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42話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 翌日、俺たち戦闘班三人はリエン街道の左右に広がるリエン森林の中にいた。中は鬱蒼として、道らしい道もない。背の高い木々が日の光を遮っているおかげで森林の中は全体的に薄暗かった。この森は南北を縦断するリエン街道を中心にして東西に広がっている。今日は西側を探索するつもりだ。


「本当にこんなところにいるのかなー?」

「まあ、居てくれないと困るよな」


 進路をふさぐ大きな倒木を跨ぎながら話す。周りの木の背が高いから地面近くはあまり草が生えていない。おかげで森林内は思っていたよりも移動しやすかった。

 

 セイレスの王様は姫がこのリエン森林のどこかに居るといことしか知らず、どこに居るかまでは分からないようだった。なのでこうして俺たちが森林を彷徨ってしらみつぶしに探しているのだ。中に入って既に二時間が経とうとしているが、未だに手がかり一つ見つからない。

 

 とその時、俺たちの目を何かが横切った。

 また来たか、今度は何人だ?


「敵が来たぞ、ユリアさん?」

「敵の数は三人、二時の方向に二人と二時の方向に一人です」

「じゃあ俺が二人やるんで、ユリアさんは一人お願いします」

「承知しました」

 

 ユリアさんの魔力探知で敵の数を確認し、戦闘態勢に入る。俺は点棒を両手に構えて敵が現れるのを待つ。最近はずっと白ばかり使っていた所為で腕が鈍ってしまっているような気がしたから今日はできるだけ白を使わないと決めていた。

 木と木の間を縫うように敵は近づいてくる。そして目の前の木の陰から一人のフードを被った人が飛び出してきた。手には小型のナイフを握っている。この森を縄張りにしている森賊だ。

 

 この森林には基本的にこいつらしか出ないようで、森林に入ってから何回も戦闘があったけど全て森賊だった。攻撃は近接しかなく、魔法を使ってこないし、一人一人の強さはそこまでじゃないので俺でも余裕で倒せるのだが数が多く、多いときには十数人の森賊に囲まれた時もあった。今回の三人は比較的少ない方だろう。

 

 飛びかかってきた森賊の眉間に向かって点棒を投げつける。俺の手から放たれた点棒は寸分違わず森賊の眉間に突き刺さり、森賊はそのまま消えていった。あと一人だ。これがもし剣とか近接系だったら人型の敵を切るのに躊躇っていたかもしれないな。あくまでもモンスターなんだけど、見た目はプレイヤーとあまり変わらないし。

 ユリアさんは既に敵を倒したようで、俺の後ろについてくれている。あと一人はどこにいるんだ?


「ユリアさん、場所わかる?」

「まだ十二時方向に潜んでいます……移動しました。これは、上?」


 そうユリアさんが呟いたのと同時に近くの木の上から一人の森賊がナイフを構えながら降ってきた。咄嗟に横っ飛びで回避し、着地と同時に敵に向けて点棒を飛ばす。落下の衝撃で動けなかった森賊はまともに点棒を受けて倒れた。HPを確認すると若干減っている。回避の際に肩かどこかに掠ったようだ。


「申し訳ありません、キントウ様」

「気にしないでいいですよ全然」

「そうだよ、キントウならあれくらい余裕だったでしょ?」

「割と危なかったけどな、いきなりだったし……」

「なら白使えばいいじゃん?」

「たまには自分で戦わないとダメかなぁと思ってさ」


 手に入れたアイテムを確認して再び探索に戻る。さて、お姫様はどこにいるんでしょうかね。


△ ▲ △ ▲


「あー、もう疲れた。こんな薄暗い所もうイヤだ! なんでこのゲーム薄暗い所ばかりなの!?」


 先ほどの戦闘から二時間ほど経ち、とうとうアガサが根を上げた。森に入ってから四時間が経とうとしている。今、マップの西側は大体埋まっている。現在の時刻は午後二時を過ぎたくらい。ちょっと早いかもしれないけど、今日はもう帰るか。このクエストに時間制限はないみたいだし。

 ということで、試験型転移門を使う。展開し終えるまで寄ってくる森賊を狩り、脱出。セイレスに帰ってきた。

 

 が、ちょうど転移門の前にダイモンさんのパーティーがいた。彼らも今この転移門を潜って来たんだろう。確か遺跡のダンジョン攻略をしていたはずなんだけど。

 今、見つかるといろいろと面倒くさそうな事態になりそうなので、三人でさっさとこの場を去ろうとするが、運悪くダイモンさんに見つかってしまう。姫救出のクエストはギルドメンバー以外のプレイヤーに知られるとクエスト失敗になってしまうので、出来れば話したくなかったんだけど、仕方ない。適当に話して誤魔化そう。


「よう、へムジンとこのじゃないか」

「お疲れさまですダイモンさん。ダイモンさん達は遺跡の攻略に行ってたんですよね?」

「そうなんだが、いくら降りても手がかり一つ見つからないんだよな。そういや君たちは今日どこに行ってたんだ?」


 来た、この質問をうまく誤魔化せなければクエストが失敗になってしまう。不安気な顔をするアガサとユリアさんを目だけで落ち着かせてダイモンさんの質問に答える。


「リエン森林に行ってました」

「!?」

「ちょ、キントウ!」

「大丈夫だから」

「ん、どうしたんだ? リエン森林で何かあったのか?」


 ダイモンさんがアガサとユリアさんの慌てぶりを見て聞いてくる。そりゃ、アガサ達は慌てるよな。


「いえ、何かヒントが無いかしらみつぶしに探したんですけど、何もありませんでした。ただ森賊ばかり出るだけでしたよ」

「そうか、なら後で掲示板に情報載せておいてくれよな」

「わかりました、ではこれで」


 そのまま広場を後にし、離れたところまでやってくる。途端、アガサ達から堰を切ったように文句を言われた。


「もう、いきなり言うから驚いちゃったじゃん! なんで本当のこといったの?」

「キントウ様、流石に今のは危険かと……」

「大丈夫だって、あれでダイモンさんは誤魔化せたし、森林にはプレイヤーが近づかなくなったし、一石二鳥じゃん。全部嘘で固めるより、少し真実を混ぜた方が説得力が出るんだよ」


 それを聞いた二人はそろってため息をこぼし、今日はここで解散となった。明日には姫を見つけられるといいんだけどな。


△ ▲ △ ▲


 次の日、集合してすぐ森林の探索に入った。今日は東側を重点的に調べていく。


 森に入ってすぐ昨日とはどこか違うことに気づいた、敵の森賊の数が異様に多いのだ。戦闘の回数が昨日の倍くらいのペースである。強さ自体は変わってないものの、明らかに回数と一度に現れる敵の数が増えていた。これは白に任せるしかないな。序盤から白を呼び出す。もちろんLuc上昇の黄色いポーションを飲んでおくのも忘れない。


「ちゃんとあのポーションを飲んでいますね、いい心がけです」

「そりゃどうも、こいつら数が多いけどいける?」

「私を何だと思っているんですか? あのジャンゴを護っていた自律人形ですよ?」

「俺はジャンゴほどLucを持っていないけどな!」

「自慢げに言わないでください、殺しますよ?」


 うわっ、とうとう殺人予告までされたよ。認められるまでの道のりはまだ長いな。


 白を先頭にしてユリアさんが魔力探知で索敵をしながら進む。今日、森に入る前に教えてもらったんだけど、魔力探知って二次元的にしか方向が分からないらしい。だから昨日の森賊みたいに三次元的な攻撃の探知が一瞬遅れたのか。 

 続々と現れる森賊を白が次々に殲滅していく。昨日も白を使っておけば良かったと少し後悔するにはもう遅かった。

 

 二時間ほど探索を続けていると、小さな川を見つけた。森の東の奥から流れてきていて、おそらくセイレス湖まで続いているのだろう。ここで少し休憩することになり、近くの岩に腰かける。

 休んでいると、川に入って遊んでいたアガサに呼ばれた。行ってみると、彼女から何か布の切れ端のような物を渡された。川の中に引っかかっていたそうだ。俺が見ても何も分からなかったので、ユリアさんに見てもらうと、驚きの事実が判明した。


「これはおそらくドレスの一部でしょうか。まだそんなに日は経ってないと思われます」

「そんなことも分かるんですか?」

「メイドですので」


 流石ですユリアさん。

 ドレスといったらお姫様じゃないか! 姫が自分のドレスを破って川に流したんだとすれば、姫はこの川の上流にいることになる。森で初めて見つけた手がかりだ。やはりこの森の何処かにいるのは間違いないようだ。

 このまま探索を続けるより、手がかりを信じて探す方が良いと判断し、川に沿って森を探す事になった。


△ ▲ △ ▲


 川に沿って歩くこと一時間、だんだんアガサが文句を言い出してきた時にようやく木ばかりの景色に変化が訪れた。

 そのあたりだけ木が切られており、広場のようになっている。広場の奥には木で出来たログハウスみたいな家が建っていた。作られてから時間が経っているのか、苔が生えていたり、植物の蔦が絡んだりしていて家も森の一部になっているように見えた。


「あれ、かなぁ?」

「おそらくそうかと思われます」

「じゃあ行くか」


 家に向かって一歩踏み出したその時、突然森の中に不気味な声が響いてきた。


『誰も近づけるなとあれだけ言ったのにまさか勇者を差し向けるとはな……』


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