表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れの豚は今日も金が貯まらない  作者: うつチャリンカー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/96

第08話-2◆橋の下の印

 俺たちは小川沿いを下り、ベルニーの言う荷車用の板橋へ向かった。


 板橋は、橋と呼ぶには頼りないものだった。


 湿地に渡した太い丸太の上に、幅広の板を何枚も並べただけ。荷車が一台ずつ通れる幅はあるが、ところどころ板が浮き、端の縄が切れかけている。


 橋の手前には、古い小屋と、眠そうな橋守がいた。


 橋守は俺たちを見て、最初にバランを見た。


 次に俺を見て、顔を引きつらせた。


「通行料だ。荷車じゃなくても取る」


「いくらだ」


「一人、銅貨二枚。大きいのは四枚」


「大きいのとは俺か」


「他にいるか?」


 バランが横で笑いをこらえている。


 俺は睨んだ。


 リリィが心配そうに小声で訊く。


「払えますか」


「払うと飯が減る」


「じゃあ、減らせません」


「その通りだ」


 エイヴァが俺の肩で首をかしげる。


「小鳥一羽分は?」


 橋守が面倒くさそうに手を振った。


「鳥からは取らん」


 リリィが少し前に出た。


「じゃあ、小鳥の分だけ安く」


「リリィ、それは前も違った」


「あ」


 リリィは顔を赤くした。


 橋守は眠そうだった顔を、少しだけ緩めた。


「妙な子だな」


「宿でも言われました」


「言われただろうな」


 俺は橋を見た。


 手前の板が一枚、浮いている。奥の丸太が少し沈んでいる。荷車が乗れば傾く。渡れるが、危ない。白い馬車がここを通ったなら、誰かが直すか補強したはずだ。


「白い馬車は通ったか」


 橋守の目が動いた。


「見てない」


「答えが早い」


「通ってないものは通ってない」


 嘘か、知らないか。


 どちらにせよ、顔に出る。


 バランが明るい声で割り込んだ。


「ぼくたちは急いでるんだ。通してもらえるかな」


「なら金だ」


「もちろん払うよ」


 バランが袋に手を伸ばす。


 俺はその手首をつかんだ。


「待て」


「何だい」


「払うな」


「君、本当に金に細かいな」


「旅費は命だ」


「格好よく言っても、やっぱり金の話じゃないか」


「金の話は大事だ」


 俺は橋守へ顔を向けた。


「橋を直す。通行料を引け」


 橋守が眉を上げた。


「直せるのか」


「今夜までは持つようにできる」


「昨日も聞いたような言い方ですね」


 リリィが小さく言う。


「昨日で学んだ」


「学ぶ場所、そこですか」


 エイヴァがふくらむ。


「まったく。旅をしているのか修理しているのかわからないねえ」


「両方だ」


 橋守は少し考えた。


「直せるなら、おまえら全員通してやる。ただし、壊したら払え」


「壊れてるものを壊したら?」


「払え」


「面倒な橋だな」


 俺は荷を下ろし、橋の端へしゃがんだ。


 丸太の沈み方を見る。縄は古い。湿気を吸って、触ると繊維がほぐれる。板の一部は腐りかけている。全部を直すのは無理だ。だが、荷車一台分を安全に通す程度なら、浮いた板を押さえて、片側に力が逃げるようにすればいい。


 バランが覗き込む。


「手伝おうか」


「板を踏むな」


「まだ踏んでない」


「踏みそうだった」


 ベルニーが言う。


「当たり」


「君たち、少しはぼくを信用してくれ」


「してる。だから動くな」


 バランがひどく不満そうな顔をした。


 リリィが橋の横へ回ろうとする。


「リリィ」


「下には入りません。横から見ます」


「何を」


「板の隙間。向こう側に、何か挟まってます」


 俺は視線を追った。


 橋の真ん中近く。板と板の間に、白いものが挟まっている。包み紙かと思ったが、細い布の端だ。


「取れるか」


「わたしなら、手が入るかも」


「駄目だ」


「まだ言ってません」


「言う顔だった」


 リリィは頬をふくらませた。


「でも、見つけました」


「ああ。助かった」


 そう言うと、リリィは一瞬で黙った。


 ベルニーが少しだけ目を細める。


 バランが妙な顔をする。


「何だ」


「いや、君、そういうことも言うんだね」


「必要なら言う」


「もっと普段から言えばいいのに」


「うるさい」


 エイヴァが楽しげに羽を揺らした。


「褒め言葉ひとつで周りを止めるんだから、大したもんだよ」


「黙れ」


「照れるんじゃないよ」


 俺は予備の紐を出し、浮いた板を一度外した。リリィが見つけた白い布端は、板の下に引っかかっている。手で取るには奥すぎる。俺が斧の柄で引っかけると、濡れた布切れがずるりと出た。


 白い外套の端。


 それも、子供用の細い縫い目がある。


 リリィの息が止まる。


「同じ?」


「里の縫い方とは少し違います。でも、子供の服です。端を引っかけて、破れたんだと思います」


「白い馬車が通った証拠か」


 バランが言う。


 橋守が目をそらした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ