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トラストル  作者: シンキ
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7/9

ディマクラ

 ギュヌカと別れてから数分、自分は暗闇の中を歩いていた。その暗闇はどことなくのっぺりとしており、何かを包み隠すカーテンのように見える。

 歩いていると次第に暗闇が薄れ、辺りが見えてきた。そこは何かの通路のようだった。床や壁、天井にいたるまでびっしりと金属の板が敷き詰められているが、その隙間から赤い何かが見え隠れしている。歩くたびに地面から赤黒い液体がじゅんわりと染み出し、足には何か脈動のようなものが伝わる。今更これに驚いていても仕方がないので、無言で歩き続ける。

 しばらく歩いていると、何かが天井からぶら下がっているのが見えた。それは、コードと血管が複雑に絡み合った縄のようなもので繋がれたテレビのようで、チカチカとついたり消えたりしている画面には何かが書かれている。

「イ可か:おsGしで_カ?、」

 字が崩れていて読みづらいが、どうやら何を探しているのかを聞いているようだ。

「えっと、この場所に人はいるか?」

 5秒ほど経った後、画面には新しい文字が映される。

「いmA千」

「いないのか…じゃあ、人じゃないものはいるか?」

「射る。タ日mぇ でい Dy ディ ディ」

 画面は煙を上げながら必死で何かを映そうとしたが、画面が割れ、もう何も映らなくなった。

 真っ暗の画面には自分の顔が映っている。いつもの特徴のない顔のその後ろには、何かが立っているのが見えた。

「……?」

 振り向くと、そこには自分よりずっと大きいロボットのようなものが立っていた。一昔前の人間が考えたような古臭いロボットのような見た目をしているが、体のところどころが人間のように脈打っている。隙間からは赤いオイルが漏れており、風が吹けば壊れてしまいそうだ。

「のな?kン$。?」

 何か喋ろうとしているのはわかるが、ゴボゴボと詰まったような音を出すだけで何を言おうとしているのか全くわからない。

「始、機構tOまか?。」

 こちらが発言を理解していないことがわかると、ロボットはぎしぎし音を鳴らしながら身振り手振りで説明を試み始めた。まるで、子供がおもちゃで遊んでいるような動きをしている。

 ロボットは依然として手を振り足を振っているが、次第に部品が剥がれ落ち中身の肉が見え始めていた。さすがに哀れに思えてきたので、話しかけることにした。

「ここはどういった場所なんだ?」

 ロボットは驚いてこちらを見つめた後、また体を動かして喋り始めたが、相変わらず何をいっているのかわからない。その上、顔のパーツが剥がれ、中から目玉を7つほど覗かせた。

「あー…道案内を頼めるか?」

「オlowい誤用!。、」

 ロボットは任せろと言わんばかりに胸を叩いたが、そのせいで胸の金属板が割れ落ち、中の脈打つ内臓が露出してしまった。ロボットは落ちた金属板を適当に胸にくっつけ、歩き始めた。

 ガチョン、ゴチョンと不規則な足跡を立てながら歩くロボットの後ろをついていく。老人より少し早いくらいの速度で歩いているため少しもどかしく感じる。もう少し早く歩いてほしいが、急かすと本格的に壊れそうだから何も言わないでおいた。

 お互い無言のまま歩いていると、通路の様子がだんだんと変化していった。肉を押さえ込むかのように貼り付いていた金属板がところどころ剥がれているのが見える。露出した肉はどくどくうねうねと脈打っている。

「あぁこ、コd@ゆ^無ァ」

 ロボットはゴボゴボと喋りながら壁の金属板を掴み、引っ張り始めた。肉に貼り付いていた金属板はブチブチと音を鳴らしながら剥がれ、肉を露出させた。その肉には人1人が倒れそうなほどの穴が空いている。ロボットは金属板が剥がれた拍子に後ろに倒れ込み、動かなくなった。隙間から見えた目は少しだけギョロギョロと動いた後、虚空を見つめ始めた。

「ありがとう」

 少し義務的な感謝を述べ、穴の中を覗く。穴はどくどくと脈打ち、暗闇を咥えている。

「行くしかないのか…」

 意を決して穴の中に入る。穴はほんのりと温かく、赤い液体で湿っている。自分を包み込もうとする肉を押し上げ、無理矢理突き進む。鉄とガソリンの混ざった匂いが鼻につき、吐きそうになる。穴いっぱいに騒音が広がる。削る音、切る音、叩く音、砕く音、様々な雑音が耳に齧り付き、気が狂いそうになる。無我夢中に一心不乱に穴を掻き分ける。

 半狂乱で突き出した右手が空を切った時、自分の体は地面に投げ出された。

「…っぐ!」

 ズキズキと痛む頭を抑えながら立ち上がる。その場所はさっきとは打って変わって肉に覆われており、あちこちに釘やネジ、ドライバーが刺さっていた。

「うっ!」

 両手に鋭い痛みが走る。手を見ると、釘がいくつか刺さっていた。どうやら穴の中を進んでいるときに幾つか刺さっていたみたいだ。抜こうとしてみるが、どれだけ力を入れても抜けない。押しても引いても回してもピクリとも動かない。それどころか血すらも出てこない。仕方がないので先へ進むことにした。

 少し歩くとすぐに壁に突き当たった。その壁は他の壁とは違い念入りに金属板が貼り付けられている。

「やけに厳重だな」

 床に刺さっているドライバーを引き抜き、金属板の隙間に突き立てる。1枚、2枚、3枚と引き剥がす。引き剥がすたびに液体が飛び散り焦げ臭い匂いが漂う。自分の汗と液体が混ざり合う頃、隠された壁が露わになった。

 その壁は、金属と人のパーツがぐちゃぐちゃに混ざり合って埋め込まれていた。埋め込まれた目玉がこちらを見つめると、引き裂かれた口から声が漏れる。

「た…て…け…す…た…す…て……け…す」

 思わず壁から距離を取る。

「こいつは…」

「そいつはディマクラ、技術の神だ」

 後ろから声をかけられる。振り向くとそこには暗い表情をした青年が立っていた。

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