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ハズレ職『ゴーレム使い』は現代ダンジョンで成り上がる ~ゴーレム工房から始まる世界一のダンジョン企業~  作者: さきら


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第2話 収納の秘密

結局、坑道に戻るまでに、それほど時間はかからなかった。


頭上から垂らされたロープに掴まり、同僚の探索者たちに引き上げてもらったのだ。


「まーた落ちたのかよ」


「今回はちゃんと下まで見て歩けよ」


「怪我は?」


「大丈夫です」


半ば呆れたような声を浴びながら、創は苦笑した。


大事には至らなかった。


それだけで十分だった。


その日の仕事は早めに切り上げ、創はギルドの資材倉庫の隅を借りていた。


目の前には、道具箱、麻袋、ツルハシ、石ころ。


そして――。


「収納」


淡い光が走った。


目の前に置いていた道具箱が、跡形もなく消える。


「……おお」


思わず声が漏れた。


創は虚空へ手を伸ばす。


頭の中で、さっき収納した道具箱を思い浮かべる。


すると。


ポンッ。


何もなかった空間に、道具箱が現れた。


「……本当に出せるんだな」


創は道具箱を眺めながら、しばらく考え込んだ。


スキルを得たことは理解している。


だが、仕組みが分からない。


分からないものを、そのままにしておくのは性に合わなかった。


「まずは、容量からだな」


創は、手元にある荷物を一つずつ収納していった。


道具箱。


麻袋。


ツルハシ。


木箱。


四つ目までは、問題なく入った。


「……まだいけるか」


五つ目を収納しようとした瞬間だった。


グッ。


意識の先に、見えない壁のような感覚があった。


「……ここが限界か」


小石を入れてみる。


入らない。


もう一つ。


やはり入らない。


創は倉庫の木箱を並べ、頭の中で大まかな容積を計算した。


何度か確認して――。


「一立方メートルくらい、か」


思ったより小さい。


ただ、創はそれほど落胆しなかった。


「まあ、最初から大容量だとは思ってなかったしな」


一立方メートル。


大きな荷物を大量に運ぶには心許ない。


それでも、今までの創にはなかったものだ。


採掘道具を入れておけば、坑道まで手ぶらで行ける。


掘り出した鉱石を入れておけば、何度も往復する必要もない。


「……これ、採掘とは相性いいな」


創は、少しだけ口元を緩めた。


少なくとも――。


「ハズレってほどじゃないだろ」


そう呟いてから、次の実験に移る。


「次は時間経過」


創は握り飯を一つ取り出した。


半分をそのまま机の上に置く。


もう半分を収納した。


そして、しばらく時間を置く。


数時間後。


「……予想通りか」


取り出した握り飯は、普通に乾いていた。


収納していても、時間は止まらない。


「まあ、そうだよな」


創は頷いた。


次。


今度は生き物だ。


倉庫の隅にいた小さな羽虫を捕まえる。


「……悪いな」


試しに収納を使ってみる。


――入らない。


何度試しても同じだった。


木箱や石ころとは違う。


まるで、スキルそのものが対象を拒絶しているような感覚だった。


「生き物は収納できない、か」


念のため、ギルドの資料室へ向かった。


探索者向けの手引書を何冊か調べる。


やがて、目的の記述を見つけた。


**『収納スキルは時間経過を停止させない』**


そして、もう一つ。


**『生命を持つ対象は収納できない』**


「……やっぱり、これが普通なんだな」


特別な制約というわけではない。


収納スキルを持つ者なら、誰でも知っている常識らしい。


容量は小さい。


時間も止まらない。


生き物も入らない。


創は、手引書を閉じた。


「……確かに地味だ」


戦闘で敵を倒せるわけでもない。


身体能力が上がるわけでもない。


派手な魔法を使えるわけでもない。


だが――。


「便利なのは間違いないんだよな」


創は倉庫に戻ると、今度は自分の荷物をまとめて収納した。


ツルハシ。


採掘用の道具。


予備の食料。


水筒。


救急道具。


それだけで、身体が驚くほど軽くなる。


「……これだけでも、十分使える」


創は、少しだけ嬉しくなった。


収納を「ハズレ」と笑っていた昨日までの自分が、少し馬鹿らしく思えてくる。


容量は一立方メートル。


それでも、その一立方メートルがあるだけで、仕事のやり方は変えられる。


「……だったら」


創は、ふと考えた。


「この容量も、増えたりするのかな」


根拠はない。


ただの思いつきだった。


「もし、もっと大きくなったら……」


道具だけじゃない。


採掘した鉱石。


ゴーレム。


作業場。


もっと大きくなれば――。


「……工房くらい、入れられたりして」


自分で言っておいて、創は笑った。


「さすがに無理か」


今は一立方メートル。


せいぜい木箱数個分だ。


工房どころか、大きな家具を入れるのも難しい。


それでも、その想像は妙に楽しかった。


「……収納、か」


創は、もう一度スキルを発動する。


淡い光とともに、道具箱が消えた。


そして、創は気づいた。


収納については、だいたい分かった。


容量。


時間経過。


生物制限。


少なくとも、現時点で確認できる仕様は把握できた。


なら――。


「次は、ゴーレムだな」


創は、昨日まで使っていたゴーレムを思い浮かべた。


右に五度。


掘削角を下げろ。


ゆっくり。


止まれ。


もう一度。


何度も同じ命令を繰り返す。


「……やっぱり、こっちは何も変わってない」


収納を手に入れても、ゴーレムの扱いづらさはそのままだ。


創は腕を組んだ。


「なんで、こいつらはこんなに命令を理解できないんだ?」


ゴーレムは、誰かが作ったものだ。


創は、それを借りて使っているだけ。


だから、構造そのものを詳しく知っているわけではない。


なら――。


「自分で作ったら、分かるんじゃないか?」


創は、そこで思考を止めた。


今まで考えたこともなかった。


ゴーレムを使う。


それだけだった。


だが、もし自分で一から作れば。


なぜ命令が伝わりにくいのか。


なぜ動きが鈍いのか。


なぜ三体程度しか同時に操れないのか。


その原因が分かるかもしれない。


「……面白そうだな」


創の目が、少しだけ輝いた。


もちろん、簡単ではないだろう。


そもそも、ゴーレムを作る方法すら知らない。


必要な素材も。


魔力回路の構造も。


核となるゴーレムコアの作り方も。


何一つ分からない。


それでも――。


「やってみるか」


創は立ち上がった。


「どうせハズレ職なんだ」


小さく笑う。


「だったら、自分で使いやすくすればいい」


それが、最初の一歩だった。


このときの創はまだ知らなかった。


収納という小さな力と、自分でゴーレムを作るという無謀な挑戦。


その二つが組み合わさったとき、自分の「ハズレ職」に隠されていた、本当の可能性が姿を現すことを。


――翌日。


創は、ゴーレムの作り方を調べるため、ギルドの資料室へ向かうことになる。


第2話、お読みいただきありがとうございます。


収納スキルの検証回でした。地味な力に見えて、実は――という展開を、この後もじっくり描いていきます。


本作は、まず第3話まで一挙に投稿しております。よろしければ、続けてお読みいただけますと幸いです。


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