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【201 新生聖王国の戦略指針】


【201 新生聖王国の戦略指針】



〔本編〕

 龍王暦二一〇年一月七日、七日間にわたるブーリフォン聖王戴冠式の最終日である。この日、ブーリフォン聖王の名の下でいくつかの特例措置が発表された。

 特赦など、罪人の罪を軽減したり許したりするのもその一例であったが、同様に特別な昇格措置なども実施された。

 それは軍部においても例外でなく、何人かがその特別昇格の恩恵に預かった。

 一人がマデギリーク将軍であり、マデギリークは既にソルトルムンク聖王国筆頭の将軍ではあったが、この日の特別昇格により、聖王国唯一の大将軍となった。

 この大将軍という位は、聖王国において常にある位ではなかったが、今回、マデギリークをその位に就けたということは、これからブーリフォン聖王が富国強兵並びに領土拡大を積極的に行っていくという、明確な意思の表れといえるであろう。

 他国のこの大将軍と同等の位としては、ミケルクスド國の三将軍やバルナート帝國における四神兵団の軍団長などがそれに当たる。その國の軍部の象徴ともいえる位置づけの位であった。

 また同様に特別昇格の恩恵を受けたのはヌイであり、ヌイは大官からついに将軍へと昇格した。二十七歳という異例の若さであった。

 そしてクーロも、今回の特別昇格に該当した。クーロは中官から大官へと昇格を果たしたのであった。これにより、クーロはルーラと同格となったのであった。


 さすがに龍王暦二〇五年に、ルーラと約束した五年後の将軍までには至らなかったが、それでも五年で将軍の一歩手前の大官、別名五千人将になったのである。

 確かに将軍の次席は副官であるが、副官というのは将軍を補佐する将ということになるので、明確に何人を率いる集団の長という位ではない。

 場合によっては少数の千人を率いることもあるし、大きな作戦であれば、将軍に許された一万規模の軍を率いることもあり得る。

 実際にヌイも、今回大官から将軍に昇格しているので、副官を経由しない昇格も大いにあり得るので、そういう意味では大官は、将軍の一歩手前といえる位であった。



 龍王暦二一〇年二月。聖王戴冠からわずかひと月後、ブーリフォン聖王は早速、他国における今後の戦略指針を明確にした。

 その指針は大きくわけて二つあり、一つが西部戦線におけるもの、そしてもう一つが東部戦線におけるものであった。

 西部戦線が、聖王国唯一の同盟国であるジュリス王国と共同で当たる対ミケルクスド國戦略、並びに対フルーメス王国戦略。そして東部戦線が、カルガス國、クルックス王国、ゴンク帝國の三國に対する戦略であった。

 この二つの戦略指針のいずれにも当てはまらない北の強国バルナート帝國については、不戦の関係を維持していくというものであり、これが厳密にいう北部戦略ということになり、戦略指針としては三つということになるが、あくまでも他国を攻め、自国の強化を目指すという意味合いからいけば、やはり戦略指針としては西部と東部の二つと言えるであろう。

 このうちの西部戦線についての第一段階といえる戦略方針が、ミケルクスド國からの、さらなる海岸線沿いの領土の奪取であった。

 海岸線沿いの領土の奪取ということに関しては、龍王暦二〇三年から二〇九年の足掛け七年のバラグリンドル地方攻略もそれに含まれるが、あくまでもバラグリンドル地方攻略は西部戦線の戦略指針における序盤のきっかけに過ぎず、この奪取したバラグリンドル地方の海岸線を確実な聖王国の領土とするため、さらなるミケルクスド國領への侵略と、それに伴う海岸線の確保が必須であった。

 バラグリンドル地方だけでは、聖王国の海岸線確保の方針としては非常に心許なく、実際にデルニエ王の軍事クーデターという内戦のどさくさに、バラグリンドル城跡地が一度ミケルクスド國に奪取されてしまったぐらいであったからである。

 幸いにも、ブーリフォン聖王子がデルニエ王を短期間で王都から潰走させ、結果聖王国の内戦が驚異的な速さで終結したため、ミケルクスド國兵はバラグリンドル城跡地の占拠をわずか三日で諦め、大事には至らなかった。

 仮にこの内戦が長引いていたとすれば、せっかく七年越しで奪ったバラグリンドル地方が、最悪そのままミケルクスド國に完全に再奪取されていたかもしれなかったのであった。



 さて、少し日を遡ること龍王暦二一〇年一月二五日。ソルトルムンク聖王国の外交官カヴァーロは、ヴェルト大陸最北の王都――バルナート帝國のそれであるので正式には帝都となるが――、ドメルス・ラグーンの地に到着する。

 凍てついた大地にふさわしいその帝都の灰色の城壁は、二〇メートルを超える高さがあり、その地に足を踏み入れる者を無言の圧力で拒んでいるように見受けられた。

 ソルトルムンク聖王国の王都マルシャース・グールのような華やかさや解放感とは無縁のこの帝都は、敵の侵入を拒む城という性格を多分に含んでおり、まさに北の強国バルナート帝國の精強さをそのまま具現化したような城であった。

 むろん外交官として帝國側にあらかじめ折衝を申し入れ、この場を訪れたカヴァーロであるので、帝都に阻まれることはなく城門はくぐったが、凍てつく空気と重々しい雰囲気が、この優秀な外交官である彼をして、敵の懐に飲み込まれたような、何とも言えない憂鬱ゆううつな気持ちにさせられてしまったのであった。

 しかし、この気持ちは正直なところ何の思い違いでもなく、敵地における外交交渉であるため、うまく事が運ばなければ、カヴァーロはこの地で果てる運命であることを示している。

 彼を救いうるのは、自身の舌先のみ。そういう意味からすれば、外交官の彼の気概も、敵陣に単騎で切り込む猛将の気概と何ら変わるものではなかった。




〔参考 用語集〕

(人名)

 カヴァーロ(ソルトルムンク聖王国の外交官)

 クーロ(マデギリークの養子。大官)

 デルニエ王(父王を殺害した聖王子。殺害後、王を僭称する)

 ヌイ(クーロ、ツヴァンソと同世代の指揮官。将軍)

 ブーリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国第六代聖王)

 マデギリーク(クーロとツヴァンソの養父。大将軍)

 ルーラ(クーロ、ツヴァンソと同世代の指揮官。大官)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 バルナート帝國(ヴェルト八國の一つ。北の強国)

 カルガス國(ヴェルト八國の一つ。北の強国)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 クルックス王国(ヴェルト八國の一つ。東の国)

 ゴンク帝國(ヴェルト八國の一つ。東の国)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国)


(地名)

 ドメルス・ラグーン(バルナート帝國の帝都であり王城)

 バラグリンドル地方(ソルトルムンク聖王国の一地方。元ミケルクスド國領)

 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)


(その他)

 三将軍(ミケルクスド國で最も優れた三人の大将軍のこと)

 四神兵団(バルナート帝國の最強四軍団)

 大官(指揮官の位の一つである官の第一位。五千人規模を指揮する。中官より上位。別名五千人将)

 大将軍(将軍位の上位。國の象徴的存在)

 中官(指揮官の位の一つである官の第二位。三千人規模を指揮する。小官より上位。別名三千人将)

 副官(将軍位の次席)

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