表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/288

【200 龍王会議(後)】


【200 龍王会議(後)】



〔本編〕

「そうだ、難陀ナンダ! お前の守護國ジュリス王国は、ソルトルムンク聖王国と同盟を結んでいたのであった! ジュリス王国は、いずれ聖王国の尻馬に乗り、他の六國を攻め滅ぼすつもりなのだな!」

「何を言う! それこそ、龍王暦一八〇年にお前のミケルクスド國の口車に乗り、聖王国を攻めた俺のジュリス王国であったが、結局はミケルクスド國に騙され、聖王国が海岸線を失うのと同様にジュリス王国も海岸線を失った! その当時、滅亡の憂き目に一番近かったのが小国である俺のジュリス王国だった! 俺はそのことについて、お前とミケルクスド國にその時、何ら干渉しなかったぞ!」

 ナンダの徳叉迦トクシャカに対する怒りはもっともであった。


「そのような昔の話を持ち出しやがって!」

「そうかな。たかだか三十年ぐらい昔の話、我ら神々にとっては、つい最近のことだと思われるが……。いずれにせよ、お前の守護する國が分断されたぐらいで俺たちを召集し、さらにはお前にとっての敵国に対し、一方的に神の鉄槌を下そうという考えには、俺は賛同できないと言っているのだ!!」

 ジュリス王国の守護神、第一龍王のナンダはトクシャカにそう言い放った。

「まあよい、たかだか最下層の龍王一人の賛同が得られないからといって、俺の提案が受け入れられない道理はない。 そうだよな、摩那斯マナシ!」

「いや、八大龍王の決定は全会一致と決まっている。トクシャカ、お前にはナンダを説得する義務がある」

「マナシ! そこは多少の例外は認められるのではないのか?」

「トクシャカ! お前のその言は“道理”ではなく、その全く真逆の“無理”だ! 無理を我意で押し通そうとするのは、ヴェルト大陸の統治を願う神のやり方ではないな」ナンダの言の葉。

「うるさい! いつまでもお前一人の反対に時間を割くのが勿体ない!!」トクシャカが自身の剣に手をかける。

 それに対し、ナンダも得物の紅い長槍を構えた。

「双方! 会議の場で得物にものを言わせるのは重大な違反行為である! 違反した者は誰であり、粛清の対象になる!!」マナシがトクシャカ、ナンダに双方にそう申し渡した。

 トクシャカは剣のつかに手をかけたまま、ナンダも槍を構えたまま、それ以上はお互い動かず睨み合いが続いた。

「ナンダ! いい加減に折れろ!」

「いや! 全会一致が原則である以上、トクシャカ! お前がナンダを説得させるのが必須だ! ナンダが納得しない以上、お前の今回の提案は受け入れられない!」

 この言の葉は、ナンダでも、司会進行しているマナシのどちらでも無かった。

「何だと! 跋難陀バツナンダ! お前まで……」

 トクシャカの言の葉から、その発言をしたのは、蒼い鎧の第二龍王バツナンダであることが分かる。

「……しかし、バツナンダよ。ここにいる龍王のうちナンダだけが反対しているので、確かに全会一致ではないかもしれないが、一人だけであれば例外があっても良いと俺は思うのだ。それも第一龍王という最下層なの……」

「それ以上、最下層などと発言するなよ!」バツナンダは、トクシャカの意見を皆まで言わさず、またトクシャカやナンダのように叫ぶことなく、厳かではあるが、場の空気を凍り付かせるほど緊迫する言の葉でそれを封じた。

 トクシャカもさすがにハッとし、今の大いなる失言であったと悟る。

 最下層の第一龍王でないにしても、その次の第二龍王であるバツナンダの言の葉だったからである。

「八大龍王は同格だ! 数字が小さい龍王だからといって、それは下層でも下級でもない!」

「すまなかった、バツナンダ! そのようなつもりで言ったわけではない! 許せ!!」

「それは私への謝罪ではなく、ナンダに向けてであろう。 ……まあ、それは良い。それは別に全会一致の原則以前に、ナンダ一人だけが賛同していないわけではない! あえて欠席の形にされた第八龍王ウバツラの意見も聞いていないし……」

「それは、ナンダを除く六龍王の賛意であれば、ウバツラも賛同せざるを得ないので……」

「まだ、話の途中だ! トクシャカ!」

 バツナンダが、話の途中で言の葉を被せてきたトクシャカに、はっきりとした口調で言い放つ。

「……ウバツラの意見も聞いていないし、そもそもここにいる者でナンダ一人だけが反対しているわけではない! トクシャカ! お前のこの提案には私も賛同しかねる!!」


「何! 何故なにゆえ?」そこまで言ったトクシャカが、あることに気付く。

「そうだ! バツナンダ! お前の守護國であるフルーメス王国も、今回の戦いでは、俺の國を攻めていた! そうか! そう言うことか!!」

「お前の國を我がフルーメス王国が攻めるのは、別に我ら八大龍王の取り決めに対して何ら違反ではない! それにナンダの守護國ジュリス王国と同様、我がフルーメス王国も、その当時お前のミケルクスド國に煮え湯を飲まされたのは事実だ! まあ、昔の話を蒸し返すわけではないが、そもそも過去のそういった確執が、今回のミケルクスド國南北分断の結果を招いたのではないのか?! それこそ、お前の國の自業自得だぞ!」

 バツナンダの辛辣ではあるが、道理ののっとった正論は、トクシャカの口を完全に封じた。

「さて、全ての龍王の意見を聞いたわけではないが、これでは流石にどれだけ譲歩しても、トクシャカ! お前の提案を受理するわけにはいかないな」

 マナシのこの言の葉で、今回の召集案件について否認された。さすがのトクシャカも、ここから自らの案件を強引に押し通そうとはしなかった。

「……今回は、下々の意見も尊重するということで、俺もこれ以上はこの件については述べない!」

 このトクシャカの言の葉に、ナンダとバツナンダは同時に何かを言いかけようとしたが、それはマナシが制した。

「トクシャカ! 一言わらわから苦言を呈す! 一つが、八大龍王が全員揃わない機会タイミングを狙って物事を押し進めようとした件、こういったことは今後慎むようにせよ! そしてもう一つが、八大龍王は全員が同格という認識を持つように……。今後、別の龍王を蔑むような言の葉を吐くことは許さぬ!」

 マナシのこの言の葉に、トクシャカは黙って頭を下げる。マナシの言の葉に従う意を表明したわけではあるが、その後、ナンダとバツナンダへの謝罪は一切無かった。

「……ただ、マナシ! 最後に一言だけ述べておきたい」しばらくして頭を上げたトクシャカがマナシにそう伺いをたてる。

「最後の発言か、許そう!」

「すまない、マナシ。今回は確かに俺のやり方が性急で強引であったかもしれない。ただソルトルムンク聖王国は、今後着実に国力をつけ、他の七國の脅威となるのは間違いない! 侵攻という事実だけでは、確かに我ら八大龍王がある國にだけ干渉又は鉄槌を下すのは不公平かもしれないが、いずれそのような道理のみでは済まされない事態にソルトルムンク聖王国はなっていくと俺は予想している! その際には、俺の今回提案したような、道理とは言い難い不公平な案件であっても受け入れてもらいたい! その國に対しては理不尽なことかもしれないが、ヴェルト大陸全体のことから考察するに、それは必須であり、それを行使できるのは我ら神だけであると……」

 トクシャカのこの発言に対し、特にマナシは答えなかった。そして、残りの五龍王も同様に何も反応しなかった。

 しかしこのトクシャカの今回の提案が、将来的とんでもない事態を勃発させる。それについては、ここにいる神たちすら、現段階においてはうかがい知ることは出来ない事柄であった。


 さて余談ではあるが、第二龍王バツナンダは女神である。

 今回のこの一件でナンダとバツナンダは急速に接近し、後日二人は結婚する。そのため、この二人以降のナンダ、バツナンダは、この二人の子孫が受け継いでいくことになるのであった。




〔参考 用語集〕

(八大龍王名)

 難陀ナンダ龍王(ジュリス王国の守護神。真紅の鎧の第一龍王)

 跋難陀バツナンダ龍王(フルーメス王国の守護神。蒼い鎧の第二龍王)

 徳叉迦トクシャカ龍王(ミケルクスド國の守護神。漆黒の鎧の第五龍王)

 摩那斯マナシ龍王(バルナート帝國の守護神。銀の鎧の第七龍王)

 優鉢羅ウバツラ龍王(ソルトルムンク聖王国の守護神。金の鎧の第八龍王)


(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 ミケルクスド國(ヴェルト八國の一つ。西の国)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 ジュリス王国(ヴェルト八國の一つ。西の国)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ