大掃除と美食革命
天国組のジュリアンやエドワード殿下、それに頼もしい仲間たちが、かつての諸悪の根源であるアウストラル帝国の内情を調査するために旅立った日のことだった。
アイラとリリアは、アルジェント公爵邸のサロンで、残された平和な時間を極上のフルーツケーキと共に満喫していた。
「お姉様、ジュリアン様たち、無事に潜入できたでしょうか」
「あのメンバーなら、帝国ごと更地にしかねないから心配するだけ無駄よ。それより、このケーキのクリーム、絶品だから早く食べなさいな」
二人がそんな呑気な会話を交わしていると、サロンの扉がノックされ、この世界線の若きジュリアン殿下とエドワード殿下が連れ立って入ってきた。
「やあ、アイラ、リリア嬢。少し邪魔させてもらうよ」
「急な訪問で申し訳ありません。どうしてもお耳に入れておきたいことがありまして」
十五歳のジュリアン殿下とエドワード殿下は、未来の彼らほどの腹黒さや完成された威厳はないものの、すでに王族としての優れた知性と気品を十分に備えていた。
「あら、殿下たち。ちょうどお茶を淹れたところですわ」
アイラたちが彼らをソファに勧めると、若きジュリアン殿下は出された紅茶を一口飲み、スッと真剣な顔つきになった。
「実は、国王陛下との話し合いで、前の時間軸で起きた事件のあらましを聞いていたとき、西のサイフリート王国の強行派たちの背後には『悪魔』が絡んでいて、戦争を起こさせようとしていたと言ってたのを思い出してね」
その言葉に、アイラは思わず手に持っていたフォークを止めた。
「そう言えばそうね、それで?」
「ならば、この時間軸でもすでに悪魔がサイフリート王国に潜んでいるのではないかと思って、確認に来たのだ。確証が高くないと動いてもらえないと思ったからね。だが、前の時間軸の事実という強力な根拠があれば、天界も直に調査へ動いてくれるのではないかと思ってね」
若い彼らが、限られた情報から的確に状況を推測し、天使を動かすための交渉材料として持ってきたことに、アイラは純粋に感心してしまった。
すると、アイラの背後に控えていた専属侍女のエマが、ふっと目を閉じて神々しい金色の瞳を開いた。
「……ほう。過去の事実を根拠に我々を動かそうとは、なかなか狡猾な人間の若造だな」
エマの体を借りて表に出た天使シュシュエルが、腕を組んで若き王子たちを見下ろした。
「しゅ、シュシュエル様……! では、やはり我々の懸念は当たっていたのですね」
若きエドワード殿下が息を呑むと、シュシュエルは忌々しげに鼻を鳴らした。
「ああ。お前たちの話を聞いて、先ほど天界のネットワークで直に確認してみたのだが――どうやら事実のようだな。サイフリート王国ではすでに悪魔どもが暗躍し、儀式に必要な黒い魂をあらかた手に入れた後のようだったぞ」
「なんということだ……! このままでは、我が国にも被害が及ぶのは時間の問題ではないか」
若きジュリアン殿下がギリッと奥歯を噛み締める。
「案ずるな、人間の王子よ。お前たちが確固たる情報を持ち込み、悪魔が直接絡んでいると判明した以上、これは我々天界の管轄だ。サイフリート王国の悪魔どもは、私が天界から討伐部隊を呼んで一掃してやろう」
シュシュエルの頼もしい宣言に、若き王子たちは深く安堵の息を吐き出した。
「天界の軍勢が動いてくださるのなら、これほど心強いことはありません」
「ええ。ならば、我々は国内に潜む『人間の裏切り者』と、サイフリート王国の強行派の間者たちを狩り出すことに専念できますね」
若きエドワード殿下の言葉に、ジュリアン殿下が不敵な笑みを浮かべた。
「その通りだ。国内のネズミの掃除くらい、我々二人で十分に対処できる。……すでに、完璧な作戦が進行中だからね」
「作戦って、どんなことを企んでいるんですか?」
アイラが興味津々で尋ねると、若きジュリアン殿下は悪戯っぽくウィンクをして見せた。
「それは、一ヶ月後のお楽しみだよ。君たちは安心して、ここで美味しいお菓子でも食べて待っていてくれ」
そう言い残し、二人は嵐のように王宮へと戻っていった。
そして、彼らが宣言した通り、一ヶ月後の王都は驚きと歓喜の渦に包まれることとなった。
「お姉様、聞きましたか! ジュリアン殿下とエドワード殿下が、国内に潜んでいた他国の間者と裏切り者の貴族たちを、一網打尽に捕縛したそうですわ!」
リリアが興奮気味に駆け込んでくると、アイラも思わず歓声を上げた。
彼らの作戦は、見事というほかないほど大胆で鮮やかなものだった。
若きジュリアン殿下は、『王宮主催の盛大なパーティーを開き、そこで自分とエドワードの婚約者を正式に発表する』という特大の噂を王都中に流したのだ。
権力欲に目の眩んだ裏切り者の貴族たちや、王宮の混乱を狙うサイフリートの間者たちは、この千載一遇のチャンスを逃すまいと、証拠となる密約書や危険な魔導具を懐に忍ばせてパーティー会場へと集結した。
「そして、入場する際に『王宮内に緊急事態が発生したため、安全確認のために全員の手荷物検査を強行する』と宣言して、逃げ場のない状態で証拠ごと全員を拘束したのよね」
アイラが報告書を読みながらニシシと笑うと、リリアもクスクスと笑った。
国内の膿を一気に絞り出すような鮮やかな手口に、アイラは思わず胸がすくような爽快感を覚えた。
「ええ。しかも、王宮の警備が不十分だと指摘し、国王陛下に直接『暗部』を動かす許可まで取り付けていたそうですわ。ジェラール国王陛下も、『国のためなら父親である私も存分に使え』と笑って快諾されたとか」
父親である国王すらも作戦の駒として使いこなすその手腕は、若くても間違いなくあの腹黒王太子の同一人物だと証明していた。
「おかげで、前の時間軸で起きた王家の宝剣の盗難事件も、セオドアお兄様に逆恨みして起きたうちの食材盗難事件も、すべて未然に防げたわけね」
アイラにとっては、美味しいご飯の材料が盗まれなかったことが、個人的には一番のグッジョブだった。
こうして、王国内の不穏な事件は、若き王子たちの活躍によって完璧に片付けられたのだった。
数日後、事後処理を終えた若きジュリアン殿下とエドワード殿下が、晴れやかな顔でアルジェント公爵邸へと慰労に訪れた。
「いやあ、無事に片付いて何よりだ。これもすべて、アイラとリリア嬢が平穏に過ごせる国を作るためだからね」
「ええ。これで少しは、リリア嬢に安心して寄り添うことができるというものです」
若きジュリアン殿下は、ふと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「しかし、罠にかかったあの時の奴らの間抜けな顔といったらなかったよ。懐から密約書や危険な魔導具が出てきた瞬間、『ば、馬鹿な! なぜこれを……!?』と一様に絶句してへたり込む様子は、なかなかに見物だったね」
若き彼らも、天国組の彼らと同じようにアイラたちに甘い言葉を投げかけてくるが、アイラはそれよりも優先すべき大事なことに集中していた。
「お疲れ様です、お二人とも。さあ、今日は特別に、うちの料理長が腕によりをかけた『極上ローストポーク・特製フルーツソース仕立て』をご用意しましたわ!」
アイラが大皿をドンッとテーブルに置くと、香ばしい肉の匂いと甘酸っぱいソースの香りがサロンいっぱいに広がった。
前の時間軸との最大の違いは、アイラが早々に公爵家の厨房を掌握したため、『美食革命』がまだこのアルジェント公爵家でしか起きていないということだ。
若きジュリアン殿下が、切り分けたローストポークを口に運んだ瞬間、そのエメラルドの瞳が驚愕に大きく見開かれた。
「……っ! なんだこれは……! 私が王宮で毎日食べている香辛料漬けの肉とは、まるで次元が違う! 噛み締めるほどに甘い肉の脂が舌の上でとろけ、そこに絡む未知のソースの酸味が、肉の旨味を極限まで引き上げている……!」
「美味しいです……! リリア嬢、このような素晴らしい料理を毎日召し上がっているのですね!」
二人は王族としてのマナーを忘れかけるほどの勢いで、次々と料理を胃袋へと収めていった。
「ふふん、驚くのはまだ早いわよ。……ねえ、ジュリアン殿下。この素晴らしいお料理、王宮でも毎日食べたいと思いませんこと?」
アイラが悪党のような笑みを浮かべて提案すると、若きジュリアン殿下はハッとしてアイラの顔を見た。
「アイラ……君、まさか、我が王宮の厨房にまでこの味を広めてくれるというのか?」
「ええ! もちろん、ただでとは言いませんわ。私が『王宮美食顧問』として、王国の食卓に革命を起こして差し上げます! その代わり、最高級の食材は使い放題にしてくださいね!」
前の時間軸では王宮で出された不味い料理にキレて強引に革命を起こしたが、今回は平和的に、そして合法的に王宮の胃袋を掌握する算段だ。
「素晴らしい提案だ! 父上にも私から強く進言しよう。……アイラ、君のその食への探求心は、この国を救う魔法よりも尊いかもしれないな」
若きジュリアン殿下が、完全に胃袋を掴まれた男の顔で嬉しそうに頷いた。
「お姉様、また忙しくなりますわね。でも、美味しいものが広まるのは素敵なことですわ」
リリアも天使のような笑顔で賛同し、アイラたちの新たな『王宮美食革命』の計画は、最高の形でスタートを切ったのである。
過去の世界でも、悪党は掃除され、美味しいご飯は世界を平和にしていく。
天国組の仲間たちがアウストラル帝国から帰還するのを待ちながら、アイラとリリアの騒がしくも美味しい二度目の日常は、最高の笑顔と共に続いていくのだった。
そして数日後、王宮の豪奢なプライベートダイニングにて、ついに国王ジェラール陛下と王妃テレーゼ様との顔合わせの場が設けられた。
本来ならば未来からやってきたアイラたちの特異な事情を説明し、今後の王国の防衛方針を話し合うための極めて真面目な席であるはずだった。
しかし、アイラにとってこの場は、自らの胃袋と美食革命の野望を満たすための最高のプレゼンテーションの舞台でもあったのだ。
「ジェラール陛下、テレーゼ王妃様。本日は、アルジェント家料理長のガストンと、王宮料理長のドミニクが協力して作り上げた、新しい王国の味をご用意いたしましたわ」
アイラが完璧な淑女の微笑みを浮かべて紹介すると、銀のクロッシュが一斉に外され、暴力的なまでに芳醇な香りがダイニングを満たした。
テーブルに並べられたのは、過剰な香辛料を一切使わず、素材の旨味を極限まで引き出した黄金色のコンソメスープや、アイラが持ち込んだ醤油エッセンスで香ばしく焼き上げられた極上の肉料理の数々である。
「こ、これは……なんという素晴らしい香りだ。今まで私が王宮で食べていたものは、一体何だったというのだ」
ジェラール陛下が一口スープを飲んだ瞬間、王冠を落としそうになるほど目を見開いて驚愕の声を上げた。
「ええ、本当に……お肉の脂が舌の上でとろけて、この未知のソースが完璧な調和を生み出していますわ。信じられません……!」
テレーゼ王妃様もまた、扇子で口元を覆いながら感動のあまり瞳を潤ませていた。
「ふふん、お気に召して何よりですわ。これが私たちの提唱する『美食革命』の第一歩ですのよ」
アイラがドヤ顔で胸を張ると、隣に座っていたジュリアンも極上の腹黒い笑みを浮かべて同意した。
「お分かりいただけたでしょうか、父上。アイラの持つこの食の知識は、国の文化そのものを底上げする力を持っているのです」
国王夫妻は、もはやアイラたちの複雑な時間遡行の事情など半分どうでもよくなったかのように、無言で次々と料理を胃袋へと収めていった。
こうして、王家の中枢を「美味しいご飯」で完全に掌握したことにより、王宮の厨房にはドミニク料理長を中心としたすさまじい改革の嵐が吹き荒れることになった。
そして、この美食革命の恩恵を受けたのは、決して王族や高位の貴族たちだけではなかった。
アルジェント公爵家でもすでに起きていたことなのだが、王宮の他の料理人や見習いたちも、今までの香辛料漬けや砂糖だけの力任せな料理から抜け出し、出汁や素材の味を活かす技術を学んだのだ。
その結果、食材の端材や安価な野菜を使った賄い料理でさえも劇的に美味しくなり、王宮や公爵邸で働く使用人たちの食事環境にまで、凄まじい革命が起こったのである。
「お嬢様。お屋敷の他の使用人たちも、最近の賄い料理の激変ぶりに驚きを隠せないご様子ですわ。以前のような、ただ塩辛いだけのくず肉のスープとは雲泥の差ですからね。みな口を揃えて、アイラお嬢様は食の女神様だと拝んでおりますよ」
侍女のマリーが、かつての世界でも見た光景を懐かしむように、優雅な手つきでアイラにお茶を淹れてくれながらクスクスと笑った。
「ニシシ! 美味しいご飯は世界を平和にするのよ。みんなで美味しいものを食べるのが一番だわ」
アイラが上機嫌でクッキーを齧っていると、ふと一つの物足りなさが頭をもたげた。
「でもねぇ……料理の腕がいくら上がっても、やっぱり手作業の限界ってあるのよね。一定の温度を保ち続けるオーブンとか、自動で生地を混ぜてくれる機械とか……」
アイラは大きくため息をつき、ポツリと呟いた。
「この時間軸でも、クラエス王国にいるミーアをうちの国に迎え入れたいわねぇ」
アイラのその何気ない呟きを聞いた瞬間、サロンの空気がピリッと変わった。
「お姉様! ミーアさんの作る『調理魔道具』ですね! あれがあれば、もっとたくさん美味しいお菓子が作れますわ!」
リリアが天使のような笑顔で身を乗り出してきた。
「調理魔道具……。なるほど、アイラの知恵とそれを形にする専用の技術者が揃えば、我が国の食文化はさらに飛躍的な進化を遂げるというわけだね」
ジュリアンが翠緑の瞳をギラリと輝かせ、計算高い為政者の顔になる。
「ええ、兄上。リリア嬢が美味しいスイーツをいつでも手軽に楽しめるようになるのなら、その魔道具開発には我が騎士団の予算を回しても惜しくはありません」
エドワード殿下も、生真面目な顔でとんでもない職権濫用を口にした。
さらには、ちょうど打ち合わせのためにサロンを訪れていたアルジェント家料理長のガストンと、王宮料理長のドミニクまでもが、扉の向こうでギラギラと目を血走らせていた。
「ほ、本当ですか、アイラ師匠! その調理魔道具とやらがあれば、究極の温度管理が可能になるというのですな!」
「ぜひとも! ぜひともそのミーア殿という技師を我が国へ! 料理人たちの悲願でございますぞ!」
料理の変態と化したおじさん二人からの熱烈なプレッシャーに、アイラは思わず引きつった笑いを浮かべた。
「まあまあ、落ち着きなさいな。とはいえ、彼女はクラエス王国の平民だから、いきなり引き抜くにはクラエス王国の許可が……」
アイラがジュリアンの方を見てそう言いかけた、まさにその時だった。
パリンッ!
突如として、サロンの何もない空が、見えない巨大なハンマーで叩き割られたかのように甲高い音を立てて砕け散った。
無数の空間の破片がキラキラと舞い散る中、異次元へと繋がる光の裂け目がぱっくりと口を開けた。
「あらあら、ずいぶんと楽しそうな話をしているじゃないの。ちょうど手続きが終わったところだったのよ。あなたの声も聞こえたしね」
光の渦の中から、艶やかな銀髪を揺らし、青玉のような瞳を光らせて、妖艶な微笑みを浮かべた絶世の美女が姿を現した。
アイラたちの遠い祖先にあたる、神話の時代の魔女、エレノワールである。
「エレノワールお姉様! どうして急にこっちへ?」
アイラが驚いて立ち上がると、エレノワールはその後ろから、一人の少女の手を引いてサロンの中へと足を踏み入れた。
薄紅色の髪を持ち、少しだけオドオドしながらも、アメジストの瞳に強い知的好奇心を宿した少女。
「アイラ、この方は……? そちらの少女がミーア嬢だというのは分かったが、どこから現れたのか見当もつかない」
ジュリアンが、警戒と好奇心を入り交じらせた翠緑の瞳でエレノワールを見つめた。
「ああ、紹介するわ。彼女は五千年前から生きている神話の魔女、エレノワールお姉様。私たちの遠い先祖であり、魔法の師匠でもあるのよ」
アイラがドヤ顔で紹介すると、エレノワールは優雅に微笑み、ウィンクを飛ばした。
「初めまして、未来の王太子殿下たち。可愛い子孫たちがお世話になっているわね」
「み、ミーア!?」
「あ、あの……初めまして、アイラ様。ミーアと申します」
間違いなく、この時間軸のクラエス王国にいるはずのミーア本人が、そこに立っていたのだ。
「ちょっとお姉様、どういうこと!? いくらなんでも、他国から勝手に人間を拉致してきちゃマズいわよ!」
アイラが慌ててツッコミを入れると、エレノワールはクスクスと楽しそうに笑い声を上げた。
「人聞きの悪いことを言わないでちょうだい。拉致なんかじゃないわ。この子はね、すでに魔女世界でのスカウトが済んで、今はヴァリエール王国に住んでいるのよ」
「スカウトが済んでるって……誰に?」
「もちろん、私の可愛い使い魔である『ミスティ』の計らいよ」
エレノワールの言葉に、アイラはハッと息を呑んだ。
ミスティとは、元の世界線で天寿を全うし、魔女世界でエレノワールに魂を譲渡されて魔女世界に自身の工房を持つに至った、未来の大人のミーアのことだ。
「ミスティがね、自分が若い頃に苦労した経験を省みて、『過去の自分をさっさと安全な環境に保護して、調理魔道具の開発に専念させたい』って言い出したのよ」
エレノワールは、事も無げに恐ろしいタイムパラドックス的な干渉を口にした。
「だから、クラエス王国でご両親ごとこっそり引き抜いて、ヴァリエール王国の安全な領地に住む手配を済ませておいたわ。まずは調理魔道具の基礎からということで、地上のアイラたちに預けることにしたのよ」
「ええええっ!?」
あまりにも強引で、それでいて完璧すぎる魔女ネットワークの力に、ジュリアンやエドワード殿下も開いた口が塞がらない様子だった。
「あ、あの……未来の私という方から、アイラ様の下でなら最高の魔道具が作れると伺いました。どうか、私に色々なアイデアを教えていただけないでしょうか!」
ミーアが、緊張しながらも熱意に満ちた声でアイラに向かって深く頭を下げた。
「……ニシシ! もちろんよ、大歓迎だわ! よく来てくれたわね、ミーア!」
アイラは満面の笑みを浮かべ、ミーアの手をガシッと握りしめた。
「さあ、ガストン、ドミニク! 私たちの最高専属技師が到着したわよ! これから王国の厨房を根底からひっくり返すわよ!」
「「おおおおおっ!」」
料理長たちの野太い歓声が、サロンに響き渡った。
これは、この時間軸のヴァリエール王国で始まる、調理魔道具の開発とレシピ再現、そして新たな絶品グルメ開発の、華々しくも騒がしい幕開けであった。




