↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ職『ゴーレム使い』は現代ダンジョンで成り上がる ~ゴーレム工房から始まる世界一のダンジョン企業~  作者: さきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
73/83

第73話 攻略成功

大規模ダンジョンの攻略は、想像以上に過酷だった。


中層を越えてからは、地形そのものが敵だった。


通路が突然狭くなったかと思えば、次の瞬間には広大な空間が現れる。


足場が崩れ、進路が変わる。


それに合わせるように、魔物の種類も強さも変化していった。


「――右から来る!」


凛の声が響く。


直後、暗闇から大型の魔物が飛び出した。


「前衛、受けろ!」


創の指示に合わせ、二体のゴーレムが前へ出る。


巨大な爪が振り下ろされた。


ガァンッ!


激しい衝撃が坑道に響く。


一体のゴーレムが大きく後退した。


「損傷率は?」


『右腕部、二十三パーセント。胴体、軽微な損傷です』


「まだいけるか?」


『問題ありません』


ゴーレムは、再び前へ出た。


だが、その右腕は明らかに動きが鈍い。


「――自己修復、開始」


創が命じる。


すると、損傷した腕の表面に淡い光が走った。


内部を流れる魔力の結び目が、次々と組み直されていく。


「……戻ってる」


凛が、驚いたように呟いた。


数十秒もしないうちに、鈍っていた腕の動きが元へ戻った。


『右腕部、機能回復。戦闘継続可能です』


「よし!」


創は拳を握った。


これまでなら、一度大きな損傷を負えば後退させるしかなかった。


だが、今は違う。


「前衛、そのまま押さえて!」


二体のゴーレムが同時に踏み込む。


その隙を突いて、凛が一気に距離を詰めた。


「――終わりだ!」


一閃。


魔物の巨体が崩れ落ちた。


「……すごいな」


凛が倒れた魔物を見下ろす。


「前なら、この損傷を受けた時点で一体は戦線離脱だった」


「はい」


創も、ゴーレムを見つめた。


「自己修復機構……実戦でも使える」


その言葉に、胸の奥から込み上げてくるものがあった。


以前、何度も失敗を繰り返した。


損傷検知まではできても、修復へ繋がらない。


修復できても、動作が不安定になる。


何度も作り直した。


それでも、今。


その技術が、確かに仲間を支えている。


『マスター』


ノアの声が、静かに響いた。


『開発した技術が、実際の戦闘で機能しています』


「……ああ」


創は小さく笑った。


「やっと、ここまで来たな」


その後も、戦いは続いた。


一体が敵を引きつける。


別の一体が側面へ回る。


損傷した機体は後退し、自己修復を行う。


修復を終えた機体が、再び前線へ戻る。


それをノアが全体で管理し、創が最終的な判断を下す。


以前とは違う。


ゴーレムがただ創の命令に従うだけではない。


それぞれが役割を果たし、互いを補いながら戦っている。


「――これなら、いける」


創は、前方を見据えた。


そのときだった。


『――マスター』


ノアの声が低くなる。


「どうした?」


『先ほどから検知している魔力反応について、再度報告します』


創は足を止めた。


「まだ残ってるのか?」


『はい。先ほどより強くなっています』


凛も足を止める。


「何か来るのか?」


『断定できません』


ノアの返答は、いつになく慎重だった。


『魔物の魔力反応とは異なります。ですが、通常のダンジョン構造から発生する反応とも一致しません』


「――じゃあ、何なんだ」


『現時点では、判断不能です』


創は前方を見る。


薄暗い通路の先。


何かがいるようには見えない。


だが――。


ズン。


地面が、わずかに震えた。


「……今のは?」


ズン……。


今度は、はっきりと分かった。


地面ではない。


壁の奥から、何かが脈打っている。


「――創」


凛が剣を構える。


「進むか?」


創は、数秒だけ考えた。


以前決めた撤退基準。


想定を超える危険があれば、無理をしない。


だが、今の段階では直接的な敵意は確認できていない。


「……進みます」


「本当に?」


「ただし、警戒を最大にします。少しでも異常があれば引き返す」


「分かった」


二人は慎重に進んだ。


しかし、しばらくすると震動は次第に弱くなっていった。


『――魔力反応、収束しています』


「消えた?」


『はい』


創は、眉をひそめた。


「……結局、何だったんだ」


『分かりません』


ノアが珍しく即答した。


『ですが、記録だけは残します』


「頼む」


創はそれ以上考えるのをやめた。


今は、目の前の攻略に集中する。


やがて、一行は深層へ到達した。


そこで待っていたのは、これまで遭遇した魔物とは明らかに格が違う存在だった。


巨体。


異常な魔力密度。


そして、こちらを認識した瞬間に放たれる殺気。


「――あれが、ボスか」


凛が剣を構える。


創もゴーレムたちを前へ出した。


『敵性個体、解析開始』


ノアの声が響く。


『推定戦闘能力――これまで確認した個体を大きく上回ります』


「……全員、気を抜くな」


創は、静かに告げた。


「ここが最後だ」


魔物が咆哮した。


次の瞬間、地面を砕きながら突進してくる。


「――迎え撃て!」


ゴーレムたちが一斉に動いた。


正面から受け止める。


側面から回り込む。


後方から攻撃を加える。


だが――。


「くっ……!」


一体のゴーレムが吹き飛ばされた。


壁に叩きつけられ、胴体に大きな亀裂が走る。


『損傷率、六十二パーセント!』


「自己修復!」


『開始します!』


ゴーレムの身体に魔力が走る。


亀裂が少しずつ塞がっていく。


「――まだ立てる!」


創が叫ぶ。


ゴーレムは、再び立ち上がった。


その光景を見た凛が、口元を上げる。


「……しぶといな」


「それが今回の新機能です」


「なら――使い切るぞ!」


凛が一気に踏み込んだ。


ゴーレムたちがボスの動きを封じる。


一体が攻撃を受け止める。


別の一体が足を狙う。


そして、三体目が死角へ回り込む。


ノアが全体の動きを調整し、創が状況を見ながら指示を飛ばしていく。


「右、今!」


「――了解!」


凛の剣が走った。


だが、浅い。


「まだだ!」


ボスが咆哮し、巨大な腕を振り下ろす。


「――散開!」


ゴーレムたちが一斉に離れる。


直後、地面が大きく砕けた。


「凛さん、左!」


「分かってる!」


凛が踏み込む。


その瞬間、ボスの動きがわずかに止まった。


『――今です、マスター』


ノアの声が響く。


「全機、拘束!」


ゴーレムたちが一斉に飛びかかった。


腕を押さえる。


脚を固定する。


身体を支える。


ほんの数秒。


それだけで十分だった。


「――ここだ!」


凛が跳んだ。


全身の力を込めた一撃が、魔物の急所を正確に捉える。


ズンッ――!


巨体が、ゆっくりと揺れた。


そして。


ドォン……。


地響きを立てながら、倒れた。


「……」


静寂。


誰も動かなかった。


『――敵性反応、消失』


ノアの声が響く。


『ボス個体、討伐確認』


創は、ゆっくりと息を吐いた。


「……終わった」


凛が剣を下ろす。


「――ああ」


創は、周囲を見渡した。


傷ついたゴーレム。


それでも立っているゴーレム。


そして、その中心に立つ凛。


「……勝ったな」


『はい、マスター』


ノアの声にも、わずかな喜びが滲んでいた。


『大規模ダンジョン、攻略成功です』


「――やった!」


創は思わず拳を握った。


その瞬間、配信のコメントが一気に流れ始めた。


「攻略成功!!」


「自己修復ゴーレム、ヤバすぎる!」


「あの損傷から戻ったぞ……」


「これ、ゴーレムの使い方が変わるだろ」


創は、そのコメントを見つめた。


自分たちが積み上げてきたものが、今、多くの人に見られている。


積み重ねてきた研究。


失敗を重ねた自己修復機構。


仲間たちとの議論。


協会との対話。


すべてが、今日の結果へ繋がっていた。


「……みんなに、報告しないとな」


創が呟く。


『はい』


ノアが答えた。


『今回の成果は、工房全体の成果です』


「――そうだな」


創は頷いた。


やがて、ダンジョンの外へ戻ると、入り口には大勢の人が集まっていた。


「――白瀬さん!」


「攻略成功、おめでとう!」


「ゴーレム、すごかったぞ!」


歓声が湧き上がる。


創は、その光景をしばらく呆然と眺めていた。


「……本当に、成功したんですね」


凛が、隣で笑う。


「だから言っただろ。慣れろ」


「いや、無理ですよ……」


創も、思わず笑った。


だが。


その喜びの中で、創の意識には、あの異常な魔力反応が残っていた。


「――ノア」


『はい、マスター』


「あの反応。やっぱり、気になる」


『私も同意します』


ノアは、少しだけ間を置いた。


『解析できなかったこと自体が、今回の最大の異常かもしれません』


「……どういう意味だ?」


『これまでのダンジョン現象には、すべて何らかの規則性が確認されています』


ノアの声が、静かに続く。


『ですが、今回の反応には、それがありませんでした』


創は、振り返った。


大規模ダンジョンの入口。


その奥には、もう何も見えない。


「……次に来るときまでに、調べておこう」


『はい』


創は前を向いた。


大規模ダンジョン攻略。


それは、確かな成功だった。


そして同時に。


創たちはまだ知らなかった。


この日の攻略が、単なる一つの実績では終わらないことを。


あの異常な魔力反応が、やがて彼らの前に現れる、次なる大きな問題の前触れだったことを。


第73話、お読みいただきありがとうございます。


これまで積み重ねてきた技術と絆のすべてが結集した、大きな戦いでした。


「攻略成功」という確かな成果の裏で、まだ解けない謎も静かに残っています。


次話では、この勝利がもたらす、大きな反響が描かれます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。