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73話

予約投稿ミスってました、すいません

 突然目の前に現れた緑の謎生物に三人とも固まってしまう。

 そりゃそうだろ、植物っていうから普通に生えているのと同じようなイメージだったのに、いきなり飛び出してきたと思ったらブロッコリーが目の前にいるんだもん。


「え、えーと、これが探していた植物だよね」

「プレイヤーに向かって突っ込んできましたし、そうなんでしょうけど」

「想像以上の速度でした。もし追いかけられたら逃げ切れるでしょうか?」


 ブロッコリー改めスルストは興味深そうに俺達のことを眺めていたが、やがてクラウチングスタートのような体勢になりパワーを溜めるような動作をし始めだす。


「もしかしてこれって……」

「もしかしなくても」

「突っ込む寸前ですね」

「逃げろっ!」


 その場で回れ右し、それぞれ全力で逃げる。

 木と木の間を必死にすり抜け可能な限りスルストから距離を取るためにひたすら走る。


「キントウさんっ!」

 

 後ろからサツキさんの叫び声が聞こえ、走りながら振り向いたその瞬間、俺の隣を何かがもの凄い速度で横切り勢い余って近くの木に激突する。

 ズンと重く鈍い音が鳴り、地面がグラっと揺れる。目の前には気に激突し、目を回しているスルストの姿があった。


「あ、危ね……」


 思わず独り言を呟いてしまう。

 あんなの攻撃を無防備で受けたらかなり危険だろう。下手すれば一撃で死に戻りかもしれない。今回はサツキさんに感謝だな。

 

 こちらに向かってきたサツキさんにお礼を言おうとしたら、サツキさんは真面目そうな表情をしながら俺の腕を掴んできた。


 え、何?


△ ▲ △ ▲


「それで、どうするの?」

「ど、どうしましょう!?」


 慌てているサツキさんの視線の先には樹海をのっそりと歩き回るスルストの姿があるはずだ。

 

 サツキさんに腕を引かれユリアさんとも合流し、スルストから遠ざかった俺達は現在、木にぶつかって目を回した所為で俺達を見失ったスルストの後をつけている。ユリアさんの魔力探知のお陰で姿は見えなくともどこにいるかは分かる。それに加えて、


「サツキさんこんなスキル持ってたんだ」

「ソロの時には必須スキルでしたから」


 今の俺たちの姿を別のプレイヤーが見れば、俺たちがいる場所だけ空間が微妙に歪んでいるように見えるだろう。

 これはサツキさんのスキルの一つで【ハイディング】というスキルだそうだ。このスキルを使用すると、一定時間モンスターに気付かれにくくなるそうだ。サツキさんは長らくソロプレイだったそうだからこういったスキルも必要だったのだろう。

 ユリアさんのお陰で十分距離は取って入るが、念の為ということでサツキさんが言い出したのだ。パーティーメンバーにも効果があることは彼女も今日知ったそうだ。


「パーティーにも効果があるって使えるな」

「その分効果は薄くなりますけど無いよりはマシかと思って」

「おかげで他のモンスターにも見つからずに済みますしね」


 俺たちの後ろを通り過ぎていく馬鹿を横目で見ながらユリアさんが言う。


 でだ、問題はあの突っ込んでくるブロッコリー野郎をどうやって倒すかだ。最初に結構遠くから走ってきたのを見るに、あいつの索敵範囲は広いはずだ。近づいている間に正面から突っ込まれて死に戻り、なんてのは是非とも回避したい。


 なかなかいい案が思い浮かばず、スルストの後を追って樹海を彷徨う。近づけばやられるし、遠距離から攻撃するにしても一撃で決めるくらいの威力じゃなきゃすぐに接近される。見た目はHP多そうだし、ユリアさんの弓だけではいささか不安だ。何かいい作戦は無いものだろうか。


「うぅ、私の爆弾ならダメージが入ると思うんですけどね」

「本当か!?」

「で、でも、一発じゃムリです。何個か連鎖させないと」


 サツキさんが言うには、爆弾という武器には連鎖ボーナスという物があるそうだ。

 爆弾を何個か順番に爆発させていくことで相手に与えるダメージが上乗せされるらしい。ちなみに彼女の最大連鎖数は五回だそうだ。大抵のモンスターは最大威力の爆弾を使えば貴重な素材等を消費する代わりに五回以内で倒せていたとか。何それ、どこのパズルゲーだよ。


 その時、サツキさんが何かに気付いたようにブツブツと小さな声で呟き始めた。


「もしかして……弓……連鎖……白ちゃん……」

「何か思いついたの?」

「い、いえ、まだ思いついたといってもぼんやりとしか」

「それでもいいから言ってみて!」

「は、はいぃ!」


△ ▲ △ ▲


「──って感じなんですけど……どうでしょう?」


 一区切り説明をし、おずおずと感想を聞いてくるサツキさん。


「俺は良いと思うけど、ユリアさんはどう?」

「私も賛成です。ですが最後の部分は白様に全てLucをお渡しになったほうが良いと思います」

「それじゃ俺が足手まといになるんだけどなぁ……」 


 まぁその方が成功確率が上がるならしかたないよな。別に足手まといってわけじゃない、適材適所だよな。


 サツキさんの案を決行するためにスルストの後を追いながら条件に合った場所を探す。出来るだけ一直線に進める場所があればベストだ。

 そして三十分ほどかけて条件に合致する場所を見つける。遠くには緑のブロッコリー頭が小さく見える。


「それでは行ってきます」


 サツキさんが一人で【ハイディング】を使い、森にまぎれてスルストの方に駆けていく。あまりスルストが遠くに行ってしまうと失敗するので時間との勝負になる。


 この作戦を簡単に説明すると、サツキさんが俺たちとスルストの間に一列に爆弾を設置し、ユリアさんがこちらから弓を放ってスルストをおびき寄せる。その時走るであろうコースが爆弾の並んだ魔のコースだ。俺たちに向かって走ってくれば、爆発の連鎖の波に飲まれ、それでも倒せなければ弱ったところに白の全力の一撃を与えて終了だ。

 これなら倒せる! はず、おそらく、メイビー……



 一分ほどでサツキさんは帰ってきて俺たちの前に姿を現した。


「設置完了しました」

「よし、じゃユリアさんお願いします」

「かしこまりました」


 今度はユリアさんが弓を構え、遠くにいるスルストに向かって狙いを定める。ゆっくり進んでいてくれているおかげで先ほどとあまり距離は離れていない。ユリアさんの弓がギリギリ届く距離だ。

 俺は白を呼び出し、ありったけのLucを与える。


「どうしたのキントウ、Lucほとんど私に渡して?」

「いいか白、今からブロッコリーみたいなのがこっちに走ってくるから一撃で仕留めろ。でないと俺の身が危険」

「分かった」


 危険という言葉に反応して即答する白。これで準備は万端、あとはユリアさんが弓を放てばスタートだ。


「いきます!」


 掛け声と共に放たれた弓は目にも留まらぬ速さで森の中を突き進み、絶賛鈍行中だったスルストの後頭部に直撃……したよな?


「当たりました。まもなくこちらに突っ込んできます!」

「サツキさんとユリアさんは離れて下さい」

「わ、分かりました……ってうぁっ!」


 慌てて離れようとして木の根につまずくサツキさん。相変わらずのドジっ子だ。


「敵、動き始めました。もうすぐです」

 

 ユリアさんの報告から数秒後、ドォォォン! と大きな爆発音が鳴ったかと思うと、立て続けに五回爆発音が鳴り響く。一回爆発するごとに心臓にまで衝撃が走るほどの威力だ。

 音を聞く限り、どうやらすべての爆弾に引っかかったみたいだな。ここで「やったか?」とか言っちゃうと倒せてないフラグなんだよな。


「もしかして倒しました!?」

「まだです、こちらに突っ込んできます!」


 爆煙と土煙のカーテンを破って俺のいる場所に突っ込んでくるのは今の爆発でだいぶダメージを受けたはずのスルストだ。あれほどの爆発にも関わらず走るスピードは落ちていない。


「白出番だ。全力で頼む」

「出なきゃキントウが死んじゃうもんね」


 俺の前に立った白が迫るスルストに向かって走り出す。

 

「はぁぁぁぁ!」

「・・・・・」


 無言で突っ込んでくるスルストに対し、白は気合十分といった様子で声を出している。やがて自分に向かってくる白を先に倒すことにしたのか、走りながら拳を構えるスルスト。白も一撃で決めるためにパワーを溜めている。


 そして、ついに白とスルストが互いに突き出した拳をぶつけ合った。

 瞬間、二人の動きが止まり、双方の力が拮抗していることが分かる。


 だが止まっていたのはほんの数秒のこと、先の爆発でダメージを受けていたスルストが俺のLucをすべて与えた白に勝てるはずもなく、拳を出したままの状態でポリゴン片と化して消えていく。


「倒せたな」

「お疲れ様でございます」

「お、おつかれさまでしたぁ」

「今のやつ、なかなか手ごわかったね」

「白もお疲れ」

「キントウを守っただけだから」


 イベントリの中には【スルストの身】というアイテムも入っていて、図鑑を開いて確認すれば、しっかりと更新されていた。これで残りはエスカペ草とキュレの花だな。

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