表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/288

【213 第一次西部攻略戦(九) ~四人の少女~】


【213 第一次西部攻略戦(九) ~四人の少女~】



〔本編〕

「ツヴァンソの方は、それほどの被害は出ていないようだな!」ヌイが続いて、左翼軍のツヴァンソに声をかけた。

「はい! こちらは百程度の被害で済みました。相手方も同数の被害と思われます。ただこちらの敵はまだ本腰ではない印象を受けます!」

「カナリーノ! 敵右翼の将は誰だ!」

「はい、ヌイ様! ツヴァンソ様と相対している敵将は、ソヴァジヌ将軍。一指揮官ではありますが、軍師並みの戦略眼を持つ智将。異名はそのまま“頭脳のソヴァジヌ”であります。ツヴァンソ様のおっしゃるとおり、まだソヴァジヌは本腰では戦っていないかと……。それでもツヴァンソ様の強軍に対し、同数の百の被害で済んでいるのは、ソヴァジヌ将軍の守りの陣形によるものでは。おそらく明日以降、本格的な攻めに転ずるかと思われます」

「そうか、ツヴァンソ! カナリーノと共に戦術を練り、それに対処するよう……。失った百に、九百増員の計千を補充する!」

「「ハッ!」」ツヴァンソとカナリーノは同時にヌイに返答した。


 さてプリソースカからすれば、ツヴァンソが失った百のみならず追加で兵を九百得たことのこれなども、ヌイの期待がツヴァンソに強いことのあかしであり、面白くないのであった。

「カナリーノ! 中央の敵将も既に調べがついているのであろう」

「はい、ヌイ様! 本日、ヌイ様が相対した敵将はビルニーク将軍。別名“守備のビルニーク”と呼ばれております。そして、今回はビルニーク軍の後ろに控え、直接戦いに加わらなかった軍の将は、フィール将軍。彼は“万能のフィール”と呼ばれ、バロン十将の筆頭であるレオパルドゥスに次いで、第二将の実力者。レオパルドゥス将軍がイーゲル・ファンタムの留守でここにいない以上、今回のこの戦場におけるバロン十将の実質的なまとめ役といえるでありましょう」

「そうか、“守備”と“万能”か! これは、中央もそうやすやすと突破できなさそうだな」ヌイのこの発言に、そこにいる皆が一様に驚く。

 傲岸不遜なほどふてぶてしいヌイが、そんな弱音を吐くとは……。

 しかしこの初日、ヌイの中央軍はヌイ軍本体とシュナーベルの軍を合わせて九千という大軍であった。それに対し、敵のビルニークとフィール二軍は四千。倍以上の兵数を揃えながら、ヌイ中央軍は敵バロン中央軍を粉砕することが出来ず、それどころかビルニーク軍に二百人しか損害が与えられず、後ろに控えているフィール軍は参戦すらさせていない。

 ヌイ中央軍も五十程度しか損害は出ていないが、それは相手がヌイの攻撃を全て受け止めているということのあかしといえる。

 明日は、そのヌイ中央軍から各軍に千ずつ兵を補充させたため、五十の負傷兵を除くとヌイ中央軍は六千弱となる。

 ヌイ軍とバロン軍の初日が終わっての兵の数は、初日のヌイ軍一万八千とバロン軍一万二千から、ヌイ軍一万五千八百五十とバロン軍一万一千六百――敵左翼二軍での損害は百であったため……。

 まだ、兵の数からいえばヌイ軍の方が多いが、この初日でその差が六千から四千超までへと縮まってしまったのであった。


「ツヴァンソ様! この後、明日のことについて打ち合わせをしたいと思っておりますが、いかがでしょうか?」

 ルーラの義妹カナリーノが、全体軍議後、ツヴァンソに声をかける。

「こちらこそ、お願いしたいと思ってました。是非、我が陣営にお越しいただきたい」ツヴァンソは、カナリーノを自軍へいざなった。

 カナリーノがツヴァンソの私室に入ると、そこには二人の少女が既に控えていた。

「カナリーノ様! こちらがカリマ、我が軍の軍師であります」

「カリマ様! ご評判は伺っております。お目にかかれて光栄であります」カナリーノがカリマに挨拶をする。

「こちらこそ、カナリーノ様は今年二十五と伺っております。それであれば、私と同年齢です」カリマがニッコリと笑い、挨拶を返す。

 カナリーノはカリマと挨拶を交わした後、もう一人そこにいる女兵士に目を向ける。その女兵士は、ツヴァンソと顔立ちや姿が非常に似通っていた。

 近くで見る限り、瓜二つとはまでは言えないまでも、少なくとも兜をつけ、戦場で相対する敵として見た場合、ツヴァンソと区別をつけられる者が果たしてどれだけいるかというぐらい、見た目や背格好はよく似ていた。

「彼女はマカーコといいます。八年前のドクサ地方攻略の際に私の中隊に加入した者です。カリマの推薦で、私の影武者的な存在として我が軍に引き抜きました」

 ツヴァンソのこの紹介で、マカーコとカナリーノは挨拶を交わす。

「マカーコ様はツヴァンソ様と姿かたちは良く似ておられますが、実力の程は……?」

「カナリーノ様。マカーコはマデギリーク軍の一兵士として鍛え上げられた者でありますので、お墨付きは得られるぐらいかと……。この八年間でツヴァンソ様の所作や動きを彼女はとことん研究し、そして繰り返し練習いたしておりましたので、私でもツヴァンソ様かと見間違うほど良く似ております。マカーコとツヴァンソ様を良く知っている私がそうなのですから、昨日、初めて戦場でツヴァンソ様を見た敵が、マカーコを偽者と看過かんかするのはほぼ不可能でありましょう!」カリマのこの答えにカナリーノは満足そうに頷き、言葉を紡いだ。

「さすがカリマ様。全てを見透かした上での、この集まり! それでは、私も胸の内を晒しましょう。私と言うより、義姉ルーラの考えではありますが……」

 こうして四人の若き美女だけによる軍議は、深更にまで及んだ。


 二日目の戦いが午前八時から始まった。

 聖王国側のヌイ中央軍が、ミケルクスド國側のバロン中央軍先陣のビルニーク軍に攻撃を仕掛ける。しかし昨日同様、守備のビルニーク軍は容易く抜くことは出来ない。

 中央軍の戦いと時同じくして、バロン軍の左翼――“狂将”シールと“暴れ熊”オルソの率いる二軍が、ヌイ軍の右翼――プリソースカとメェーフの率いる二軍に攻めかかる。昨日と異なるのは、ヌイ軍の右翼が防御に徹していることであるが、それでもシール、オルソの二軍は、ヌイ軍の右翼を一方的に削っている。

 そのような中にあって、戦闘開始から三十分ほど時が経過したにも関わらず、ヌイ軍左翼のツヴァンソ軍と、バロン軍右翼のソヴァジヌ軍はまだ対峙したままであった。

 昨日はお互い譲らず、各々百程度の損害のみを出すという互角の戦いを展開した両軍であった。




〔参考一 用語集〕

(人名)

 オルソ(バロン十将の一人。“暴れ熊”の異名を持つ猛将)

 カナリーノ(ルーラの義妹)

 カリマ(ツヴァンソ隊の一員)

 シール(バロン十将の一人。“狂将”の異名を持つ老将)

 シュナーベル(ヌイ軍の司令官)

 ソヴァジヌ(バロン十将の一人。“頭脳のソヴァジヌ”の異名を持つ)

 ツヴァンソ(マデギリークの養女。クーロの妹。中官)

 ヌイ(クーロ、ツヴァンソと同世代の指揮官。将軍)

 バロン(ミケルクスド國三将軍の一人)

 ビルニーク(バロン十将の一人。“守備のビルニーク”の異名を持つ)

 フィール(バロン十将の一人。“万能のフィール”の異名を持つ)

 プリソースカ(ヌイ軍の司令官)

 マカーコ(ツヴァンソ隊の一員)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。大将軍)

 メェーフ(ヌイ軍の司令官)

 レオパルドゥス(バロン十将の一人)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)


(地名)

 イーゲル・ファンタム(ミケルクスド國の首都であり王城)


〔参考二 大陸全図〕

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ