表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/43

第22話 天才の誕生(4)

「おまえ......やっぱり――」


 少女のケモ耳や身なりはアムールの好奇心を強く刺激し、体の外へと引きずり出していった。

 彼の関心に焼かれたのか、少女の頬はみるみる染まっていき、やがて真っ赤な林檎の擬人化のような姿へと変わってしまった。


「わ、わ、私――」

「恥ずかしいぃぃぃぃ!」


 少女は部屋全体に広がるほどの大声を上げると、扉を破壊する勢いで部屋から出て行ってしまった。木を叩くような音が遠ざかっていった。青天の霹靂に打たれたような気分になり、動揺を隠すことはできなった。


「な、なんだったんだ。......どうすんだこれ」


 アムールの目の前には薬箱から取り出された包帯と薬品が散乱していた。仕方がなく、傷ついた腕を無理やり動かし、包帯や薬を拾い、自ら巻き直すこととなった。イリスに転ばされた際に折れた骨が繋がっていないためか、関節を曲げるたび激痛が走る。よく見ると、患部は通常の二倍以上に腫れあがっており、まるで丸太ような状態となっていた。


「ひでぇな。暫く治らねぇぞ、これ」


 ぶつくさと文句を言いつつも、包帯を巻いていると、先ほどの足音とは別の落ち着いた音が扉の向こうから響いてくる。


(......面倒くさそうな予感)


 響いてくる足音にどこか嫌悪感を感じ、最大限の警戒をしていると、その予感は的中したかのように、いやな声も響き渡ってきた。


「元気してる~?」


 柔らかく、陽気な中に胡散臭さを隠す作ったような声と共に、白いローブが姿を現す。アムールは反射的に飛び掛かりそうになった身体を諫めつつ、言葉を投げかける。


「......よくねぇよ」

「そりゃ残念」


 にこにことむかつく笑顔をひっさげながら、イリスは一歩一歩間合いに踏み込むかのように、じりじりと近づいて、近くの丸椅子に腰かけた。まるで酒場にいる親父のような、品のない座り方を前に、アムールは思わず顔をしかめた。

 そんなアムールの表情など気にしないかのように、イリスがにやにやした表情を崩さずに口を開き始める。


「にしても、お前も隅に置けないねぇ~。まさかあんなに直接的な告白をするなんて。結構、熱に侵されやすいタイプ?」

「......? 何の話だ?」


 イリスの言っている言葉がわからず、頭の中がぐちゃぐちゃになる。


「とぼけんなよ~」

「.....マジで何言ってんだ、おまえ」


 思わず怪訝な表情になる......いや、元から怪訝な表情であったが、さらに深まったといったほうが正しいだろう。アムールの額に彫刻されたような深い皺を見て、ようやく気付いたのか、イリスの顔から笑顔が消え、同時に当惑した表情へと変化していく。


「......もしかして、何にもわかってない感じ?」

「だから、テメェは一体何の話をしているんだ! いきなり告白だのなんだの聞かされても訳わかるはずがないだろ!?」


 イリスが顔を洗うように擦りだす。かと思えば、前髪をまくり上げたりと、何処か落ち着きがないように、焦りだした。


「......あちゃー。何にもわかってなかったのかー」


 自分の知らぬところで、物事が進んでいくが、絶対碌なことになっていない気がする。出会ってから、へらへらした表情しか見てこなかったイリスの顔が、焦燥に満ちてるのが何よりの証拠であった。


(ここからどうやって抜け出そうかな......)


 目覚めたときにあった敗北感は、春の温かい風と共に窓から抜けていき、心身の億劫さだけが残っていた。 

読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ