


 と言いつつ周囲を見回すネコネコさんの顔はいまひとつ自信がなさげだ。


 薄暗い森の中をメイド二人とネコミミと男がカリフラワー求めて彷徨い歩く。それだけ聞けばかなり変な集団だろうな。

 その後も探してみたが、流石にこれ以上ノーヒントは難しそうだったので、情報をくれたネコネコさんには悪いが、当初の計画通り一旦街に戻ることにした。

 そのことを彼女に伝えると、


「ごめんね、お礼をしたかったのに。だからこの後も手伝わせてよ」


 ということで、エスカペ草探しをそのまま手伝ってもらうことになった。





 何時間か前に潜った門を再び潜りグリスの街に戻ってくる。グリスの街は出発する前と変わらず、あまりプレイヤーが多くない。街自体も他の街に比べて規模が小さいし、適当に話を聞いていればそのうち当たりが出るだろう。


 まず最初に向かったのはグリス奥の小屋に住む婆さんの所だ。クエストの依頼者でもある婆さんなら何か情報をくれるだろうと思ったからだ。


 初めて来た時となんら変わらない棚に囲まれた部屋の奥の安楽椅子に腰掛けて死んだように眠っている。この人、人が来ないときはずっと寝てるのか。


「おい婆さん、探してる植物、特にエスカペ草についての情報くれ」

「んん? なんだいあんた達か。情報ってこっちが頼んでる側なんだがね。私はほとんど知らないよ。あるとしたらこの部屋の何処かじゃないか?」


 老婆の視線の先には部屋中に散乱した紙の束や本。死んだ爺さんの遺品か何かだろう。爺さんが生涯賭けて探してたっていうなら、見つけるためにそれなりに調査とかをしていたかもしれないな。

 つまり……


「この屋敷からヒントを得ろと」

「あ、あのキントウ君? 私今突然唐突に急な用事を思い出したからこれにて……」

「ネコネコさん? 手伝ってくれるんですよねぇ? 恩を返すとか言ってましたよね?」

「……はい」


 まさかの展開に逃げようとするネコネコさんを捕まえて一緒に探してもらう。一度言ったことを守るって、大切だよね。



 というわけで、二つのクエストを進行中にも関わらず、新たにクエストが発生しました。


△ ▲ △ ▲



クエスト:植物の情報

依頼者:グリスの老婆

報酬:エスカペ草の情報


 老婆の探す植物の情報を手に入れろ。


△ ▲ △ ▲


 もしかしてだけど、他の植物も見つかってなかったらこのクエスト受けないといけなかったんじゃないの? 運よく見つかって良かったよ、本当に。


 雑然と散らばった中から探すのには骨が折れそうだったので、先に片付けることにする。婆さんにも了解を得て片付けた後に情報を探すことになる。

 それじゃ、整理を始めるかと白まで呼び出して意気込んでいたところにユリアさんからの一言が飛んでくる。


「掃除はメイドの仕事ですので、キントウ様と白様、ネコネコ様はしばらくお待ちになっていてください」


 と、部屋の隅に追われサツキさんを連れて二人で片づけを始めてしまった。サツキさんが連れて行かれたのはメイド服だったからだろう、仮にもメイドなら仕事をして当然、ということか。


 しかし、ドジっ子メイドのサツキさんである。ユリアさんが10片付けている間に4ほど引っくり返したりして作業を遅れさせている。


「サツキさん、そこの本をこちらに」

「あ、はい。よいしょっと……うぉわっ!」


 今度は本を運んでいる最中に足が机に引っかかり、盛大に転ぶ。おかげでほこりが舞い、種類別に別けてあったであろう本もごちゃごちゃに混ざってしまった。

 ていうか、今気付いたんだが、ユリアさんってサツキさんのことを「サツキ様」って呼ばないんだな。やっぱり同じメイド扱いなんだろうかね。



 三十分ほど外で待って欲しいと遂にはネコネコさんと二人で小屋を追い出されてしまう。これでもクエストクリアになるのか。

 小屋の前で二人並んでやることもなく佇む。なんとなく微妙な空気が流れ、耐え切れなくなった俺は適当に会話を試みる。


「暇になっちゃいましたね」

「じゃあ……お姉さんとデートしようか」

「はい?」


 



 突然言い出したネコネコさんに手を引かれてやってきたのは転移門広場。グリスでもっとも賑わっている場所だ。

 その隅に設置されているベンチに並んで腰掛け、来るときにかったグリス名物とかいう団子みたいな物を食べる。見た目は緑色の串団子で味は草っぽく、よもぎ餅を思い出した。


 異性と並んで椅子に座り、一緒にスイーツを食べる。確かにやってることはデートっぽいな。でもなんで?

 そんな疑問を胸に隣を見れば、団子をのどに詰まらせている姿が。慌てて飲みポーションを渡し、なんとか街中死に戻りを回避する。


「危ない危ない、死ぬところだったよ。また助けられちゃったね」

「別に気にしないでください。でもなんでいきなりデートなんて言い出したんです?」

「んー、なんとなく?」

「なんとなくですかい……」


 もう一つ団子を頬張る、草っぽい少し苦めの味が口の中に広がる。隣ではネコネコさんが新たに団子を取り出して食べ始めていた。さっき詰まらせるほど食べたいたのにまだ食べるのかよ。


「キントウ君のギルドってさ」


 次にどんな話をすればいいか考えていると、ネコネコさんの方から話を振ってきた。


「ヘムジン商会がどうかしましたか?」

「変人商会って、ゲーム攻略にあまり力を入れてないじゃん?」

「そうですね、基本金儲けがメインなんで」

「楽しい?」

「変な人ばかりですけどね」


 ギルマスが金儲け好きで、コスプレ製作者がいて、アイドルがいて、ケーキ屋とマスターがいて、ポーションマニアもいて。なかなか変なギルドだよなうちって。 

 俺の答えが面白かったのか、吹き出して笑い出すネコネコさん。そんな変なこと言ったけ?


「自覚無いのかもしれないけど、キントウ君もだいぶ変だよ」

「えっ!? どこがですか?」


 どこから見ても正真正銘ただの一般人じゃないですか。俺って。


「変人たちと一緒のギルドでやっていけるところ」

「それを言われると否定できないかも……」


 確かに若干毒されている部分がなきにしもあらずだけど。普通に楽しいしな、変に攻略とかにこだわらないし、皆面白いし。 


 残りの団子を口に放り込み、立ち上がって伸びをしたネコネコさんの顔はどこかすっきりしたような表情をしていた。


「いやー、キントウ君達といると良い気分転換になるよ」

「そうですかね」

「攻略組を目指しているギルマスってのは大変なのよ?」

「そういえばネコネコさんってギルマスでしたね」

「そこ忘れないでよ!?」


△ ▲ △ ▲


 ネコネコさんとのデートが終わって小屋に戻ると、そこには別の部屋があった。

 床にまで散乱していた書類や本はそれぞれ整理され壁の棚にきっちり納まっている。窓が無いので相変わらず暗いが、スペースが開いた分まだマシになった方だ。


「流石ユリアさん」

「申し訳ありません、三十分と言ったはずが一時間も掛かってしまいました」

「違うんです! 私の所為なんです! ユリアさんが片付けている傍から荒らしちゃって……」

「うん、だろうね」


 そこは既に予想できたことなので今更何も思わない。これからはユリアさんもサツキさんのドジを計算に入れることだろう。

 これでやっと本題に入ることが出来る。エスカペ草の情報はあったのかな?


「一応あったはあったんですけど……」


 聞くと、サツキさんがおずおずと一枚の紙を差し出してくる。これに書いてあるってことか。


【エスカペ草は甘い物が好き】


 とだけ、紙の隅の方にメモのように走り書きで書いてあった。たぶん爺さんがかいたんだろうけど、これだけ?

 さんざん掃除して(ユリアさんが)情報探して(ユリアさんが)たったこれだけですか?

 もっとこう、生息地域とか、行動パターン的な情報は無いのかよ。

 やっぱり見つけるのは無理なん……


 あからさまに落胆する俺を見て、サツキさんが慌てたように言ってくる。


「だ、大丈夫です! 私にとっておきの秘策があります!」


△ ▲ △ ▲


 樹海の開けた場所に積まれた大量のケーキ。


 それが目の前の風景を端的に表した言葉だ。

 サツキさんの秘策とやらを試す為に三度樹海に入り、ネコネコさんの目撃地点付近の開けた土地にそれが設置された。


「あれ、何?」

「あまーいケーキです」

「いやそうじゃなくて」

「プリン様の力作でございます」

「いやそうじゃなくって!」

「秘策ってあれ?」

「ねぇ、ケーキ食べていいの?」

「いいですけど、触れたら吹っ飛びますよ?」


 曰く、あのケーキはケーキであってケーキに非ず。サツキさんの爆弾アビリティによって触れればたちまち爆発、ケーキ一個一個が爆弾なので連鎖してさらにダメージが入る、となかなか凶悪なケーキなのだ!


 甘い物が好きだというエスカペ草をおびき寄せるためにユリアさんが持っていたケーキを全て爆弾化してあそこに積んでいるそうだ。あとで食べる予定だったのかな。


 近くに居るとバレてしまうので、スルストの時と同じくユリアさんの探知ギリギリまで離れ、サツキさんの【ハイディング】を発動。エスカペ草が罠に掛かるのを待つ。


「もし爆弾で仕留められなかったらどうする?」

「白ちゃんとネコネコさんが止めを刺してください。ケーキには麻痺を始め、もっている限りの状態異常爆弾を仕込んでいますから」


 サツキさんも案外えげつないことするのね。


 遠くからケーキの山を監視し始めてから約二時間。ようやく目当てのモンスターが現れてくれた。


「モンスターが近づいてきました」

「本当? でも遠くて良く見えないな」

「こんな時は、ちゃちゃちゃん! そうがんきょう(双眼鏡)〜」


 変な効果音と共にネコネコさんがイベントリから双眼鏡を取り出す。こんなアイテムもあるのか。始めて知ったぞ。


「えーっと、どれどれ……そう、あれ! あいつだよ逃がしたの!」


 逃がしたエスカペ草を再び見つけて興奮気味のネコネコさんから双眼鏡を借りて覗き込む。

 レンズに移るエスカペ草は確かにカリフラワーしていた。スルストのようにカリフラワーの本体に手足をくっつけたような見た目をしていて、色以外はスルストと大差ない。


 エスカペ草は周囲を警戒するように辺りを見回しながら空き地に近づいていく。ずいぶんと用心深い性格のようだ。

 やがて危険が無いことを確認するとまっすぐケーキの下へ進み、ケーキに手を伸ばす。

 そしてその手がケーキに触れた途端、視界が真っ白に染まり、何も聞こえなくなった。

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