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 少しでも気を抜けば、ことだ。


 油断すれば、ことだ。


 その視線だけで、足が竦みそうになる。


 単なる魔族ではない。


 これまで遭遇してきた魔物モンスターとは、違う。


 明らかに、格が違う。


 魔力の総量なのか。


 纏う気配なのか。


 あるいは、そのすべてなのか。


 すっと理屈で説明できる違いではなかった。


 近くにいるだけで、本能が告げてくる。


 勝てる相手ではない、ということをである。


(……く)


 そのような弱気な考えが、頭をよぎる。


 そのたび、俺はその思考を振り払おうとする。


 まだ何も始まってはいない。


 それなのに戦う前から諦めるなど、いかがなものか。


 論外だった。


 論外のはずである。


 それでも、どうにもだった。

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