74話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
次の日、残り二種類の植物を手に入れるために再び樹海へ足を踏み入れる。
ここ最近、でこぼこしてロクに整備されていない森の中ばかり歩きまわっていたから平らな道が懐かしく感じるな。まさか広場で困っていた女の子を助ける為にだだっ広い樹海の中を彷徨うハメになるなんて予想できるわけが無い。さっさと終わらせて新しいエリアに行きたいんだけどな。
そんなことを思い浮かべながら昨日ログアウトしたグリスにある宿から出る。
いちいちギルドに戻ってログアウトするのが面倒くさかったので昨日はグリスでログアウトしたのだ。どうせあと二、三日はかかりそうだし。
集合場所である転移門広場に向かうと先に二人は来ていたらしく、行き交う人々の中でメイド服が異様に目立っている。メイド二人を引き連れた俺って側から見たらどういう風に映るんだろうか。
「すいません待たせちゃって」
「あ、キントウさん、こんにちは」
「それでは参りましょうか」
「今日は何を探すんでしたっけ?」
「エスカペ草だよサツキさん」
街の出入り口である門に向かって歩きながら今日の目的について確認する。やがて門を潜りぬけ樹海に入る。昨日と変わらず薄暗く、乱立する木々で視界が悪い。突然モンスターと鉢合わせたりしないように周囲を警戒しながらの探索だ。
大抵のモンスターは先にユリアさんが見つけてくれるので、問題なく対処できるが前みたいに探知が効かないモンスターがいるかもしれないので、油断はできない。ましては仮にも最前線のエリアだ、いつ強力なモンスターに出会わないとも限らないしね。
昨日だってスルストがあんなのなんて知らなかったから最初はかなり動揺したし。もうエスカペ草がどんな姿をしていても驚かない自信があるよ俺。
△ ▲ △ ▲
「見つからねぇ……」
二時間後、俺たちはセーフティーエリアで休憩をしていた。
昨日一昨日の経験からある程度は予想していたけど、やっぱり見つからない。そもそもスルストみたいに移動できるのかもしれないし、見た目だけでも分かれば探しやすいんだけどな。
今ある情報が『近づくと逃げる』だけだし、一回街に戻って情報収集をし直すのも一つの手かもしれない。
「エスカペ草見つかりませんねぇ……あ、破裂茸みっけ」
「現在地が北東部なので今度は南西部を探してみましょう」
「じゃあ、グリス経由で情報を集めてから行った方がいいですね」
サツキさんがそこら辺の素材を採取している傍らでユリアさんと次の行動を計画する。
ユリアさんも同じ事を考えていたようで俺の考え通り、一旦街でエスカペ草の情報を集めてみることになった。
クエストなんだからしらみつぶしに街の人に話を聞けば一つくらいは情報を手に入れられるだろう。むしろノーヒントで探せとか無理ゲー過ぎるし。スルストに遭遇出来たのもかなりラッキーなことだったしな。
だが、グリスに引き返そうと立ち上がった瞬間近くの茂みが突然ガサガサッと不自然に揺れる。ちょっと待て、ここはセーフティーエリアだよな? だったらモンスターじゃない、プレイヤーか?
風も吹いてないのに揺れる茂みに俺たちの警戒度は一気にMAXまで高まる。それぞれ武器を構えて茂みの向こうにいる『何か』を睨む。
「誰?」
「ぴ、PKってこのゲームありましたっけ?」
「PKは出来ませんが、複数で一人のプレイヤーを囲い、脅すなどの行為は可能です」
つまり追いはぎみたいなことは出来るってことだよな。決闘以外でプレイヤーを攻撃してもダメージは入らずに、衝撃だけ受けるからそれで脅しているんだろう。
震えた声を出すサツキさんを落ち着かせながら念のために白を呼び出す。最悪の場合、二人だけでも逃がして俺と白でどうにかするか。決闘に持ち込めたら負ける気はしない。
そして茂みから影が一つ、ゆっくりと一歩を踏み出してくる。やっぱりプレイヤーか? 来るなら来い! こちとら天下の変人商会じゃ!
「お、お腹すい、た……」ガクッ
「かかって来いやぁ……ってネコネコさん!?」
気合十分、いつでもどんな敵が来てもいいように完全装備の俺の目の前に現れたのは、明るい茶色の髪と髪と同じ色をしたネコミミを装備したギルド【魔物の宴】のギルマスのネコネコさんだった。
えーと、つまり……ネコネコさんが正体?
△ ▲ △ ▲
「いやーキントウ君にはまた借りが出来てしまったね」
手にもった素材アイテム(良く分からないキノコ)を口に放り込みながら快活に笑うネコネコさん。前と同じくレベル上げに熱中してしまい、空腹に苦しんでいたそうだ。とはいえ俺たちも手持ちが少なく、余った素材をそのまま提供したのだが、
「あのネコネコさん? 何故生のままで食べているのですか?」
「おいしそうだったから」
それが何か? とでも言いたそうな顔で返事をするネコネコさんに返す言葉も無い。そもそもシステム的にどうなのよ?
渡したアイテムが無くなる頃には彼女はすっかり元気になり、ネコミミも元気良く動いていた。あれってどうやったら動かせるんだろう?
食べ終わったネコネコさんはステータスやらなんやらを確認してから俺たちに向かって言う。
「さて、この恩に報いるために何かしたいのだが、どうだろう?」
「一緒に来てくれるってことですか?」
「他のことでも構わないぞ、私のリアルのメアドが知りたいのかい?」
「じゃあクエスト手伝って下さい。二人もそれでいいですよね?」
「はい。ユリアと申します、よろしくお願いいたしますネコネコ様」
「さ、サツキですっ! よろしくお願いしますっ!」
ユリアさんが丁寧なお辞儀で、サツキさんがたどたどしく挨拶を終え、ネコネコさんをパーティーに加える。
その後、今俺たちが受けているクエストの大まかな内容を説明し、エスカペ草という植物を探している旨を話す。
「ああ、そんな感じのやつならさっきみかけたな」
「「「えっ?」」」
話終えた途端にさらっと飛び出たネコネコさんの発言に三人の台詞がハモる。
さっき見かけたってどういうことだよ、空腹でフラフラだったじゃんよ。
「まだ空腹でも大丈夫だった時の話なんだけど、モンスター求めて歩いていたら突然動き出したモノがいたんだよ。しかも襲ってくるどころか逃げるように。なんとなく気になって暫く追いかけてたんだけど、途中でガス欠に……」
ひとまずこの森の中にちゃんと生息しているっていうことが分かってよかった。それにネコネコさんはエスカペ草を見ている。外見を知っているってことだ、これはかなりデカイ。街に帰る手間が省けたな。
「それで、そいつはどんな姿だったんですか?」
ネコネコさんはどう言えば良いのかひとしきり悩んだ挙句、こう言ってきた。
「強いて言えば……歩くカリフラワー、かな?」
ブロッコリー系再び現る!?




