第23話-4◆同じ光
俺は片膝をついたまま、顔を上げた。
「勝手に持っていくな」
声は低かった。
掠れていた。
だが、出た。
リリィがこちらを見る。
「グロー……」
「死んでない」
「でも」
「まだ、だ」
正確に言えば、かなりまずい。
胸は痛い。腕は重い。斧を振れるかどうかも怪しい。
だが、死んでない。
なら、まだだ。
白い外套の人物が、初めて少しだけ黙った。
「まだ動けるのですか」
「高い」
「何が」
「リリィの力だ」
俺は息を吐いた。喉に血の味が混じる。
それでも、口元だけ歪めた。
「欲しけりゃ、てめぇで旅費を稼ぎな」
リリィが泣いたまま、目を丸くした。
バランが一瞬だけ変な顔をした。
「その言い方で締めるのかい」
「うるさい」
「いや、悪くない。かなり君らしい」
ベルニーが短く言った。
「最悪。でも正しい」
リリィの手の中で、白い羽が動いた。
エイヴァが片目を開けていた。
「言い方は最悪だが、今回は正しいね」
「エイヴァ!」
リリィが泣きながら叫ぶ。
エイヴァは力なく羽を動かした。
「泣くなら、息をしながらだと言っただろう」
「うん、うんっ」
「あと、アタシを握り潰すんじゃないよ。まだ小鳥なんだ」
「うん!」
リリィの白線が揺れる。
怒りの線が、少しだけ形を変えた。
俺は片膝のまま、斧の柄を支えに立とうとする。完全には立てない。だが、前には出られる。
「リリィ」
「うん」
「怒るなとは言わん」
俺は白い外套の人物を見た。
「でも、持っていかれるな」
リリィは涙を拭わなかった。
泣いたまま、頷いた。
「うん」
エイヴァが小さく息を吐く。
「なら、アタシが少し整える。ほんの少しだよ。期待しすぎるな」
「寝てろ」
「君もだろう」
「俺はあとで寝る」
「じゃあアタシもあとで寝る」
「張り合うな」
リリィが、泣きながら少しだけ笑った。
その笑いで、白い線がまた変わる。
リリィから出ていた白線が、ただの怒りではなくなった。
俺の斧の柄へ。
エイヴァのしぼんだ羽へ。
リリィの震える手へ。
細い線が、三つの間をつないだ。
白い外套の人物が、わずかに手を引いた。
初めてだ。
初めて、あいつが測り損ねた顔をした気がした。
白い線は、もうリリィだけのものではなくなった。
斧と、小さな羽と、震える手が、同じ光を握っていた。




