↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ職『ゴーレム使い』は現代ダンジョンで成り上がる ~ゴーレム工房から始まる世界一のダンジョン企業~  作者: さきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/82

第39話 日常の中の変化

気づけば、創の一日は、以前とは比べものにならないほど忙しくなっていた。


「――マスター、本日の予定を確認します」


朝、身支度をしている創の頭に、ノアの声が響く。


「午前中は凛様のパーティに同行。午後は新規依頼が二件。その後、貸与中のゴーレム五体の点検。夕方から収支の整理です」


「……五体か」


創は、シャツの袖を通しながら、思わず苦笑した。


「昨日も五体だったよな」


『昨日のうちに三体は完了しています』


「じゃあ、今日は二体だけか」


『いえ。新たに三体、点検時期を迎えています』


「……なるほど」


創は、しばらく天井を見上げた。


「増えてるじゃないか」


『はい』


ノアの返事が妙に淡々としていて、創は吹き出した。


「まあ、仕事が増えたってことだよな」


工房を出ると、創はギルドへ向かった。


以前なら、一件の依頼を終えれば、その日の仕事はほとんど終わっていた。


今では、朝から予定が埋まっている。


忙しい。


だが、不思議と嫌ではなかった。


午前中、凛のパーティに同行していると、創は自分の動きが以前とは変わっていることに気づいた。


荷物の確認。


ゴーレムの状態確認。


依頼内容の再確認。


次の行動の準備。


意識しなくても、自然と身体が動く。


「――なんか、こういうのにも慣れてきたな」


「何がだ?」


隣を歩いていた凛が、ちらりとこちらを見る。


「こうやって、朝から予定を詰め込んで動く生活です」


「……顔は慣れてないみたいだけどな」


「え?」


「疲れてる」


「そんなに分かります?」


「分かる」


即答だった。


創は、自分の頬を軽く撫でた。


「……ちゃんと寝てるんですけどね」


「寝る時間が足りないんじゃなくて、休む時間が足りないんだろ」


「それは……」


言い返せず、創は苦笑した。


凛は前を向いたまま、ぽつりと続ける。


「無理して倒れたら、ゴーレムどころじゃないぞ」


「――はい。気をつけます」


以前なら、こんな言葉を凛から聞くことはなかった。


それだけで、少しだけ嬉しくなった。


午後。


新規の依頼者二組への説明を終えた頃には、空はすでに夕暮れに近づいていた。


工房へ戻った創は、作業台の上に並べられたゴーレムを見て、思わず肩を落とす。


「……さて」


五体。


一体ずつ確認していく。


関節部の摩耗。


魔力経路の状態。


荷重制御の反応。


小さな異常を見つけるたびに、記録を残していく。


「ノア、三号機の右脚、少し反応が遅くないか?」


『確認します』


短い沈黙。


『……はい。前回の点検時より、約〇・二秒の遅延があります』


「やっぱりか」


創は工具を手に取った。


「部品交換までは必要ない。こっちを調整してみる」


『了解しました』


作業に集中しているうちに、時計の針が進んでいく。


ふと窓を見ると、外はすっかり暗くなっていた。


「……もうこんな時間か」


創は背筋を伸ばした。


その瞬間、机の隅に置いていた魔石の在庫表が目に入った。


「――そういえば」


先日、商店で聞いた話を思い出す。


魔石の品薄。


急な大口注文。


そして、最近の不審な噂。


「ノア。魔石の仕入れ、問題ないか?」


『現時点では確保できています。ただし、以前より仕入れ価格が上昇しています』


「……やっぱりか」


創は、少しだけ眉を寄せた。


『気になりますか?』


「まあな。でも、今は考えても仕方ない」


創は在庫表を閉じた。


「まずは、目の前の仕事だ」


そう言って、再び作業に戻る。


夜。


すべての整備を終え、収支の記録まで整理し終えた頃には、日付が変わりかけていた。


創は椅子に身体を預け、大きく息を吐いた。


「……いつの間に、こんな生活になったんだろうな」


会社員だった頃は、決められた仕事を終えれば、一日の役目は終わりだった。


今は違う。


自分で仕事を作り、自分で問題を見つけ、自分で次の手を考える。


面倒なことも多い。


疲れることだってある。


それでも――。


「……悪くないな」


創は、小さく笑った。


『何か、おっしゃいましたか?』


「いや」


創は立ち上がった。


「明日の予定は?」


『午前中は凛様のパーティ。午後から新規依頼が一件。夕方には――』


「そこまででいい」


創は苦笑する。


「聞くだけで疲れてきた」


『では、休まれることを推奨します』


「そうするよ」


工房を出る前、創はふと振り返った。


並んでいるゴーレムたちは、静かに主人を見送っている。


少し前まで、ここには数体のゴーレムしかいなかった。


今では、依頼を受けて外へ出ている仲間もいる。


仕事が増えた。


収入も増えた。


頼ってくれる人も増えてきた。


――その一方で。


どこかで、自分たちを警戒している誰かもいる。


「……まあ、なるようになるか」


創はそう呟き、工房の明かりを落とした。


明日もまた、忙しい一日が始まる。


その先に何が待っているのか。


今の創には、まだ知る由もなかった。


第39話、お読みいただきありがとうございます。


忙しさが増していく日常の中にも、着実な変化と手応えが積み重なっていました。


「なるようになるか」という一言に、まだ知らない先の展開への予感を重ねていただけたら嬉しいです。


次話では、束の間の休息回をお届けします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。