72話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
サツキさんのドジにより、再びグリスへ戻ってきてしまった俺達。
ビビちゃんと婆さんのクエストを受けてから何時間か経過しているが、見つけられたのは先ほどサツキさんが落としたカルの実のみ。
最初は『ある程度探せば見つかるだろ』くらいにしか考えていなかったがこのクエスト、予想以上に時間と労力がかかるかもしれん。報酬もそれに見合ったものならいいんだけど……
小休止を挟んでまた樹海北部へ探索に向かう。行く手を阻むように飛び出してくるモンスターを蹴散らしながら一気に北へ進路を取る。
本当なら今頃は【破裂茸】が集まった時点でさっさと帰って東のバックス方面のエリアに行っていたはずなのに、サツキさんがクエストを開始してしまったばかりにこうして森の中を下を見ながら歩き回るという非常に地味な作業を続けているわけだ。
「そっちありますか?」
「こちらには無いようです」
採取ポイントを確認し、また別の採取ポイントへ移動する。二人が探している間は白と寄ってきたモンスターの排除に専念する。今の白なら最前線といえどもそう簡単には倒されないだろう。
さっき、白を出さずにフルLucで武器を使ってみたが……なんというべきか、賭けになっていないというか、少しの賭け金でも攻撃力が爆発的に膨れ上がるというか、そんな感じだった。そういえばダルクさん元気かなぁ?
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「見つからなかった?」
「はい、やっぱりお爺さんが二十年間探しても見つからなかっただけありますね」
「それに日が落ちてきましたし」
ユリアさんの言葉につられて周囲を見る。いつの間にか太陽が沈み、樹海を夜が支配している。昼でさえも薄暗く、陰鬱な気分にさせられるような場所なのに、夜になり暗さにさらに拍車が掛かっているように見える。
大抵の森って昼夜で出現するモンスターが変わって、夜の方が圧倒的に強かったりするんだよな。この森も例外ではないだろう、今日のところは切り上げて、明日探そうか。
そんな風に考えていた矢先にサツキさんから歓喜の声が上がった。
「これじゃないですか!?」
サツキさんのいるところに駆け寄り、彼女の視線の先にあるものを見る。しかしそこにあるのは腰掛けにちょうど良さそうなサイズの岩が二つ転がっているだけだ。
「何も無いけど」
「たぶんヒデの花ですよ。あの岩と岩の間のところが不自然じゃないですか?」
サツキさんの指差すあたりに向かってジッと目を凝らすと、確かに岩と同じ色の小さなクローバーのような植物が見えた。
それをユリアさんが採取し、図鑑を確認するとちゃんとヒデの花のページが更新されていた。
クローバーのように三つ葉の植物で自身の周りの色と同じ色に同化する性質があるので、生息する環境で様々な色のヒデの花が見られるみたいだ。今回は岩と岩の間に隠れて育ったため、岩色のヒデの花になったようだ。
これを空中で育てたら空色の花とかできるんだろうか? ちょっと気になった。
ヒデの花をゲットし、残るはエスカペ草、スルスト、マニプラテの三種だ。キュレの花は爺さんの図鑑で情報があるのでとりあえず後回しだ。
「残ってるのは厄介なものばかりだな」
「特にマニプラテはモンスターのドロップ扱いのようですし、先にエスカペ草とスルストを探してみてはいかがでしょう?」
というユリアさんの提案で逃げる植物、エスカペ草と突っ込んでくる植物、スルストの捜索が翌日から始まった。
「とは言ったものの、どうやって見つけたもんかね……」
このバカみたいに広大な樹海の中からいったいぜんたいどうやって探せというのか。スルストはそのうち向こうから突っ込んでくるとして、近づくと逃げるって……どうしろと?
「んー、見当たりませんね……あぅ!」
地面を見ながら歩いていたサツキさんが正面の木に頭をぶつけて目を回している。相変わらずドジっ子属性は健在のようだ。
ユリアさんは二つを探す合間に図鑑片手に他の使えそうな植物を採取していたりする。図鑑はパーティーのイベントリに入っているためパーティーメンバーなら誰でも使用可能だ。
「これだけ集めればマリオ様に新しいポーションを開発していただけるでしょうか」
「ゲテモノとかネタポーションの実験体は勘弁なんですけどね」
以前に試作品ポーションを飲んで以来、若干試作品恐怖症になありかけていたりする。何が起こるかも分からず飲む方の身にもなってもらいたいよな。
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それからも植物探しは続き、再び太陽が沈む時間となった。辺りは昨日と同じく暗くなっている。
今日一日樹海を彷徨い、モンスターを排除し、探し続けたが見つからず。手がかりの一つさえ、発見できない有様だ。もうクエスト放棄してバックス行きたい。
そんな俺の願いとは裏腹にサツキさんが俄然やる気のご様子で、
「暗くなってきましたし、今日は引き上げて、明日も頑張りましょー!」
えいえいおー! と右手を上げた時にバランスを崩し、危うく背中から地面にダイブしかけなければ良かったのだが、そこはドジっ子が発動したのだろう。樹海の中で散々見たし、もうだいぶ慣れてきた光景だ。
帰ろうと転移門を展開し、モンスターが寄って来ないか警戒していると、ユリアさんの顔に疑問の表情が浮かんでいるのに気が付いた。
「ユリアさん、そうしたんですか?」
「いえ、何かが猛スピードでこちらに接近しているんですが、何せ初めて見る反応でどのモンスターか判断が付きません」
猛スピードでこちらに近づいてくる何か。
もしかして、夜限定の夜行性モンスターとか。いや待て、猛スピードで接近してくる……まさか!
「それスルストかも!」
「来ます! 二……一……正面です!」
俺が叫ぶのと、ユリアさんの秒読みがゼロになるのはほぼ同時だった。
正面からズドドドドッ! と地を踏みしめる音が聞こえ、木と木の間を縫うように進んでくる一つの影。かなり動きが早く目で追うのがやっとだ。
白を呼び出し、隣に並ばせる。二人も各々得物を持ち臨戦態勢だ。
そして、俺達の目の前に影の正体が現れた。
人間サイズのブロッコリー。それが初っ端、見た感じの第一印象だった。
スーパーで見かけるブロッコリーに同じ色の茎っぽい手足の生えた二足歩行の謎生物。手にあたる茎の先には黒い実のような丸い物体が付いている。
《スルスト》──プレイヤーに突っ込んで来て、両手の実を爆発させる植物。そいつが俺達の目の前に立っていた。
何こいつモンスター!? 植物じゃないのかよ!?




