29話
誤字脱字、感想等ありましたらよろしくお願いします。
転移門を潜り、ダンジョンである遺跡に転移する。開放からまだ二日しか経っていない所為か入り口前にはそこそこの数のプレイヤーがいる。しかし昨日に比べると少なく感じる。やはり新しいルートのボスの方に行ってしまったのだろうか。
アイテムとステータスを確認してダンジョン内部に入る。コージの手伝いなので今日は二階攻略を目標にする。遺跡内を探索しつつ、現れるガイコツ兵士を倒していく。ユリアさんがいないのでいつ現れるか分からず、角を曲がっていきなり出くわすとかなり焦る。
当たり前のように教えてもらっていたけど、視界が悪い場所だとすごく助かるなあ、と改めて実感する。俺も取っておこうかな。
道幅がそこまで広くない中、コージとネズミんは縦横無尽に走り回ってガイコツ兵士を翻弄している。今は二階までが限界だけどこの分なら今日中にも四階を突破することも不可能ではないかもしれない。
時々フォローを入れつつ、コージの後に続いて遺跡内を進んでいく。
二時間ほどして俺の予想通り四階も無事攻略し、五階への階段前のセーフティーエリアに辿り着くことができた。五階からはガイコツ部隊長が出るから今日はここまでだな。
問題は帰りなんだが、俺はまた一階まで徒歩で戻ってもいいんだが、コージは疲れているかもしれない。俺の持っている転移門を使えば一瞬でメイカーに戻れるし、セーフティエリア内なので展開まで時間がかかるがモンスターは寄ってこない。
「なあコージ。俺、転移できるアイテム持ってるんだけど使うか?」
「えっ! そんな物あるの?」
「ここ開放したの俺のパーティーだから報酬でもらった」
「へぇー。初の転移アイテムか。羨ましいな……」
「それで、使うかそれとも修行がてら歩いて帰るか」
「うーん……どうしよう」
コージがどうするか悩んでいるところに五階から戻ってくるパーティーが階段を昇ってきた。あの人たち、どこかで見覚えがあるような。特に先頭のデカイ人。もしかして……ダイモンさん?
どうやらあちらも休憩している俺達に気付いたようで、俺と目が合ったダイモンさんが手を振って挨拶してくれた。それを会釈で返すとパーティーメンバーと一言二言話してこちらに寄ってきた。前よりも装備が豪華になっている。トッププレイヤーなんだから当たり前か。
「やあ少年。マッドゴーレムの時以来だな」
「お、お久しぶりです」
「そういえば、またボス戦があるが、君も参加するのかい?」
「はい、人数合わせ程度ですけど」
「キントウ君は確か、あのヘムジン商会に所属しているんだったよな?」
「ええまあ。知っているんですか?」
「ヘムジンの奴には散々ボッたくられたからな。あいつの下で働いているなんて君も相当の変わり者だな」
「そうですかね?」
「突然だけど、俺のギルドに来ないか?」
「すみません、今のところは……」
「そうか、まあ俺はいつでも歓迎するから気が変わったら来てくれよな!」
そう言い残して自分のパーティーのところへ戻っていくダイモンさん。一回しか会ってない俺のことを覚えてくれてるなんてやっぱ良い人だな。ギルドの勧誘を断ったのはちょっと申し訳ないけど、今のギルドに不満はないし仕方のないことだろう。
と後ろでダイモンさんとの会話を聞いていたコージがくいくいっと服の裾を引っ張ってくる。なんだ、やっと決まったのか?
「ちょ、ちょっと。キントウってあの人と知り合いなの!?」
「そうだけど、やっぱ有名なのか?」
「有名っていうか最大手のギルドのギルマスだよ? そんな人にスカウトされるなんて……しかも断ってるし」
「だって俺はもうギルド入ってるしな。きっと手当たり次第声をかけてるんじゃないか?」
あり得ないと言いたそうな顔のコージ。でも、もし入ったとしても俺とはきっと方向性が合わないだろうから今後も気が変わることは無いだろう。俺はこのゲームを楽しめればそれでいいのだ。俺にとって魔王なんてのもそのついでに過ぎない。
結局、試験型転移門を使って帰ることになった。見た目は街の転移門とさして変わらずサイズがやや小さいだけだった。試験型というだけあって展開まで三分ほどかかった。これをフィールドで使ったらモンスターが湧いてきて面倒くさいんだろうな。三分もモンスターの相手をしながら待つとか辛いでしょ?
△ ▲ △ ▲
メイカーに戻ってコージと別れた後、俺はダルクさんの店を訪れていた。相変わらず王都の南門の近くで露店を開いていた。変わった武器ばかり作っているから繁盛していないんだろうか?
「ダルクさん、今いいですか?」
「お、キントウじゃん。ずいぶんご無沙汰だな」
「新しい武器が何か出来てないかなと思って来たんですけど……あります?」
「ああ、暇だったからいろいろ探してたんだが、一つ面白い物を見つけたぞ」
ニヤっと笑うダルクさんに見せてもらったモノがこれだった。
武器名:自律人形・運喰い レア度7
武器種類:人形
攻撃力:
耐久値:100%
大昔に作られた骨董品、作者不明。所有者のLucで自動で動く人形。与えるLucが多ければ多いほど強くなる。伝説のギャンブラーであるジャンゴも護衛に使っていたが、ジャンゴの死後行方不明になっていた。
おおう、またジャンゴさんか。彼とは縁があるな、同じギャンブラー職だからってのもあるけど。それにしてもまた変な武器が出てきたな。そもそもこれは武器にカテゴライズされるものなのか?
「所有者のLucで動くってあるだろ? でも中途半端なLuc値だと使えなくてな、お前にぴったりだと思うんだが」
「これって使役系のジョブじゃないと使えないんじゃないんですか?」
「確かに使役系のジョブに【人形遣い】とか人形を使って戦うジョブはあるが、そいつらは自律人形じゃなくて自分で操作しなきゃならないんだよ」
「操り人形と自律人形の違いってことですか?」
「そうだ、自律人形は動力源さえあれば勝手に動けるらしい。この人形は動力源がLucってことだ」
「じゃあ、それにします。いくらですか?」
さっそくトレード画面を開くとダルクさんが難しそうな表情を浮かべていた。フードのおかげでよく見えないけど、そんな風に見えた。
「実はまだ作ってないんだよな……」
「え?」
詳しい話を聞いたところ、今はこれを作るためのレシピだけが手元にある状態らしく、素材があと一つ足りないらしい。その素材を手に入れるにはとあるクエストをクリアしなくてはいけないらしいのだが、討伐系のクエストのため、ダルクさん一人では行けなかったそうだ。
そこで俺が訪ねて来たので俺が代わりにそのクエストをクリアして来るということになった。
俺一人でも流石に無理があるので、自身の少ないフレンドリストの中から手伝ってもらえる人を探したところ、ユリアさんとミチルが呼びかけに応じてくれた。
俺のフレンドリストって少ないな、ギルドの面子とコージ、ミチル、ダイモンさんくらいしか居ない。あ、りんご飴もいた。あいつとは全然会ってないな。今はどこにいるんだろう?
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集合場所のメイカーの転移門前に向かうと既にユリアさんが来ていた。集合場所を決めたのが五分くらい前なのにもう来てるとか、完璧すぎます、ユリアさん。
しばらくしてミチルも転移門の中から出てきた。ユリアさんとは初対面なので軽く自己紹介を済ます。
「お初目に掛かります、ユリアと申します。どうぞよろしくお願い致します」
「ミチルでーす! よろしくね」
「今日は来てくれてありがとな」
「いいのいいの、暇だったし」
ユリアさんはいつも通り優雅に、ミチルも前と変わらず軽そうな挨拶を交わす。自己紹介も終わったので、早速、本題に移らせてもらう。ダルクさんが言うには『攻略組が三人もいれば問題無いだろう』とのこと。一応、俺とユリアさんも攻略組ってことになっているし、ミチルは言わずもがなトップと謳われるプレイヤーの一人なので戦力的には申し分ないだろう。
よくミチルほどのプレイヤーとフレンドになれたよな……紹介してくれた雷さんのおかげだな。
二人にパーティー申請を送ってパーティーを組む。そこからポルキデス坑道の中にあるという小屋に向かう。そこに今回のクエスト発生の為のNPCがいるらしい。ダルクさんにマップに印をつけてもらっていたので、迷うことなく薄暗い坑道内を進み、目的地である小さな小屋を見つけることが出来た。
中にはおじいさんが一人、椅子に腰掛けていた。あれがクエスト発生させるNPCだ。話しかけるとおじいさんは一人で勝手にしゃべり始めた。おじいさんはかつて坑道で働いていた工夫だったそうで、この坑道を掘っていた頃の話などを小一時間ほど聞かされた。ミチルなんて欠伸してるし。
そしてとうとうおじいさんの話がクエストに関係がありそうな話題に変わった。
「そういえば、坑道の出口の一つに遺跡があったじゃろ。あそこはいっちゃいかん。魔物がわんさか出おる。昔、わしの仲間の工夫が面白半分で中に入っていったら泣きながら帰ってきおったわい。なんでも恐ろしい怪物と出くわして、無我夢中で逃げ帰って来たとか……」
それまで興味無さげだったミチルが一変、興味津々といった様子で食いつくように話を聞いている。恐ろしい怪物ねぇ、何が出てくるのやら。
おじいさんの話が終わると同時にクエストが始まるのを知らせるシステム音が鳴り、目の前にクエストの詳細が書かれたウィンドウが現れる。
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討伐クエスト:デイノ遺跡の怪物
依頼者:元炭坑夫の男
報酬:コアパーツ・L
彼が昔聞いた噂の遺跡に現れる怪物の正体を暴き、討伐せよ!
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この報酬に書かれているコアパーツっていうのがダルクさんが必要としている素材ということになる。怪物っていうだけで情報が無いのが心配だけど、ミチルもユリアさんもいるしマリオからポーションも買ってあるのでたぶん大丈夫だろう。
「楽しみだね! どんなモンスターなんだろ?」
「あんまり強いのは勘弁だけどな」
「でも今までそんなモンスター出て来てなかったんだけどなぁ」
「きっとクエスト専用モンスターなのでしょう」
「あ、なるほどー」
クエストも無事受けることができたし、ミチルのやる気も高いし準備万端だ。また坑道を歩くのも面倒なので試験型転移門で直接遺跡の転移門に転移する。ミチルが驚いているのを見ているとちょっとだけ優越感に浸れた。俺とユリアさんとアガサしか持ってないからな。




