表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れの豚は今日も金が貯まらない  作者: うつチャリンカー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/96

第03話-3◆遊びじゃないです

 その時、バランが隣へ来た。


「白い馬車が気になるのかい?」


「おまえには関係ない」


「あるかもしれない。ぼくもさっき見た。役場の裏へ入っていく馬車なんて、どう見ても普通じゃないだろう?」


「華やかな見世物は終わったのか」


「君の泥臭いやり方が、思ったより客に刺さったみたいだからね。ぼくとしても、少しは取り返す材料を探さないと」


「正直だな」


「ぼくは嘘が似合わないんだ」


 自分で言うな。


 ベルニーがバランの後ろに立つ。視線は馬車の消えた方だ。


「出発は夜明け前」


 短い一言。


 俺はベルニーを見る。


「なぜわかる」


「裏口の車輪跡。乾き方。今朝入った馬車じゃない。昨日の夜から置いてある。こういう馬車は人目が少ない時に出る」


 リリィが息を飲む。


 エイヴァが小さく言った。


「やるじゃないか、弓の子」


 ベルニーの目が一瞬だけエイヴァへ向いた。


 エイヴァは即座に「ぴっ」と鳴いた。


 遅い。


 ベルニーの目元が少しだけ動いた。笑ったのか、気づいたのか、わからない。わからないが、油断はできない。


 バランは楽しそうに笑った。


「夜明け前か。いいね。いかにも秘密の馬車らしい」


「遊びじゃない」


 リリィが言った。


 声は大きくない。だが、まっすぐだった。


 バランが少しだけ目を丸くする。


 リリィはすぐに自分の声に驚いたように口を閉じた。それでも、目をそらさない。


「遊びじゃ、ないです」


 言い直した。


 俺はリリィの前に少し出る。


 バランは両手を軽く上げた。


「悪かった。からかうつもりはないよ」


「いつもあるだろ」


「半分くらいだ」


「多いな」


 ベルニーが短く言った。


「多い」


「君たち、今日はぼくに厳しいな」


 エイヴァが「ぴっ」と鳴いた。たぶん同意だ。


 司会役が次の名を呼び始めた。値踏み市は続く。誰かが腕力を見せ、誰かが矢を射ち、誰かが笑われる。町は人を測り続ける。


 だが、俺たちの見るものはもう決まっていた。


 白い馬車。


 役場裏。


 夜明け前。


 俺は門番の方へ歩いた。


「再審査はいつだ」


「役場が決める」


「今日中に決めろ」


「おまえ、立場わかってるのか?」


「わかってる。金がない」


「そこかよ」


「そこだ」


 門番は呆れた顔をしたが、役場席へ目をやった。


「少しは下がるかもしれん。だが、町を自由に歩けると思うなよ」


「思ってない。夜明け前に外へ出る馬車を見るだけだ」


「今の話を聞かなかったことにしたいんだが」


「聞け」


「嫌だよ!」


 門番は頭をかいた。


 リリィが俺の外套の端をそっとつかんだ。


「グローさん」


「ああ」


「夜明け前まで、どうしますか」


「飯を探す。水を詰める。寝られる時に寝る」


「追いかける準備?」


「見る準備だ」


「追わないんですか」


「見てから決める」


 リリィは少し不満そうにした。けれど、すぐにうなずいた。


「勝手に走らない」


「そうだ」


「次は言う」


「ああ」


 エイヴァが肩の上で丸くなる。


「成長したねえ。二人とも」


「俺もか」


「君は、子供に言い聞かせる言葉が少しだけ石ころから丸石になった」


「投げたら痛いのは同じだな」


「そういうところだよ」


 バランが横から口を挟む。


「夜明け前なら、ぼくも行くよ」


「来るな」


「残念。行く」


「聞け」


「ぼくは聞いたうえで行く」


 ベルニーがため息をついた。


「止めても無駄」


「そっちで縛れ」


「ほどく」


「面倒なやつだな」


「それは君もだろう?」


 バランが笑う。


 俺は言い返すのをやめた。ここで時間を使っても飯は増えない。白い馬車も止まらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ