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36話

誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。

 土曜日に突然発生した魔王軍による襲撃クエストを無事クリアし、現在の活動の拠点となっているメイカーを守りきった日から数日過ぎた。

 今俺たちヘムジン商会戦闘班がいるのはグラム王国の国境に位置するゴブリンに占拠された関所前である。

 俺たちだけでなく、ダイモンさんのギルドをはじめ、クーデルさんのギルドやその他のプレイヤー達が関所前に集合していた。

 理由はもちろん、この関所を占拠しているゴブリンを統べるボスゴブリンを討伐する為だ。先日の魔王襲撃の影響でボス戦の日程がズレたのだ。既に偵察も済んでおり、おおかたの攻撃パターン等は情報として掲示板に掲載されていた。

 今回も、前回と同様にダイモンさんが前衛のリーダー、クーデルさんが後衛のリーダーとしてみんなを指揮することとなっている。集まった人の中にミチルの姿を見つけられなかった。今日のボス戦には参加しないのか? あいつはこういうのは必ず来そうなんだけどな。

 

 そして、メンバー編成が行われ、俺は前衛班に、アガサとユリアさんは後衛班の所属となった。ちなみにアガサの歌は魔王襲撃の際にその場に居た全員に効果があったそうだ。その代わり上昇率は減るが、なかなか頼もしいと思う。

 メンバー編成も終わり、最終確認をした後、ボスの待ち受ける地下二階の金庫室に向け出発した。相手はゴブリンといえども、ボスなんだから気を引き締めて行こう!


△ ▲ △ ▲


 道中は得に目立った問題は起きず、一階、地下一階と順調に進んでいく。

 地下二階に降り、ダイモンさんを先頭に歩いていく。関所に入ってから一時間ほどして目的地である金庫室の前に到着した。ここはセーフティーエリアのようだ。


「じゃあ、十分休憩したら突入するぞ!」


 ダイモンさんの掛け声で一旦休憩時間に入る。アイテムの確認くらいしかやることは無かったのですぐに終わってしまった。あと七、八分くらいあるけど何していようか? 

 そうだ、先に白を出しておいて『特訓』でもしてみよう。

 

 俺が魔王の襲撃の日から考えていた『特訓』とは……ズバリ、白の吐く文句や不満をひたすら受け止め続け耐性をつける、というものだ。

 ジャンゴの手記には白は当時からあのような性格だったと書かれていた。つまり、ジャンゴはあの言葉という名の暴力を耐えたか何らかの方法で乗り切ったということだ。

 

 今の白の口ぶりからするに、白は今はジャンゴに仕えていた事は不満に思っていないようだ。ってことは白はちゃんとジャンゴのことを主として認めていたということになる。

 だがしかし、今の彼女は俺のことなんか、ただの動力源供給係のようにしか思っていないように見える。しぶしぶ俺の頼みを聞いて貰っているような状態だ。

 これはどうにかしたい、どうにかして白に俺を主として認めさせよう、とりあえずあの暴言に耐性を付けよう、となったのだ。まあ、ぶっちゃけLuc上げまくればなんとかなりそうだけどな……


 まず、マリオ特製のステータス上昇ポーションを飲まないで白を呼び出してみる。

 いつものエフェクトを放って現れた白は初っ端から不機嫌さ丸出しだった。


「あのですね、せめてあのポーション飲んでくれません? 何回も言ってますけど、こんな少ないLucじゃまともに戦えないですって。第一、あなたはどうやって自分の身を守るんですか? 全部私にやれというんですか? あなただけを護衛すればいいのなら可能でしょう。しかしあなたはモンスターを倒しつつ自分を守れと言ってるんですよ? だったらそれ相応のLucが無いと無理ですよ。その貧相なIntで考えてみてください分かりますか?」

「…………」

「どうしたんですか、だんまりですか? ……まあ、いいでしょう。あなたがいないと私が活動出来ないのもまた事実です、今回のところは黄色いポーション十個で手を打ちましょう。さあ、早く飲んで、そしてできる限りLucを増やしてください。あなたの貧弱なStrとVitじゃ私がいないと身を守れませんからね」

「…………」

「え、なんですか? ちゃんと喋ってくれませんか? それとも満足に話せないんですか?」

「……大きなお世話だよっ!」


 それだけ言って白を装備覧から外した。同時に白もその場から消える。なんだよあいつ、こっちが黙ってたら好き勝手言いやがって。ジャンゴもよくあんな奴手懐けられたな、やっぱLucが大量に必要なんだろうか。

 

 せっかく特訓するために呼び出したのに俺が怒ってイベントリに仕舞ってしまった。我ながら大人げない。次に白を呼び出すのが気まずくなってしまった、もうあと少しでボス戦だっていうのに。もしかしたらヘソ曲げて戦ってくれないかもしれない。

 あいつ、武器カテゴリのくせしてやけに運営の力入っているからな、無駄に会話とか出来る分、こうなるとやりづらい。とりあえず、今日の所は黄色いポーション飲めるだけ飲んで、戦って貰うしかない。埋め合わせはまた後日って事にしてもらおう。


△ ▲ △ ▲


 やがて休憩時間が終わり、ボス部屋突入の時間が来た。現在はボスゴブリンの攻撃パターンの最終確認中である。


「ボス自体はそこまで強くない。問題は奴の後ろにある穴だ、あそこからゴブリンがぞろぞろ這い出てくるそうだ。なので前衛班を二つに分け、ボスゴブリン担当と穴から出てくるゴブリン担当に分ける」


 ということで俺は穴担当になった。うわ……絶対白は嫌がるよな、地味だし。


 そして、とうとうボス部屋に突入する。まずダイモンさん率いる前衛ボス班がボスゴブリンのターゲットを奪うべく、先制攻撃を仕掛ける。その間に前衛穴班はボスの周りに侍っている雑魚ゴブリンを一掃し、次に穴から出てくるだろうゴブリンに備える。といっても俺自身はやれることは無いので死なないように気を付けているだけだが。

 

 暇だったのでボスゴブリンを観察する。見た目は普通のゴブリンをマッドゴーレムより少し小さいくらいにして、ゴテゴテした冠とか装飾をつけたような姿をしている。動きは遅く、攻撃は手に持った棍棒による振り回しだけのようだ、あとHPが多いっぽい。

 

 白はというと、再び呼び出した時にはムスッとしていて口も聞いてくれなかった。殺ってほしいことだけ伝えると黙ったまま雑魚ゴブリンたちを文字通り瞬殺し、またムスッとした表情に戻ってしまった。他の穴班のメンバー呆然だったぞ……

 時々這い出てこようとする雑魚ゴブリンを寄って集ってタコ殴りにして潰していく俺たち穴班。これは白をボスにまわした方が効率いいんじゃないか?


「おい白、ボスの方行っていいぞ」

「ですが、私たちは穴班です」

「担当なのは俺だ、お前じゃない」

「……わかりました、では行ってきます」


 それだけ言い残してボスの方に駆けて行く白、最後の方は口元が緩んでなかったか? やっぱり戦いたかったんだろうな。

 突然の白の参戦に一瞬戸惑っていた前衛ボス班だが、ダイモンさんがすぐに指示して白も攻撃に取り入れていく。そういえば他のプレイヤー達からは白ってどう見えているんだろうな? 謎の馬鹿力のプレイヤーって感じかな。


△ ▲ △ ▲


 唯一の懸念材料だった無限ゴブリン湧きの穴を塞いだ以上、ボスといえどもたかがゴブリン、討伐完了までさして時間はかからなかった。

 ボスゴブリンのHPがゼロになると同時に穴も消え、三回目となるファンファーレとアナウンスが流れる。


【メイカー北の関所のボス。《ボスゴブリン》を討伐しました。新しい街への道が開放されます】

【ボス討伐報酬】

大鬼の硬皮×三、大鬼の硬牙×三、大鬼の冠×一、大鬼の魂×一


 ボスを討伐し終え、プレイヤー達がぞくぞくと新しく開放されたエリアに向かっていく中、俺もアガサとユリアさんと合流して向かう。

 先ほどまで閉めきられていた関所の門だが、今は開放され通行可能になっている。この関所を越すと別の国なんだっけな。前まで困り顔だった兵隊に話しかけてみると新しい国についていくつか教えてくれた。


「この向こうは【セイレス王国】という名の国で、主に至る所に点在する湖での養殖業が発達した国ですね」


 この世界には養殖なんてのもあるのか、どんな物なのか一回見に行ってみたいな。

 

 整備された道をしばらく歩くと、道の先が大きな下り坂になっていて、その先に街らしき物が見えた。結構距離があるな、さっさと休みたいんだが、主に精神的にボロボロだから……


「はやくはやくっ! 置いてくよ!?」

「俺のことはいいから先に行ってくれ」

「いや、それ死ぬじゃん!?」


 など適当に雑談しながら街に向かって歩を進める。

 あー、早く休んで白と仲直りしないと。でもどうすればいいんだ?


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