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48話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 

「キシャァァァァ!!」


 三体のうち一体が倒されたことによって、残りのムカデたちは仲間を殺され、怒り狂ったようにのたうちまわりだす。全員後ろに下がり回避し、再び戦闘が始まった。今度は二体がバラバラではなく、連携のような動きを見せながらこちらに迫ってくる。

 最初から三体で連携してきたらキツい戦いになっていただろうな、なんてこと考えている暇もなく、突っ込んでくるムカデの頭を横に飛んで避ける。

 着地のタイミングを狙ってもう一体のムカデが襲ってくるが、ユリアさんが横槍を入れるようにムカデを射抜き、敵が一瞬怯んだ隙に白の拳が重い一撃を浴びせ、地面に沈める。

 一息つく暇もなく、最初に躱したムカデの方を向くが、先に相手はアガサに狙いを変更したようで、長い体を蛇行させながらアガサに向かっていた。


「キモい! こっちくんな!」

「キシャァァ!」

「させませんよ」

 

 ムカデがアガサに噛みつこうとする寸前、俺の耳元を何かがもの凄い速度で通り過ぎ、次の瞬間にはムカデの頭を矢が貫いていた。思わず振り返ると弓を射た後の体勢のユリアさんがそこにいた。


「危険な真似をして申し訳ありません、キントウ様」

「あ、いえいえ。おかげでアガサが助かりました」

「まだ、殺り終わってないよ」


 白の声に引きずられるようにしてムカデの方を向き直す。ユリアさんのおかげでアガサへの攻撃は止められたが、まだHPは残っていた。

 この間に俺たちの方に逃げてきたアガサを後ろにやり、最後の一体と対峙する。


「それじゃ、最後まで頑張りますか!」


△ ▲ △ ▲


 残りのムカデとの戦いはユリアさんの援護と白の肉弾戦であっさりと終わりを告げた。今まで三体を相手してきたんだから一体くらいなら余裕だよな。

 戦闘が終わるのと同時に、入ってきたときとは反対側の木々が左右に別れ、一本の道が現れた。あれが出口ってことだよな。

 本当は少し休みたいというのが本音だったが、それよりもさっさとこの林から出たいという気持ちが勝り、先に道を進むことにした。


 一本道をしばらく進むと、これまで視界を埋めていた木々が消え、赤い空と夕日に照らされた海が広がっていた。林に入ってから実に五時間ほどは経過しているはずだ。太陽が傾き始めていても不思議ではない。

 林から出た途端、それまで体を支えていた糸が切れたように地面にへたり込んでしまう。


「やっと脱出できた……」

「もう二度と入りたくないよっ!」

「お疲れ様でした」


 少しの間、地面の上に仰向けになって休憩する。周囲の波の音に耳を傾け、赤く染まる空と雲を眺めながら、更に首を後ろに回すと、逆さまの建築物が目に入る。そうだ、これを目指して林に入ったんだっけ? すっかり忘れてたな。

 起き上がってから改めて目の前にそびえ立つ建物を見上げる。石を積み上げて作ったような小さい小屋と灯台みたいな塔が合わさった形をした建築物は半島の先端部分、崖になっているギリギリの場所にひっそりと建っていた。

 長年放置されてきたのか、ところどころ蔦が絡まり、見た目からして古そうだ。


 小屋の入り口から入れそうだったので、戸をゆっくりと押し開け、中を伺う。少しだけ開けた隙間から覗いてみると、中は真っ暗で、窓から差し込む夕日だけが唯一の光源だ。

 一通り中を見回すが、誰もいないようだ。体ごと小屋の中に入る。ユリアさんも俺に続いて入るが、アガサは怖がって外から覗き込むだけだ。


「何も無いようですね」


 ユリアさんがポツリと感想をこぼす。ユリアさんの言った通り、何も無い部屋だった。十畳ほどの空間の真ん中に小さなテーブルと椅子が二つ。壁際には何も仕舞われていない空の戸棚が一つ置いてあるだけの部屋だ。争ったような形跡も無い。


 続いて、入り口から見て右手にある扉を開いてみると、向こう側には螺旋階段が上に向かって伸びていた。こちらは塔の部分だろう。

 カツン、と踏み出すごとに響く足音を聞きながら上を目指す。それほど大きく無いのですぐに一番上についてしまう。上は展望台のようになっていて、東西南北すべての方角を見渡せるようになっていた。しかし、特にこれといって気になるものはなかった。

 いったいここは何なんだ? 疑問が浮かび上がるが誰も答えを知っているはずもなく、ただ遠くの水平線上に沈む太陽を眺めていることしか出来なかった。


「何かあったー?」

「いや何も。今そっちに戻る」


 下からアガサの声が届き、俺とユリアさんは展望台を後にした。

 螺旋階段を降りながら元いた部屋に帰ろうとした時、上りだけではなく、下にも階段は続いていることに気がついた。さっきは上しか見てなかったから見逃したんだろう。アガサには悪いが、もう少し待ってもらおう。


 部屋に続く扉の前を通り過ぎ、さらに下へ進む。当然、明かりも無いわけで真っ暗な階段をグルグルと下降する。地下室でもあるのだろうか? 

 やがて階段の終点に辿り着き、一つの扉の前で止まる。小屋と同じような何の変哲もないただの扉だ。

 ノブを回して扉を開けようとするが、回らない。鍵かかかっているみたいだ。よく見てみると、ドアノブの上に『S』みたいな形の模様が刻み込まれていた。


「これ、何でしょうね?」

「私にも検討がつきません」

「ですよね」


 二人共始めてきたんだし当たり前だ。あまり遅くなってもアガサが可哀想なので、引き返すことにする。ユリアさんが掲示板にここのことを載せておいてくれるそうなので、そのうち何かしらの情報は得られるだろう。


 小屋から出て外で待っていたアガサと合流する。外は既に太陽が沈み、星が見え始めていた。今日のところはここまでにするか。

 

△ ▲ △ ▲

 

 イベントリを確認すると、転移門は使えたので帰りはすぐに帰ることが出来た。ちなみに転移先はギルドテントの近くだ。転移門を潜った瞬間、静かな波音が響く岬から一転、人々の騒がしい喧騒が聞こえてきた。へムジンさん、また何かやっているんだろうか?


 ギルドテントから程近い海辺には大勢のプレイヤーが集い、飲み物や食べ物を片手に騒ぎまくっていた。もちろん、海岸はセーフティエリアではないので、コーストクラブが出現しプレイヤーに襲いかかるのだが、それも余興の一環なのか、みんな遊び感覚で倒している。

 三人共そろって固まっていると、ふいに後ろから声をかけられた。


「あ、キントウ達帰ってきたんだ。それで帰って早々で悪いんだけど、手伝ってくれない?」

「手伝いって、何の?」


 振り返るとそこには疲れ切った顔のマリオがいた。何が起きているのか理解出来ない俺たちは説明を求めるが、説明すら面倒とでもいうように「とにかくこっち来て」とだけ言って奥に行ってしまった。

 仕方なく着いていくと、奥ではマスターを始め、複数の生産職の調理系のジョブらしきプレイヤー達が必死に料理を作っていた。作られた料理は次々と海岸に運ばれている。

 俺たちに気づいたマスターが手を休めずに話しかけてくる。


「おう、帰ってきたか。それじゃ、これあっちに持っていってくれ」

「だから、なんなんですこの状況」

「へムジンだよ。あいつが考えたんだ」


 聞くところによると、へムジンさんがマスターとマリオがこの島にしかないような食材を使って新しい料理を作っているのを見て、発案したそうだ。 

 海岸パーティーとでもいえばいいのだろうか、南の海岸で一人一万エンで食べ放題! とかいうのを掲示板に載せ、知り合いの調理系のプレイヤーを呼び集めたらしい。

 海岸にはプレイヤーが続々と集まっており、三桁はいるだろう。そこから調理をしてくれるプレイヤーに支払う給料分を引いても十分な利益が出そうだ。

 

 NPCを雇えない中、俺たち三人はウェイトレスとして重宝された。特にアガサとユリアさんは意外と人気だそうで、料理を持っていく度に盛り上がっていた。

 

 


次回投稿が遅くなるかもしれません。

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