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19話

誤字脱字、感想等ありましたらよろしくお願いします。

 一瞬白い光が視界を埋めたあと、目の前に現れたのは最初の街とほぼ同じ形の広場。違うところといえばあちらこちらでプレイヤー達が声を張り上げ自身のギルドの勧誘を行っているところだろう。


「火属性魔法が使える人、場集してまーす!」

「近接なら誰でも歓迎してるよ!」

「初心者でも歓迎だよー」


 至る所からギルド勧誘の声がする。すると俺たちに気づいたプレイヤーの一人が小走りで向かってきた。おそらくマリオ目当てだろう。


「やあ、マリオ。前に言ったけど俺たちのギルドに入ってくれるか?」

「ごめんなさい、もう入るギルド決めたので」

「そうか残念だな。でもポーション販売は続けるんだよな?」

「はい! 今後とも御贔屓に」


 それじゃ、といって再び勧誘に戻る男性プレイヤー。思ったよりあっさりしているんだな、と思ったのも束の間マリオがこっちを向いて、「じゃあ行こうか」と笑顔で俺の腕を掴んできた。

 ……笑顔が怖い。


 拘束されたまま石畳の道を歩きながらマリオにこの街の説明を受ける。さっきより力が強いんですけどっ!


「まず、この街は【メイカー】っていう名前で名前の通り生産者向けの街ね。で、街全体は円形で北門と南門しかないわ。南からはグラムに戻れて、北から出ると新しいフィールドになってるの。何か質問は?」

「この街の主要な施設は?」

「ギルド管理事務所とホームセンターと闘技場くらいね。あとは素材屋とかが他の街より多いくらいかしら」


 管理事務所やホームセンターなどやけに現代的な名前が出てきたので詳しく聞いてみると、ギルド管理事務所はギルドの設立や管理を担当する施設でホームセンターはそこに行くとプレーヤーは自分の家が買えるらしい。結構ややこしいな、闘技場は名前の通りプレイヤーたちが戦える場所ということだ。

 そのうち公式のイベントでもやるのでは? というのがマリオの考えである。

 街の具体的な構造を聞くと、スラスラと答えが返ってきた。昨日開放されたばかりなのによく知ってるな。


「全体が円形なのは言ったよね、それでさっき転移した広場を街の中心にしていくつかある道を抜けると円形の大通りがあって更にいくつかある道を通ると大通りがあるわ。内側が内通り、外側が外通りって呼ばれてるわ。上から見ると三重丸になってるわね」

「そういえば、オメガ姐さんと雷さんが昨日家買ったらしいから行ってみたいんだけど」

「いいけど、どこか分かるの」


 「たぶん」と言いながらメニューを開くと、やはり姐さんからメールが来ていた。内容も『家買えたから来てね!』というもので、場所もちゃんと書いてあった。

 マップと照らし合わせてみると、どうやら外通りに面した場所らしい。マリオに教えると、「着いて来て」と既に街の地図が頭に入っているかのように迷い無く歩いて行く。俺は慌てて彼女を追いかけていった。


△ ▲ △ ▲


 小さな路地や薄暗い道を進んで行くマリオに着いて行くこと約十分。ようやく彼女の足が止まった。やっと着いたのかとマリオの隣に並ぶと、目の前には長蛇の列が出来上がっていた。

 ざっと見ても20mはあろう列が二重三重に折れ曲がって並んでいるのを目の当たりにしてマリオの口があんぐり開いていた。


「……ここがあの二人の店?」

「地図によると……」

「相当並んでるわね……」

「βテスターとは聞いていたけどまさかこんなとは……」


 頭痛でもするのだろうか、マリオがこめかみを押さえている。雷さんたちがトッププレイヤーの装備を作るくらい腕が立つのは知ってたけど、まさかこんなに有名だとは知らなかった。

 姐さんの店なんか何時言っても暇そうにしてたし。そういえば、マリオも露天用マットとか貰ってたり、手伝ってもらってたりしたし。


「オメガさんと雷さんって生産者の中じゃ有名なのよ?そんなことも知らなかったの」

「行くときに客が居たことないし」

「あんたって奴は……」


 今度は頭を抱えだすマリオ。そんなに頭痛が酷いのか。ゲームなのに妙にりあるだな、などと考えてると、復活したマリオが少しイラついた声で聞いてきた。


「どうやって入るのよ? あんな列並びたくないわよ!」

「まあ待て、こんな時のコールだろ」


 マリオをなだめながらフレンドリストを開き、姐さんにコールする。

忙しいせいか時間がかかったが出てくれた。


『キントウ君? 今ちょっと手が離せないんだけど』

「ええ、ずいぶん繁盛してますね」

『もしかして来てるの?』

「はい、店の前にいるんですけど、入れそうにないですね」

『ちょうど良かった。裏口から入ってきてくれない?』

「え、ちょ、まっ……」


 そう言われて一方的に切られてしまった。マリオが「どうなのよ」みたいな顔で見てくるので仕方なく彼女を連れ、店の脇の路地から裏口に入る。


△ ▲ △ ▲


 中では外からは想像出来ない位のやり取りが繰り広げられていた。

俺たちが入ってきた裏口からは工房のスペースに入れた。そこら中に機械が置いてあって雷さんが防具を作っていた。

 そして扉の向こうでは姐さんが一人で接客をしていた。だからあんなに並んでいたのか。


「はい次の方! ……はい、重装備で素材は持ち込みですか。それなら金額は……8万エンです。……はいたしかに受け取りました。ではこちらの控えを後日お持ちください、ありがとうございました。次の方……」


 ω姐さんが接客をする間、雷さんは裏口のある工房で脇目も振らず防具を作っている。なんか声が掛けづらい。

 少しの間、裏口で突っ立てると俺たちに気づいた雷さんが防具を作りながら話しかけてきた。


「おう、キントウか。悪いけど手伝ってくれないか? オメガ一人じゃ捌ききれなくてな。……報酬は出すから頼む!」

「報酬っ!? 私手伝います!」

「じゃ、じゃあ俺も……」


 始めは面倒くさそうな顔をしていたマリオだが報酬と効いた途端、文字通り目の色を変えて姐さんのいるカウンターへと駆けていった。マリオがだんだん金の亡者と化してきてかなり心配だ……



「姐さん、手伝いますんでやり方教えて下さい」

「ホント? 助かるわ。この用紙に重装か軽装かと素材の有無とその他何かあったら書いて控えを渡して。金額は前払いで一律、重装が素材有で8万無しで10万。軽装が有で5万無しで7万だから。じゃ、よろしく!」


 そう言うと奥の工房に回って装備の製作を始めてしまった。

すでに隣では説明を受けたマリオが接客に取り掛かっている。手伝うといった手前俺もしっかりやらないとな。

 目の前に並んだ軽装備のプレイヤーに話しかける。


「次の方どうぞ。はい、軽装ですね……」


△ ▲ △ ▲


 あれから三時間。俺とマリオの二人で客をなんとか捌ききった。次々と押し寄せる客の波を消化していき、ようやく最後の客が出て行った途端俺とマリオはその場にへたり込んだ。


「疲れた……」

「まさかこんなに来るとは思わなかったけど、報酬ははずむわよね……?」

「キントウ君とマリオちゃん、お疲れ様。ごめんね、初日からこんなに混むなんて予想外だったわ」


 ω姐さんが店先の看板を《OPEN》から《CLOSE》に変えて戻ってくる。雷さんもようやく一段落したようで肩をも揉みながら工房から出てきた。


「あー肩凝った。ゲームでも重労働すると疲れるんだな。あと腹も減ったし」

「そうだ! これからご飯食べに行かない? もちろん私たちの奢りで」

「いいんですか!」

「まさかそれが報酬だって言うんじゃ……」

「あはは……後でちゃんと払うって……」


 マリオの目が妖しく光ったのを見て苦笑いで返す姐さん。いくつか後片付けをしてから店を出る。振り返って二人の店を見る。

 最初は並んでる列のインパクトが強すぎてよく見てなかったけど改めて見てみると、メイカーの街の雰囲気に合った石造りの一軒家で、今は沈む太陽の夕日を浴びて赤く染まっている。

 俺たちが出てきた扉には【Ikazuti&ω Works】と書かれた看板がぶら下がっている。それを見ていると姐さんが笑いながら。


「私も雷もいい名前が思い付かなくてね、そのまんまの名前にしたんだよ」

「俺は昨日この店を買うのに精一杯でな、危うく喧嘩になるところだったんだぞ」

「はいはい、感謝してますよ」

「その言い方、絶対してないだろ!!」

「してるって~」


 言い争う姐さんを見ながら、マリオの案内で近くのファミレスに入る。

席に着いて一息ついた後、ようやく出来たマリオの紹介(二人とも名前は知っていたが)を終え、和気藹々と食事をした。

 途中で何故か置いてあるドリンクバーで雷さんが作った謎の液体を飲んだマリオが気絶の状態異常になったりして、結構楽しかった。


 無事に報酬を受け取ってホクホク顔のマリオを連れ、ファミレスの前で雷さん達と別れた俺たちは暗くなり、街灯が照らす石畳の道を二人並んで歩いていた。


「んで、新しい街はどうだったん?」


 自分のウィンドウを操作しながら聞いてくるマリオ。


「まだ全部まわれたわけじゃないけど、今日は楽しかったよ」

「じゃあ時間稼ぎは成功したわけだ?」


 意地の悪い顔で覗き込んでくる。確かに気分転換にはなったな。

 今日始めてこの街に来た時、広場では盛んにギルドの勧誘を行っていて、そのどれもが打倒魔王を掲げているギルドだった。

 このゲームの最終目標がそれなのだから当たり前といえば当たり前なのだが。俺は別に魔王討伐に固執していない。他人から見れば変に見えるだろう。ただ冒険を楽しみたいなら他のゲームに移ればいいと言われるかもしれない。

 だが俺はこのゲームが好きだ、これは譲れない。だから……


「……ヘムジンさんとこ……参加してみるかな」

「ホント!? 一緒に参加してくれるの?」

「一応、な」

「それでも良いよ! 気が変わらない内に私から連絡しておくね」


 といい終わらない内にウィンドウを操作し、メッセージを送るマリオ。そんなに俺を巻き込みたかったのか、と内心呆れつつ広場に向かって歩を進める。


 広場から最初の街に転移してマリオとはそこで別れた。帰りは掴まれなくて良かった。あいつ結構腕力強くて痛かったんだよな……


△ ▲ △ ▲


 ログアウトするために宿を借り、いざログアウトしようかとメニューを操作してた矢先、ヘムジンさんから突然コールが掛かってきた。どうしたんだろう。

 もしかしたら『やっぱ来なくてもいいよ』みたいな事を言われてしまうんじゃないだろうか?マリオさえ参加すれば俺はいらないのかもしれない。

おそるおそるコールに出る。


『あ、夜遅くにごめんね。今大丈夫かな』

「大丈夫ですけど何か用ですか?」

『キントウ君に言いたいことがあってさ』


 言いたいこと、と言われさっき考えてたことが頭に浮かぶ。まさか本当に…


「言いたい事って何ですか」

『さっきマリオちゃんからキントウ君が僕のギルドに参加してくれるって連絡が来たけど本当?』

「はい、本当です」

『その事についてなんだけどね……』


 突然言い難そうに口ごもるヘムジンさん。やはり俺はいらないのか、一人で考え込んで馬鹿みたいだな。


『僕のギルドに参加してくれてありがとね』

「ですよね~俺はいらないですよね……って、え?」

『ん、聞こえなかった? 僕のギルドに入ってくれてありがとうっていったんだけど』

「あ、いえいえ。聞こえてますよ、はい」

『いやー、マリオちゃんだけじゃ心細いと思ってさ、キントウ君がいれば安心できるよ。キントウ君も自由に活動してくれて構わないから』

「こ、これからよろしくお願いします」

『うんよろしくー』


 それじゃおやすみ、と会話を終える。途端備え付けのベットに頭から倒れこんだ。小さい頃同じような経験があったから軽くトラウマになりかけていたんだよな。

 期待してただけ反動も大きいってやつ、あの頃は三日間くらい寝込んだっけ……


 その後、眠るようにログアウトした俺はヘッドセットも外さないまま寝てしまい、次の日盛大に寝坊した。安堵のあまり寝すぎたようだ……

改稿しました

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