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49話

遅くなりました。

 イベント中でも変わらずウェイトレスの真似事をやらされ、解放されたのが午前一時過ぎ、普段ならとっくにログアウトし寝ている時間だ。全くと言っていいほど(プレイヤー)の数が減らず、逆に夜遅くになるにつれ増えていく人だかりに俺は一足先にログアウトさせてもらったのだ。

 他に働いていた人たちには申し訳なくもなかったけど、さすがに寝落ちは回避したかった。多分みんな忙しそうだったから、俺一人が消えても気がつかなかったかもな。


 そんなことがあった日の翌日、案の定寝坊し、学校に遅刻した俺は教師にばっちり怒られた。

 近くで見ていたマリオとコージが笑っていたけど、お前らも一歩間違えればこうなるんだからな?


 放課後、足早に帰宅しログインした俺は、昨日ログアウトしたギルドテントのベットの上で目覚めたあと、リビングに行くとそこにはへムジンさんとユリアさんがいた。


「あ、キントウ君、昨日はお疲れ様」

「先に帰っちゃってすいません」

「まぁ、時間も時間だったしね別に大丈夫だよ。たくさん稼いだしね」


 そう言って笑うへムジンさん。えらく機嫌が良さそうに見える、昨日は相当儲かったんだな。

 

 それはさておき、昨日の半島の先端で見つけた建物について報告をしておく。先にユリアさんから聞いていたのか、大体の話は知っているようだった。


「ーーって感じだったんです。それで、塔の地下に開かない扉があったんです」

「それなら何かアイテムとかが必要なんじゃないかな」


 最後に半島の建物の地下にあった開かなかった扉の話を報告しておくと、こちらも知っている様子だ。この二人、昨日は忙しそうだったのにいつの間に話をしていたんだろう。

 昨日の報告もそこそこに、今日の活動についてへムジンさんの意見を聞いてみることにした。このまま島の中心に向かって探索を初めてもいいし、海岸でレベル上げをするのも一つの手だ。


「んー、そうだねぇ……」


 何やらメニューウィンドウを開き、操作し始めるへムジンさん。しばらく見ていたあと、ウィンドウを閉じこう言ってきた。


「ダイモンのとこも今日辺りから本格的に探索を始めるみたいだし、うちも行ってみようか?」


 かくして、今日の活動計画が決まった。今見ていたのは掲示板だろう、イベント中の有名ギルドの動きを調べていたんだろうか。


△ ▲ △ ▲


 アガサがログインするのを待ってから島の中央部に向かって探索を始める。島の大部分は森になっており、正しく密林といった感じの雰囲気を醸している。

 絶海の孤島ということなので舗装された道など無く、どこからでも森に入ることが出きるようなので、ギルドテントの後ろの所から入ることにした。


 森の中に入った途端、さっきまで聞こえていた海岸に打ち寄せる波の音がパタリと消え、その変わりに葉が擦れる音や遠くで鳥が鳴くのが聞こえてきた。周辺はジメッとしていて、若干ぬかるんでいる。時刻は太陽の沈み始めた夕方頃、何が出るか分からないから危険だし、あまり遅くならないうちに切り上げたほうが良さそうだな。

 入ってすぐにそんなことを考えるのはおかしいけど、そんなことを考えさせるくらい、この森は危なそうだった。 


 三人で離れないようにしながら森を進んでいく。段々と暗くなっていくにつれ、視界も悪くなってきた。夜は周囲を照らすアイテムや魔法が必要になるかもしれない。後でへムジンさんに聞いておこう。


「ねぇ、なんか怖くなってきたんだけど。今度からは森に入るの昼間だけにしない?」

「そんなこと言ったら平日は何も出来ないだろ」

「だってオバケとか出そうなんだもん、ここ」

「暗い場所でも物が良く見えるスキルなどがあった気がしますが」

「はっきりオバケが見えたら余計怖いじゃん!」


 ギャーギャー騒ぎながら進めばモンスター遭遇する確率が上がるのに、それに気づかず怖いを連呼しまくるアガサ。今度からは置いていこうかな……


 少しすると、予想通り目の前の木の枝がガサゴソと不自然に動き、その中から何かが飛び降りてきた。まさか、ユリアさんの魔法探知にも引っかからないなんて……


「申し訳ありません、全く気が付きませんでした」

「それより戦闘態勢!」


 ユリアさんとアガサが後ろに下がり、俺が二人の前に出る。

 敵の姿を確認する。見た目はウサギとネズミの中間みたいな中途半端な長さの耳を持った緑っぽい生き物だ。名前は《ツリーハイドラット》というらしい。どうやらネズミだったみたいだ、確かに前歯が出ているな。

 と、呑気に観察している暇など無く、ツリーハイドラットは俺目掛けて突進してくる。とっさに横っ飛びで回避し、ラットの方を振り向くと俺に躱され、そのままユリアさん達にも回避され、勢い余って進路上に生えていた木にぶつかって目を回していた。こいつバカなのか?

 目を回してダウンしているのを見逃す理由も無く、点棒であっさりとポリゴン片に変える。なんか味気なかったな……


 マップを確認してみると、南の海岸の東側と昨日行った南の半島、それと今日探索した辺りしか明るくなっておらず、島の大部分はまだ黒く、見えないままだ。これ、二週間で終わるのか?


 森の探索を再開してから間もなく、再びユリアさんの探知の目を掻い潜ってラットが木の上から降ってきた。こいつら、探知に引っかからないのか、だとしたら厄介だな。

 いきなり上から降ってくるのには驚くが、一体一体は強い訳ではないので、ユリアさんと二人で落ち着いて対処する。アガサが支援するまでもない相手だ。もっとも、そのアガサは頭抱えてビビっているから魔法を使えるかどうかは定かではないけどな。


「あのいきなり降ってくる奴どうにかなんないの!?」

「探知に引っかからないんだから無理だって」

「申し訳ありません。私の実力不足でございます……」

「そんな、ユリアさんの所為じゃないですよ。アガサが我が儘言ってるだけで」

「ネズミとかムカデよりも、もっとサバイバルっぽい奴は出ないの? アナコンダとかさ!」

「そんなフラグみたいなこと言うなよっ! っていうか、アナコンダは大丈夫なのかよっ!?」


 またまた騒いでいると、ユリアさんが何かに反応した。今度は探知に引っかかるモンスターか。ということはラット以外の新種のモンスターだな。


「一体のモンスターが前方から来ます!」

「ほらアガサ、アナコンダかもしれないぞ?」

「いいねー、映画みたいで」


 その映画がどんな内容かは知らないが、蛇に教われて丸飲みにされる映画じゃないことを祈っておく。


 十数秒後、ズルズルと引き摺るような音が前方から聞こえてきて、段々と近づいてくるのが分かる。

 そして無造作に地面から伸びている木々を縫うようにこちらに向かってくる一つの影。

 まず先に俺たちの目に写ったのは鱗の生えた恐竜のような顔。そういえば蛇ってドラゴンのできそこないっていう説もあったっけなぁ……

 わずかに開いた口から覗く牙のような歯は一本一本がギザギザしていて、触っただけでもダメージを受けそうだ。


「こ、こいつは想像以上だな……」

「動いたら、死ぬ……!」


 さっきまでアナコンダ出ろ、とか言ってたアガサがガチガチに固まっている。こいつはアナコンダというより、もはやバジリスクとかそういうレベルじゃないだろうか? 目があっても死んでないからバジリスクじゃないんだろうけど。

 バジリスクもどきは俺に狙いを定めたようだ。体を蛇行させながらゆっくりと近づいてくる。文字通り、蛇に睨まれた蛙状態。今の俺は蛙か。

 バジリスクの口がゆっくり開き、俺を飲み込もうとする蛇の口の中がはっきりと見えた途端。


「あ、死んだわ」


 目の前が真っ暗になった。



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