41話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
おばあさんに頼まれて王城の兵士のところに行かなければならなくなった。おそらく、行った先でもまたクエストが発生するんだろう。本当にこのまま続けていれば門を開くことができるんだろうか?
若干の疑問は残るがここまでやってきた以上、途中で止めるのもなんとなく気が引けるので再び複雑な道を進み王城にいる兵士に報告する。
こういう場合はどこに言えばいいんだろうと城の中をウロウロしていると、とある一画に【王都民窓口】なる看板を見つけた。たぶんセイレスに住んでいる人たちの対応なんかをする場所なんじゃないだろうか。あそこでいいかな。
窓口に行ってみると、兵士の姿の中年のおっさんがカウンターに突っ伏してグースカいびきをかいていた。おっさんの肩越しには奥のテーブルの上に散乱した書類の山と酒の空瓶が見える。本当にここで大丈夫か?
とりあえず、おっさんの方を揺すって起こそうとするがなかなか起きない。三分ほどかかってようやく目を擦りながら起きてくれた。
「んー、なんだ、ここに用か?」
「ここって、王都民の対応をする窓口ですよね?」
「一応、そうなっているが……」
やけに一応、という所を強調するおっさん兵士。なに、もしかしてこの窓口って誰も使わないの? 一応、設置してあるだけの部署なの?
まあ、ここがどんな部署だろうが俺には関係ないことなのでおばあさんに頼まれたことだけを終わらせることにする。いい加減アガサも飽きてきただろうし、今度は戦闘系とか、もう少しやり甲斐のあるクエストがいいな。
「ええっと、西側でマンドラゴラが発生してたんで報告に来ました」
「そう、じゃあこれに記入しておいて」
手渡された紙の一番上には【報告用紙】とかかれていた。何処で、どんな内容があって、どの部署が対応すべきかなどを記入するみたいだ。これってあんたが書かなきゃいけないんじゃないのか?
文句の一つでも言ってやろうと紙からおっさんに視線をずらすと、また突っ伏して寝ていた。今度は殴って叩き起こす。
「痛ってーな、なんだよ、もう書き終わったのか?」
「これおっさんが書かないといけないもんじゃないのかよ?」
「別に誰が書いても同じだろうが」
「兵士のくせしてこんな適当でいいのかよ」
「いいんだよ、こんな窓際部署なんか適当にやっときゃ」
「この税金泥棒」
「はっはっは、違いねぇ」
そう笑うおっさん越しに先ほど見えた書類の山が目に入る。もしかして、この書類も全部報告用紙なのか……?
「おい、おっさん、中に入れてくれ」
「なんだ、手伝ってくれるのか?」
「いいからさっさと入れてくれよ」
脇の仕切りを開けて中に入らせてもらう。テーブルの上の書類を見てみると案の定、全て報告用紙だった。養殖場に出たモンスターの駆除だったり、荷物の輸送の護衛依頼だったりと、ざっと見ただけでも五十件以上はある。このおっさん本当に仕事サボってんな。
もはや怒りを通り越して呆れるしかなくなる。怒る気にもならない。もういいや、全部やってやろう。これくらいクエストを消化すれば、何かしらの進展は見られるだろう。
「おーい、アガサ、ちょいと来て」
「何ー、ボクもうお使い系とかイヤだよ?」
中に入ってきたアガサが報告用紙の山を見て顔を真っ青にする。
「も、、もしかしてこれやるのカナ?」
「もしかしなくてもやるの」
瞬間、身を翻して逃げようとするアガサの服をむんずと掴む。うん、予想通りの動きだった。
「はーなーせっ! こんなのやりたくなーい!」
「アガサは面白そうなやつだけでいいから。ほら、これとかどう? 『魔法職の方限定! 高報酬! 未経験者歓迎!』だってさ」
「なに、そのアルバイトみたいな謳い文句は……」
とはいえ、流石にこの量は俺たちだけで終わるような数では無い。ここは応援要請をしておくかな?
△ ▲ △ ▲
「で、俺たちが呼ばれたと?」
面倒くさそうに書類の山を見下ろすマスター。店の仕事は大丈夫だろうか?
「私ポーション作らないといけないんだけど、まだ【まほいち】の方の納品分が終わってないのよね……」
「まあまあそう言わずに、キントウ君も今まで頑張ってきたんだしこっちにはユリアさんもいるしすぐ終わるでしょ?」
「私も微力ながらお手伝いさせていただきます」
マスターの隣でげんなりとするマリオを励ますへムジンさんとユリアさん。これだけ居れば充分だろう。ちなみにおっさん兵士はカウンターで寝ている。この人は使い物にならないだろうから放っておくしかない。
「それじゃあ、ユリアさんとマリオで南区のクエストを、へムジンさんとマスターで西区を、俺とアガサで東区と北区のクエストをやります。終わったらそのまま解散で大丈夫です。では、よろしくお願いします」
あらかじめ、各区ごとに分けておいたクエストをそれぞれに振り分ける。俺がたち東と北の二つを担当するのは、北区が少なかったからだ。それに頼んでいるのはこっちなんだからそれくらいはやらないとな。
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それからの数時間はなんというか、壮絶だった。
あっちに行ってクエストを受けたと思えば、こっちでまたクエストを受け、そして再びあっちでクエストが発生しての連鎖だった。もう二十連鎖は軽く行ってんじゃないだろうか? もう目の前が真っ白だよ……
「あー、疲れた!」
「これって、ゲームだよね……」
すっかり暗くなったセイレスの通りをアガサと二人でゾンビのように歩く。これ端から見ればこの前のネコネコさんみたいだろうな、とかどうでもいいことばかりが頭に浮かぶ。すでに俺たち以外はクエストを消化し終えていて、連絡をもらっている。
やっぱり、二つも担当するべきじゃなかった。無理言ってレイさんとかプリンさんとか呼ぶべきだったな……
フラフラになりながら、最後のクエストを終わらせるべく王城に戻る。最後のクエストは幸か不幸か、お使い系だった。ある荷物を城にいる兵士に渡して欲しいという内容のクエストだ。
教えてもらったに行くと、そこは数時間前に俺たちがいた窓口だった。てことは、渡す人ってあのおっさん?
窓口に行くと、おっさんは寝ていなく、準備万端という感じで待ち構えていた。
「おー、やっと来たか。遅かったじゃないか」
「最後の相手がおっさんとか……」
「まあいいじゃないか。ほれ、早く渡してくれよ」
急かすおっさんに何も言う気が起きなくなったので、荷物を渡す。細長い長方形の形をした箱だった。ちょうどそこら辺に転がっている酒瓶が入りそうなくらいの……って!
「おい、おっさん。その中身ってもしかして……」
「うん? 酒だが?」
「お前、勇者をパシらせてるんじゃねぇーよ!?」
「いやー、ちょうど良かったしついでだよ、ついで」
本当に呆れたおっさんだな。なんでこんな人が兵士なんてやっていられるんだよ。この国どうかしてるんじゃないの?
とそんな所に、おっさんとは比べ物にもならないくらいピシッとした真面目そうな兵士がやってきて俺に話しかけてきた。おい、おっさん、カウンターの下に隠れてんじゃねーよ……
「勇者のキントウ様とアガサ様でございますね? 国王がお待ちです」
お、やっと何らかの進展が見えたのかな?
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真面目兵士に案内されて玉座がある謁見の間に行くと、すでに王様が座っていた。今日は待たされないで良かった。もし待たされるようなら日を改めてもらうところだった。
謁見の間にはどこか緊張したような雰囲気が漂っていた。王様を含め、そばに控える大臣やら将軍やらみんなただごとではないような顔をしている。
王様の前に立つと、王様がおもむろに話し始めた。
「おぁ、そなた達がキントウとアガサか。噂はかねがね聞いておるぞ。なんでもこの都の問題事を解決してくれているとか」
「ええ、そりゃもう」
あんたの国の兵士が使えない所為で、なんて口に出せない。おとなしく王様の話を聞くことにした。
「ついては、そんなお主達を信用して頼みたい事がある」
「お、王様、『あのこと』で御座いますか? しかし流石にこの者たちでは……」
「お前は黙ってなさい」
横から口を挿んだ大臣を黙らせ、再び話し始める王様。『あのこと』ってなんだ?
「実はわしには一人娘がおるんじゃが、この前何処かの賊に攫われてしまっての、その時にこんな物を残していったんじゃ」
兵士に渡された紙切れのような物には、『姫の命が惜しければ北の門を絶対に開けるな。城の者以外に知られても殺す』と書かれていた。
これが門が閉まっていた理由だったのか。門を絶対に開けるななんて誰がこんなこと仕組んだんだ?
「娘を攫った奴等はおそらくリエン森林の何処かに潜んでいるはずじゃ。どうか娘を助けてはくれんかの?」
同時にすでに見慣れたクエストの説明画面が表示される。
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クエスト:姫奪還作戦
依頼者:セイレス国王
クエスト成功条件:セイレスの姫の救出
クエスト失敗条件:姫が誘拐されたことがギルドメンバー以外のプレイヤーに知られる、又は姫の死亡
セイレスの姫が何者かによって誘拐されてしまった。このことが城外の人に知られると殺されてしまう。秘密裏に姫を救出せよ!
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それじゃあ、早く門を開くためにもお姫様を助けに行きますか。
……明日でもいいかな?




