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30話

 遺跡に転移し、目当ての怪物を探し始める。今回は前衛が俺のほかにミチルもいるので大変心強い。ただ一つ、その怪物がどこに出るのかが分かっていないことが気がかりだ。一階に出現するのか、あるいはもっと下の階層に行かないと見つけられないのか。

 一時間ほど探索した後、俺の提案でセーフティーエリアで作戦会議を開くことになった。なんかミチルがもう飽きているように見えるけど大丈夫か?


「さて、四階まで降りたけど見つからなかった訳だが」

「だったらもっと下にいるんじゃないの?」

「だけど、ここまで来る間に通らなかったフロアもあっただろ? もしかしたらそこにいたのかも……」

「一階からしらみつぶしに探せっていうの!? うへぇ、めんどいなぁ」


 不満げに呟くミチルに横でマップを見ていたユリアさんが俺の変わりに答える。


「いえ、あのNPCの話では怪物はかなりの大きさであると思われます。したがって一階から五階までにある大きいフロアのいずれかにランダムで出現するのかと」


 いくつか印の付けられたマップを見せながら説明してくれるユリアさん。さっきから何を見ているのかと思ったらそんなことをしてくれていたなんて、流石です。


 ユリアさんの推測に基づいて再び探索を始める。まず向かうのは五階の中ほどにあるフロアだ。ミチルのやる気が残っているうちに見つかればいいんだけどな。

 もしどこにもいなくて、五階以降にいるってことだけは勘弁してもらいたい。新しい階層のマップを埋めながら怪物探すとか、手間掛かりすぎて今度こそミチルが逃げ出しかねない。


△ ▲ △ ▲


「グルァァァァァァ!」

「おぉ、一発で見つかるなんてラッキーじゃん」

「そんなこと言ってないで早く応戦しろよ!」


 どうせ一番最後のフロアまで現れないんだろうと油断していたところにいきなり目当ての怪物らしきモンスターが現れた。初めて見るからたぶん間違いないだろう。こういうのって最後に出てくるのがテンプレですよねっ? なんで初っ端に当たり引いちゃうんだよ!?

 今まで俺達が怪物と呼んでいた物の正体は背中に羽の生えた巨人、のガイコツだった。またガイコツかよ……

 背丈は天井に届くくらいで五mは軽く超えていそう、蝙蝠のような骨でできた羽を広げ、手には骨で作ったであろう背丈に比例して長い槍を持っている。羽をバサバサと動かし、地面から僅かにだが浮いているようだ。


「久しぶりに骨のある奴と闘えそうだね。ガイコツだけに……」

「全然うまくないからな、それ」

「じゃ、先手はもらったよ!」


 ミチルが矢のように飛び出し怪物に迫る。あんなんだけど仮にもトッププレイヤーの一人なんだったっけ。俺も行かないと。

 

 ガイコツに近づくにつれ羽のはばたきにより発生する風が容赦なく吹き付けてくる。しっかり踏ん張らないと吹き飛ばされてしまいそうだ。スピード重視のミチルもあの風に苦戦しているようだ。これじゃあ相当近くに行かないと点棒も届かないな、トランプならいけそうだが。

 どう攻めたものか考えているうちに防戦一方だったガイコツがしびれを切らしたように攻撃をしかけてくる。槍の端を持ち、体ごと回転させて突進してくる。地面から浮いているおかげで動きも速い。


「うわっ、こいつなかなかやるなぁ」

「三人で十分とか、ダルクさん嘘ついてるだろ……」


 攻撃を避けるためにミチルが後ろに下がる。すると今度は羽を大きく広げ、小さな骨の欠片を飛ばしてきた。あられの様に降る骨片を避けながら反撃の機会を窺う。近づくと風に阻まれ、離れると骨の雨が降る、なかなかバランスの良いモンスターだな。って感心している場合じゃない!

 と、その時、背後から一筋の光がガイコツに向かって飛んでいき、吸い込まれるように眼のあった穴の中へ入っていく。瞬間、ゴンッと鈍い音をたててガイコツが地面に墜ちた。振り返るとユリアさんが弓を構えた状態で立っていた。


「ユリアさん! ナイスです! でも何で?」

「眼の穴の奥からちらちら赤い球のような物が見えておりましたので試しに撃ってみたのですが、どうやら弱点のようですね」

「風の影響は受けないんですか?」

「矢を魔力でコーティングするアビリティがありますので。本当の使い方では無いのですが……」

「……」

「どうかなさいましたか?」

「ああ、いやいや。ありがとう御座います。それでどんどん墜として下さい」

「承知致しました」


 ユリアさん万能すぎる、あの人無しでは成り立たないもん。なんなのあの人。 

 ユリアさんに背を向けてガイコツの方を向く。ちょうど起き上がってまた飛び出したところだった。だが当然、風も発生するがユリアさんの矢によって地に落とされてしまう。そこへすかさずミチルが攻撃を浴びせる。


「ガァァァァァァァ!」

「うーん、風がなくなったのはいいけど、これじゃ張り合いがないな……」

「そこは我慢してくれよ」


 飛んでは落ち、飛んでは落ちるのを繰り返しどんどんHPを削られていくガイコツ。なんだか可哀想な感じになってきたな。ミチルなんか笑顔でアビリティ連発してるし、これハメ技じゃないのかな?

 反撃させる間もなくHPを削りきり、あっけなく戦闘が終了する。最後は本当にあっけなかったな。


「いやー、楽しかった!」

「だろうな、あんな笑顔だったし」

「お疲れ様でした」


 戦闘が終わってガイコツが消える。後にその場に残ったのはユリアさんがずっと狙っていた赤い球だけだった。これがコアパーツだったのか、あんなに攻撃して壊れてたりしてないかな?

 拳より一回り大きいくらいの赤球を拾い上げ、イベントリにしまう。あとはおじいさんの所へ戻って報告すればクエストクリアだな。


△ ▲ △ ▲


 再びおじいさんの長い話を聞いてから怪物について報告し、クエストをクリアした後、ダルクさんの店に帰ってくる。ミチルは羽ガイコツと闘って刺激を受けたのか、「狩って来る」と一言残し、どこかへ去っていった。ユリアさんも店の応援に駆けつけに行ったので一人で店を訪れる。

 だいぶ時間経ったけど、ダルクさんまだ居るかな。


 つい何時間か前に来たばかりなのに、もう何日か前のことのように思えてくる。あの暗い環境がいけないんだよな、時間の感覚が鈍るから。

 相変わらず閑古鳥の鳴いている露店にはダルクさんが座っている。そろそろ遅い時間になってきたので今日のところはダルクさんに素材だけ渡してログアウトしてしまおう。


「クエストクリアしてきましたよ」

「おう、お疲れ様。でどうだ? 手に入ったか?」

「そりゃもちろん。三人で十分って嘘でしたよあれ」

「そんなことはないだろ。一人でも魔法使いがいれば余裕って話だったぞ」

「その魔法使いがいればって部分を言ってなかったんですよ……」

「そうだったっけ、ごめんごめん今度からは気を付けるよ」


 大して反省た様子も無く適当に流すダルクさん。この人、俺達の苦労を知らないからこんなこと言えるんだよな。主に頑張ったのはユリアさんだけど。

 

「それよりほら、早く渡してくれよ。俺も早く作ってみたくてうずうずしてるんだ」

「……ったく、はい。これですよ、頼みましたからね。明日受け取りに来ますんでそれじゃ」

「はいはい、了解」


 トレードウィンドウにコアパーツと料金を載せてニヤニヤしているダルクさんに渡す。そんなに作りたかった物なのか? 

 今日は二回も遺跡に行って疲れたからさっさと帰って休もう。明日からはボス戦に向けての強化と新しい武器の性能実験か。あとアガサに飯奢らないと、ファミレスとかじゃ……駄目だよね、どういうところが良いのかマリオに聞いてみよ。

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