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20話

いつの間にお気に入りが’100を超えていました。ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

 二日経って今俺がいるのはω姐さん達の店の工房スペース。あの日、ヘムジンさんにギルド加入の意を伝えたあと、ギルドメンバーが全員集まれる日が来るまで自由行動と言われたので、この二日間は学校から帰ってから十八時頃まではグラムの西にあるグラム大森林の探索をし、その後姐さんの店で雑談。という行動パターンになっている。

 初日に仕事を受けすぎたのか店を二日間とも臨時休業にしてずっと注文の品を二人で作っていた。俺はそれを見ながら彼らに話し相手になってもらっている。


「それにしてもまさかキントウ君があの【変人】のギルドに入るなんてね」

「ああ、俺も驚いたよ。てっきり調薬の嬢ちゃんとギルドを立ち上げると思ったんだけどな。よりによってあの【変人】のギルドとはな……」

「でも活動方針はピッタリですよ。なんていったって『金儲け!』ですからね。あまり変人変人って言うと怒りますよあの人」


 俺と話しながらも手は休めずに防具を作り続ける二人。やっぱりヘムジンさんのことは知っているみたいだ。客でもないのに店に長居して悪いかもな、と思いつつ彼らの作業を眺めていると視界の片隅にメールが届いたことを知らせるアイコンが点滅していた。

 開いてみるとヘムジンさんからだった。メンバーの都合がついたのかな?


△ ▲ △ ▲


From:ヘムジン

件名:決定!


全メンバー八人が全員集まれる日が決定したのでお知らせします。次の土曜日午後一時にメイカーの噴水前に集合してください。


ちゃんと来てね?


△ ▲ △ ▲


 次の土曜ってことは……あと三日間も自由行動が出来るのか。もうしばらくグラム大森林の探索でもするか、だれか誘って他のフィールドに行くか悩むな……

 メールを読んで悩む俺を見た雷さんが防具から目を離さず思い出したように話しかけてきた。


「あー、そういえば。キントウはもう闘技場行ったか?」

「へ?いえ、まだ行ってないです。まだ関係なさそうなので」

「は!? お前知らないのか? 闘技場にいるNPCに話しかけると転職できるんだぞ」

「……マジっすか?」

「マジマジ、知らなかったのか?」


 マリオのやつ、一言もそんなこと言ってなかったぞ。そんなの行かない手は無いじゃないか。

 雷さんにお礼を言って店を出て闘技場に向かう。場所は転移門のある広場の北側、内通りと外通りに挟まれた一画にある。マップを確認しながら早歩きで移動する。

 雷さんによると、レベルが30以上で転職ができるそうだ。今の俺のレベルはちょうど30。ヘムジンさん達と会う前に知ることが出来て良かった。

 俺以外みんな転職していたら恥ずかしかったし。


 外通りの角を曲がると目の前に現れたのは円形状の建物。簡単に言えばコロッセオみたいな建築物だ。誰だって【闘技場】と聞けば思い浮かぶよな。

 ってことは円形状の街の中に円形状の建物があるのか。特に深い意味は無いが頭の中でイメージする。 

 ……うん、特に意味は無かった。


 入り口から中に入ると、まず目に入ったのは大きな受付カウンター。その周りにちらほらとプレイヤーが数人で集まって雑談をしている。

 受付にいる職員に話しかける。


「すいません、転職は何処でできます?」

「転職の方ですね。でしたら右手の三番窓口でお待ちください」


 職員の指す先には人の列が出来ており、今は十人ほど並んでいる。今現在の最高レベルが確かダイモンさんの32、続いてクーデルさんが31だった気がする。

ということは今並んでいる人たちは【攻略組】と呼ばれる人たちなんだろう。なんだか気まずいな……


 最後尾に並ぶと周りのプレイヤー達にの視線が一瞬俺に集まった気がしたけど、気のせいだろうか?


 少し待って俺の前のプレイヤーが転職を終え去っていく。さて次は俺の番ですか。

 わずかばかり緊張しながら職員の前に立つ。


「転職をご希望の方ですか?」

「はい」

「転職はレベル30に達していないと行えません」


 俺はレベル30なので問題無い。そのまま新しいウィンドウが目の前に現れた。…けど、何も出ていない。いや、上のほうに【選択肢の中からジョブを選んでください】という表示は出ているけど選択肢が一つも無い。どういうことだ?


「あの……何も表示されてないんですけど」

「現在のジョブによっては転職が行えない場合もございます。また転職の方法は他にもございますので是非探してみてください」


 NPCの職員は顔に笑みを浮かべてそう言った。俺にとってその顔は転職が出来なかった俺を馬鹿にしているように見えた。


△ ▲ △ ▲


 防具製作の為、機械を動かす音が響く工房の中で、俺は椅子にもたれていた。あのあと意気消沈のまま雷さんの店に戻ってからかれこれ二時間ほどこうやって燃え尽きている。

 はぁ、転職したかったなあ……


「そんなに落ち込まないでよ、別の方法があるかもしれないんでしょ?」

「そうだぞ、後で凄いのがでてくるかもしれないしな」

「うう……てんしょくぅぅ……」


 ああ、もう最悪だ。今日はもうログアウトして寝よう。

 そろそろ新しい装備を頼もうかな。あ、でも今は逆に迷惑か。まだまだ仕事は残ってるみたいだし。


△ ▲ △ ▲


 それから三日経って今日は土曜日。ヘムジンさんとの約束の日だ。あれから何回か闘技場に足を運んで転職に挑戦してみたけど、結局できなかった。マリオなんかは【調薬】から【薬学】というジョブに転職していた。前より作れるポーションの種類が増えたらしい。

 意外とレベル上がってるんだな。コージの方はゲームでは会ってないが学校でもう少し時間がかかると言っていた。


 火曜日からの四日間はグラム大森林の探索を進めていたおかげで、俺のレベルは今の時点で31になった。30を超えるとレベルが上がりにくくなるらしい。大森林は適正レベルより下だったのもあるだろう。


 マリオにも三日前に同じメールが来ていたようなのでメイカーの広場で待ち合わせることにした。

 最近になってやっと慣れてきた外通りと内通りを繋ぐ無数の路地を頭に描きながら最短ルートで広場へ向かう。ただいまの時刻は午前11時50分。マリオとの集合時間は正午、先に二人で昼食をとってからヘムジンさん達と合流することにしたのだ。


 あたりから響く金属を叩く音や木材を加工する音をBGMに路地を進む。ここ数日で新く開放されたこのメイカーで自分の店を開くプレイヤーが増えてきてそれなりに賑わっていたりする。

 細い路地を抜けて内通りに出る。休日の昼ということもあってか通りは大変混雑していた。


 内通りを横切り広場に向かうと、すでにマリオは待っていた。新しく装備を変えたのか今までの初期装備の服から白衣姿に変わっていた。石畳で舗装された街並みに白衣姿はやや不自然だったが、まわりに様々な格好をしたプレイヤー達が歩いているのを見ているとそうでもないか、という気持ちになる。

 広場に入ると俺に気づいたマリオがこちらに向かって手を振ってきた。


「よお、ずいぶんと早いじゃないか」

「暇だったのよ。それよりどうこの格好?」


その場で一回りして俺に白衣姿を披露するマリオ。


「……なんで白衣?」

「この前に露店で買ったのよ。Dexに補正がかかるし、それに格好良くない?」

「まあまあかな」

「なによ、無愛想ね」


 少し機嫌の悪くなったマリオを連れ近くのレストランに入る。機嫌を直してもらうためにもここは俺の奢りだな。

 NPCのウェイターに案内されて窓際の席に座る。広場に面した店なので外からは丸見えだ。リアルじゃこんな店に入ることはないのでちょっと恥ずかしい。

マリオはパスタ、俺はカレーを頼んで料理が運ばれてくるのを待つ。

 その間にさっきよりは機嫌が直ったマリオが話しかけてくる。


「この店ってプレイヤーが経営してるらしいよ。今話題の店ってやつ?」

「へー、知らなかった。マリオはそういうの気にするんだ」

「人並みにはね。あんたが気にしなさすぎなのよ」

「掲示板とか見るの面倒くさいんだよな」

「だから情報がすぐ手に入らないんじゃないの」


 転職の情報とか、と付け加えて水を飲むマリオ。

 確かにいろいろと他人に教えてもらってばかりな気がするな。フィールドやモンスターの情報とかは知っていたほうがいいし、今度ちゃんと見てみるか。


 しばらくして料理が運ばれてくる。マリオはテーブルに置かれるのも待ちきれないといった様子ですでにフォークを構えている。

 最初はお互い無言で食べていたが、半分ほど食べ終わるとどちらからともなく会話が始まる。ようやく完全に機嫌が治ったみたいだ。


「いやー、上手いし、安いし、それにいくら食べても太らない! ゲーム最高だね」

「リアルで食べないと死ぬけどな。」

「ヘムジンさんのギルドってどんなとこだろうね」

「きっと変な人たちばかりなんじゃないか」

「それはそれで楽しみじゃない?」


 昼ご飯も食べ終わり、会計を済ませて店を出る(もちろん俺の奢りで)時間はちょうど一時に差し掛かろうとしていた。広場に戻るとヘムジンさんはもう来ていた。


「ヘムジンさん、こんにちは」

「こんにちは、マリオちゃんとキントウ君。じゃあ行こうか」


 軽く挨拶だけ交わしてさっそく移動を開始する。

 さて、俺の加入したギルドはどんなところなのかな?


改稿しました

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