第04話-3◆旧街道へ
その時、別の足音が来た。
バランだった。
息一つ乱さず、なぜか朝日を背にしている。腹立たしい立ち位置だ。後ろにはベルニー。こちらは弓をすでに手にしていた。
「君たち、足跡を残すのは上手いけど、消すのは下手だね」
バランが楽しそうに言う。
ベルニーが足元を見たまま、短く足した。
「それと、白い鳥が目立つ」
エイヴァがリリィの肩で「ぴっ」と鳴いた。
言い返せない鳴き方だった。
「やあ。ずいぶん楽しそうなことをしているね」
「来るなと言った」
「聞いたうえで来たと言った」
バランは倒れた見張り、開いた木戸、走り去る白い馬車を順に見る。
「なるほど。門はいらなかったわけだ」
「まだ出てない」
「じゃあ、出ようか」
「一緒にするな」
ベルニーが短く言った。
「追わないと見失う」
「わかってる」
俺はリリィを見る。
息は上がっている。新しい靴のかかとは少し浮いている。だが、目は馬車の消えた方を向いている。
「走れるか」
「少しだけ」
「少しだけでいい。無理なら言え」
「言います」
エイヴァがリリィの肩へ移った。
「アタシは上から見る。君は足元を見るんだよ」
「うん」
町の方で笛が鳴った。
見つかった。
門番か、役場か、どちらでも同じだ。説明している暇はない。
バランが剣を抜く。
「追跡なら、ぼくが先に行く」
「目立つ」
「それが取り柄でね」
「今は欠点だ」
ベルニーが頷く。
「欠点」
「君たち本当に遠慮がないな!」
俺は馬車の車輪跡を見た。旧街道へ向かっている。だが、正面道ではない。外周の荷抜け道から、低い水路沿いへ折れている。
町の裏側には、門より細い出口があった。
やっぱりな。
「こっちだ」
俺は走り出した。
全力ではない。リリィの足に合わせる。だが、追いつけるぎりぎりの速さ。リリィは二歩遅れてついてくる。新しい靴が土を蹴る。少し大きい。だが、止まらない。
「リリィ、足元だけ見すぎるな」
「うん」
「息を吐け」
「は、い」
「返事は短くていい」
「うん」
エイヴァが上で鳴く。
「ぴっ!」
右。
俺は曲がる。
低い水路の横、古い柵の一部が外れていた。馬車が通った跡。そこから町の外へ出られる。
後ろでバランが笑った。
「本当に門がいらないじゃないか!」
「うるさい」
「これはなかなかいい抜け道だね!」
「観光するな」
ベルニーの矢が飛んだ。
俺の横を抜け、前方の木に刺さる。馬車へ当てたのではない。木から鳥が飛び立ち、道の先で馬が一瞬だけ速度を落とした。
うまい。
「止めるには遠い」
ベルニーが言う。
「でも、曲がった先は見えた」
馬車は旧街道へ出た。
朝焼けが始まっている。空が薄く白み、道の上に細い轍が伸びていく。白い馬車は遠ざかる。今から全力で追っても、リリィがもたない。
俺は足を止めた。




