40話
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。
一週間ほど過ぎて、攻略はセイレスで止まっていた。次の街へ続く道が開放されないのだ。
リエンから入れる門の反対側にある門から次の街へ行くことができるそうなのだが、ずっと閉まったままなのである。そばにいる兵士に話しかけても、「そう指示が出ていますので……」しか言わない。
ならば指示を出している国王に話を聞こうとしても長時間待たされたあげく、最近は魔王の所為でモンスターの活動が活発になって困っているとかセイレス湖(都の浮かんでいるデカい湖のことらしい)の養殖がうまくいってないだとか、愚痴を聞かされて終わってしまう。
王がダメなら民に聞こうと、聞き込みをしても同じような情報しか出てこない。わかったことといえば、クエストがやたら多いということくらいだろうか、街のNPCに話を聞けば十中八九、クエストが発生するのだ。困り事多すぎだろ、王都がこんなんで本当に大丈夫だろうかと心配になってくる。
今ではみんな、あの門を『開かずの門』とか呼んでいる。運営から何も連絡が来ないってことは、バグとかじゃなくてそういう仕様なんだろうけど。
結果、プレイヤーたちは攻略を一時中断し、デイノ遺跡のダンジョン攻略に力を注ぐことになった。現在ダンジョンは八階まで攻略が進んでいて、まだ最終フロアがどのくらいなのか分からないそうだ。一番最初のダンジョンだし、そこまで難易度は高くないと思うんだけどな。
そして俺は今、セイレス湖上の小舟の上にいる。何故かというと……
「それじゃ、オーナーさん。よろしく頼みますよ」
「はぁ、今日でもう十回目なんだけど……白?」
「私もいい加減殺るの飽きたんですけど、ねっ! っと、はい終わりました」
目の前にドスン、とサメくらいの大きさの魚が降ってくる。白が倒した魚をイベントリにを仕舞うと、俺は岸に戻る。先ほど話していたNPCにお礼を言われ、クエストクリアの通知が来る。
この前からセイレス市場のオーナーになってから都を歩くだけでNPCの方から話しかけてきてクエストが発生する始末だ。どうやら俺はNPCの間では有名人のようだ。
市場に足を踏み入れた途端、クエストの嵐が押し寄せてくる。今受けていたクエストが一番多い種類で、巨大化して凶暴になった養殖魚をどうにかしてくれ、という内容だ。素材が獲れるからいいんだけど、湖にある養殖場まで行かなければならないのが面倒くさい。
早くもう一つの門が開けばいいんだけど、全く開く気配が無い。ヒントも無い、話を聞けば情報の代わりにクエストが返ってくる。どうすりゃいいんだ?
あと、白とはうやむやな感じになって、前と変わらない関係になっている。つまり、認められていないってことだ。文句も以前と変わらないし、こればっかりは俺が強くなってLuc値を増やすしかないと思っている。それまでの辛抱だ。
△ ▲ △ ▲
クランキーズに戻ると、へムジンさんとユリアさんが何か話し合っていた。店に帰ってきた俺に気が付くと、手招きで呼ばれたので行ってみる。
「ちょうど良かった。キントウ君とも話しておきたかったんだ」
「なんですか話したいことって」
「ユリアさん、お願い」
「セイレスの門についてで御座います」
「ああ、あの開かずの門ですか」
「はい、その門についてなのですが、キントウ様はどう思われていらっしゃいますか?」
「きっと何か開放条件みたいなものがあるんじゃないですかね?」
「他のプレイヤー達もそこまでは気付いていて、結果的に遺跡の攻略が条件だと思っているみたいだね」
「だからみんな遺跡に行っているんですか、俺たちも行きます?」
「いや、キントウ君達は行かなくていよ」
首を横に振るへムジンさん。でも遺跡を攻略しないと門は開かないんじゃないのか?
「憶測なんだけど、君達に試して貰いたいことがあるんだ」
そう言った時のへムジンさんの顔はどこか申し訳なさそうな表情をしていた。
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「もう……ムリ……ボクのことはいいから先に行って……」
「いや、クエストちょっとやったくらいじゃそこまでバテないだろ……」
すでに息も絶え絶えといった様子のアガサを見て思わずツッコんでしまう。まだいくつかのお使い系クエストをやっただけだろ、まあセイレス中を動き回ったのは事実だけど。
さっきへムジンさんから聞いた内容が頭に浮かんでくる。
「キントウ君にやって貰いたいのは、セイレスの王都で発生するクエストを片っ端からクリアしてもらいたいんだ」
「クエスト、ですか?」
「もう気付いていると思うけど、あの街ってやたらクエストが多いじゃない? それとこれも憶測なんだけど、NPCの中に好感度みたいな隠しパラメータがあると思うんだ。キントウ君心当たり無いかな?」
「そういえば最近はNPCがやたらと俺に話しかけて来ますね。主にクエストの依頼で」
「そうでしょ。だからそうやってクリアしていけばいつかは門を開くのに関係するクエストの辿り着くんじゃないかなってユリアさんと話し合ってて思いついたんだ」
それで、ちょうどログインしてきたアガサを連れて一つずつ、クエストを消化してきて今は十三個くらいクエストをクリアしただろうか。大抵のクエストが素材が足りないだとか、荷物を届けてくれだとか簡単なお使い系のクエストだった。ただ、セイレスの道は変に複雑なので、目的地に辿り着くまで時間がかかるのが問題だな。
「ほら、次のクエストに行くぞ」
「えー、もう嫌だっ!」
「つべこべ言わずにさっさと行くぞ!」
「あーそんな引っ張らないで! 服が、耐久値が~」
愚図るアガサを連れてやってきたのは王都の西側にある一軒家。前のクエストの依頼者から紹介されてやってきたのだ。
中に入るとおばあさんが一人いるだけだった。部屋の中は家具も少なく、必要最低限の物しか置いていないようだ。この人が次のクエストの依頼者なのか?
「あのー……」
「ん、なんだい。あんた泥棒かい? うちには盗るような物なんて何も無いよ」
「違いますよ。何か困っていることがあるとか聞いて来たんですけど……」
「あんた、東区のハゲジジイに言われて来たのかい?」
「ええ、まぁ」
東区のハゲジジイとはおそらく、ここの情報を教えてくれた一つ前のクエストの依頼人のことだろう。確かにジジイだったけど、ハゲてはなかったぞ。ハゲまであと一歩のところまで来ていたけど。
おばあさんはため息を一つ吐くと依頼内容を話し始めた。
「じゃあ一つ頼むとするかね。ここから北に少し行くと私が持っている畑があるんだが、最近手入れをしていなかった所為か、何かが畑を荒らしているみたいなんだよ。そいつらをどうにかしてくれるかい?」
同時に【おばあさんの畑の手入れ】というクエスト名と詳細が表示されたウィンドウが出てくる。それじゃあ行きますか。
おばあさんの家を出て、北に数百mほど行くと小さい畑がポツンとあった。しばらく手入れをしていないので雑草などが生えて畑として機能していないように見える。
中に入り様子を確認する。うーん、足跡とかは無いから獣とかが住み着いているわけじゃないのかな、だったら害虫だろうか。
アガサと二手に分かれて畑を調べていると、何かを見つけた様子のアガサに呼ばれ、畑の奥に行ってみる。そこには他の雑草とは違った雰囲気を放つ大きな葉っぱが生えていた。人の顔くらいの大きさの葉が二枚地面から生えている。風が吹くと一瞬ブルッと震えたように見えたのは気のせいだろうか。
「もしかして、これじゃないかな」
「この葉っぱか?」
「うん、なんか動いてるし」
試しに指先で葉っぱを突いてみるとさっきと同じようにブルッと一瞬震えて動かなくなる。地面から生えていて動くような植物といえば……
俺の脳裏に一つのイラストが浮かび上がる。昔、何かの本で見たことがある。子供くらいの大きさの人型の根っこに頭から葉っぱが生えた魔法生物。
「これって……」
「マンドラゴラ、かな?」
マンドラゴラーー別名マンドレイクは、引き抜くと、悲鳴を上げてまともに聞いた人は死んでしまうという伝説がある魔法植物だ。実際にこれがマンドラゴラだと決まったわけではないけど、見た目はイメージとそっくりで、自然と身構えてしまう。
「どうしよう、絶対コレが畑を荒らしているヤツだよね」
「そうだと思うけど」
マンドラゴラのまわりだけ雑草が生えていなくて、マンドラゴラから一番近い草も枯れそうになっている。きっとこいつが養分を全部独り占めしているからだろう。
早く抜いてしまいたいけど、悲鳴を聞いたら死ぬっている設定があるかもしれないし、迂闊に手が出せないな。
「攻撃魔法が使える人呼んできて、畑ごと吹っ飛ばす?」
「そんな物騒なことは絶対しないからな。周りには家もあるんだぞ」
「じゃあどうするのさ」
「ちょっと待って」
イベントリから白を呼び出す。もしかしたら白ならジャンゴと一緒にいた時の記憶で何か知っているかも。
「今度はなんですか、また魚ですか」
「違うって……。いきなりだけど、あれってマンドラゴラ?」
俺が指差す方向に生えている大きな葉っぱをジッと見つめる白。その顔からして何か知っているのは間違い無いようだ。
「またあなたは変な物を見つけましたね。そうです、あれはマンドラゴラですよ。なんなら採って来ましょうか?」
「えっ、大丈夫なの? 悲鳴を聞いたら死ぬらしいけど」
「私、自律人形なんで。離れていないと死にますよ?」
スタスタと葉っぱにに近づいて行って何の躊躇いもなく、葉っぱを掴んで一気に引っこ抜く。途端、この世の物とは思えない耳をつんざくような悲鳴が畑に広がった。白が根っこを一発殴ると悲鳴が消え、静かになった。離れててよかったぁ、あんなのまともに聞いたら死ぬって。耳キーンってなってるし。
おとなしくなったマンドラゴラを持って白が帰ってくる。
「はいどうぞ」
「あ、うん。ありがとう」
「じゃ、私はこれで」
マンドラゴラを俺に渡すと、用は済んだとばかりに消えてしまう。これで問題は解決かな。
再びおばあさんの家に引き返し、結果を報告する。するとおばあさんは難しい顔をしてこう言った。
「ふぅん、マンドラゴラか。ここいらじゃ、あまり見かけない植物なんだけどね。誰かが種を持ち込んだのか……」
「そういう物なんですか?」
「当たり前じゃないか、あんな危険な物が王都に生えているわけがないだろう」
「そりゃそうか」
「ちょうどいい。あんた達ついでにこの事を兵隊に知らせておいてくれ」
「マジっすか……」
またまた新しいクエストの発生の予感がした。




