↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ職『ゴーレム使い』は現代ダンジョンで成り上がる ~ゴーレム工房から始まる世界一のダンジョン企業~  作者: さきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/83

第82話 増員を検討

「まず、地域分布です」


柚木がテーブルへ地図を広げた。


赤い印が首都圏に密集し、その外側にも広がっている。


「都市部が中心なのは想定内です。でも、地方からの問い合わせが全体の三割を超えました。見積もりだけで止まっている案件も含めれば、もう少し増えます」


「三割……」


創は、地方へ伸びた赤い印を目で追った。


「梓。今の生産能力は?」


「月十五体。整備まで含めて、ちゃんと出せる数ならね」


梓は端末を操作し、数値を表示する。


「無理を通せば二十体。でも、その場合は点検の間隔を詰めることになる。私はおすすめしない」


「却下だ」


創は地図から目を離さなかった。


「安全性は削れない」


「だよね」


梓は短く笑った。


「美咲さん、資金は?」


「足りています」


美咲は即答した。


「むしろ、資金だけが先に余り始めています。設備も人員も増やさなければ、受注できる機会を捨て続けることになります」


「要するに?」


「増員です。整備要員、問い合わせ対応要員。それと、いずれは現地対応要員も必要になります」


凛が眉をひそめた。


「現地対応?」


「地方の案件を、すべてここから処理するのは効率が悪いでしょう。納品後の点検や緊急対応もあります。地域ごとの拠点を持つことは、長期的には避けられません」


工房に、機械の駆動音だけが響いた。


拠点。


創にとって、この場所は事業の出発点だった。


ここから先を考えるなら、いつかは工房ひとつでは足りなくなる。


「話を飛ばしすぎだ」


凛が腕を組む。


「拠点なんて、今の人数で回せるわけがない。新人を入れれば、教える側の手も取られる」


「それはそう」


梓もすぐに同意した。


「整備は見よう見まねで任せられない。下手をすれば、怪我じゃ済まないから」


「だから、まずは採用の土台作りです」


美咲は地図を指でなぞった。


「いきなり地方展開はしません。まず整備と窓口の人員を増やして、今の工房に余力を作る。その後で判断します」


「採用、か……」


創は息を吐いた。


今いる仲間は、求人票から集まったわけではない。


必要なときに出会い、それぞれの事情を抱えながら、この場所に残ってくれた。


だが、これからは違う。


事業を続けるために、人を迎える。


「柚木さん。採用基準を考えてもらえますか」


「はい」


柚木は地図ではなく、そこに記された地域名へ目を向けていた。


「技術があることは大前提です。ただ、それだけでは困ります」


「うちの理念を理解できる人、ってことか」


「はい。安全を後回しにしないこと。お客様を数字だけで見ないこと。それから……困っている人を見捨てないことです」


創は小さく頷いた。


「その条件は譲れない」


『マスター』


ノアの声が割り込んだ。


「どうした?」


『求人票の下案であれば、作成できます。必要な職種、経験、勤務条件も整理可能です』


「助かる。頼めるか?」


『承知しました。ただし、採用の最終判断は皆様で行ってください』


「ノアが言うのか?」


『適性は経歴や数値だけでは測定できません。人間は、想定外の場面で本質が出ます』


一拍遅れて、梓が吹き出した。


「妙に詳しいじゃん」


『褒め言葉として記録します』


「褒めてない」


工房に笑いが広がった。


だが、その笑いは長く続かなかった。


「増員は、楽になるためだけにやるんじゃない」


創は皆を見回した。


「入った人に教える時間が要る。慣れるまでは、たぶん今より忙しくなる。失敗もあるかもしれない」


「分かってる」


梓は端末を閉じた。


「でも、このままじゃ私たちが先に潰れる」


凛も頷いた。


「入れるなら、現場で使えるようになるまで私が見る。ただし、危ない真似をする奴は容赦しない」


「そこは頼りにしてます」


「任せろ」


美咲は資料をまとめながら言った。


「急いで人数だけ揃える採用は、後で必ず高くつきます。一人ずつ確認しましょう」


創は、赤い印が散る地図へ手を置いた。


その向こうには、まだ会ったことのない依頼者がいる。


そして、これから出会うかもしれない仲間もいる。


「増員を進めよう」


創の声に迷いはなかった。


「急がない。でも、止まらない。うちのやり方を守れる人を、一人ずつ迎える」


「求人票、今日中にたたき台を出します」


柚木が言った。


「私は新人が入った場合の作業工程を組み直す」


梓が続ける。


「面接の準備は私がやっておく」


凛が椅子から立ち上がった。


そのときだった。


ノアが、控えめな声で告げた。


『マスター。求人を公開する前に、お伝えしたいことがあります』


「何だ?」


『先ほど、地方の問い合わせ一覧に一件、緊急度の高い案件が追加されました』


テーブルの地図に、新しい赤い印が灯った。


創は、その場所へ視線を向けた。

第82話をお読みいただき、ありがとうございます。


仲間が増えるのは嬉しいことですが、人を迎えるというのは、教える時間も責任も一緒に引き受けることでもあります。創たちは「急がない、でも止まらない」という答えを選びました。


その矢先に届いた緊急の問い合わせが、次話の始まりになります。


感想やブックマークなど、お気軽にいただけたら励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。