↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ職『ゴーレム使い』は現代ダンジョンで成り上がる ~ゴーレム工房から始まる世界一のダンジョン企業~  作者: さきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/33

第18話 スキル共鳴

「――ノア。もっと、範囲を広げてみないか」


ゴーレムネットワークの実験から数日、創は逸る気持ちを抑えきれずにいた。


「前は採掘ポイント一つだった。今度は、もっと広げてみたい」


「――正直に申し上げますと、私も気になっていました」


ノアの声にも、隠しきれない好奇心が滲んでいた。


「ただし、これまでとは負荷の桁が違うはずです。慎重に、段階を踏んで進めましょう」


「もちろんだ」


休日の朝。創は契約先の許可を得て、浅層各地へ予備ゴーレムを配置した。総勢十数体。これまでで最大規模の実験だった。


「――始めます」


創は収納に意識を向け、深く息を吸い込んだ。


「収納」


いつもの感覚とともに、意識が広がっていく。だが今回は、これまでとは明らかに違う手応えがあった。


十数本の光の線が、一斉に伸びていく。それぞれのゴーレムと繋がり、さらにゴーレム同士も、複雑に絡み合いながら繋がっていく。まるで、巨大な蜘蛛の巣が、ダンジョンの浅層一帯に広がっていくようだった。


「マスター、魔力消費が急激に増えています。少し抑えてください――」


「――いや、いける」


そう答えた瞬間、鋭い痛みが頭を貫いた。視界がぐらりと揺れ、膝が震える。それでも創は歯を食いしばり、意識を手放さなかった。


「ぐっ……!」


全身から汗が噴き出す。これまでとは比較にならない負荷が、収納を通じて押し寄せてくる。限界のはずなのに、不思議と手を離したくなかった。


創は、確かな手応えを感じていた。負荷は確かに大きい。それでも、押し潰されるような感覚ではなかった。むしろ、さらに遠くへ、さらに深く、届きそうな予感がある。


「収納とゴーレムマスター……この二つの、もっと奥にあるものが、見えそうな気がする」


「――マスター?」


次の瞬間、世界から音が消えた。


ダンジョンの空気も、ゴーレムの足音も、ノアの声さえ遠ざかっていく。


視界は白く染まり、静寂の中に淡く輝く文字だけが浮かび上がった。


頭の中で、これまで聞いたことのない、無機質な響きが鳴った。


《条件達成》


《ユニークスキル共鳴を確認》


《新規能力【ゴーレムネットワーク】を獲得しました》


「――な、これは……!」


視界が、白く弾けた。


全身を、圧倒的な奔流が駆け巡る。十数本だった光の線が、瞬く間に数を増し、まるで根を張るように、ダンジョンの隅々にまで伸びていく感覚があった。


「マスター! 私にも――何か、感じます……!」


ノアの声にも、これまでにない昂りがあった。


「情報の処理速度が、跳ね上がっています! これまでの比ではありません……!」


創の意識の中に、驚くほど鮮明に、ダンジョン全体の様子が流れ込んでくる。配置したゴーレムたちの位置、状態、周囲の地形――すべてが、まるで自分の身体の一部であるかのように、鮮明に把握できた。


「――見える。全部、見えるぞ……!」


思わず、声が震えた。


これまで一体一体、細かい指示を出さなければ動かせなかったゴーレムたちが、今や意識を向けるだけで、意図した通りに、一斉に、寸分の狂いもなく動く。


全てのゴーレムが、まるで一つの巨大な生命体の手足であるかのように、完璧に連携していた。


しばらくして、奔流のような感覚が、ようやく落ち着きを見せ始めた。


創はその場に膝をつき、荒い呼吸を繰り返した。それでも、顔には隠しきれない笑みが浮かんでいた。


「……できた」


「はい」


ノアの声にも、確かな感動が滲んでいた。


「マスター、これは――恐らく、世界でも前例のない現象です」


「スキル共鳴、だったか。さっき、頭の中で聞こえた」


「古い文献に似た記述はありました。ですが、実例は確認されていません」


「今は浅層が限界ですね。数も、これ以上増やすと危険です。能力の成長に合わせて、少しずつ広がっていくでしょう」


創は、ゆっくりと立ち上がった。


配置した機体が、今も静かに、それぞれの持ち場で働き続けている。その光景は、もはや一人のゴーレムマスターが操るには、あまりにも大きすぎる規模だった。


「――ゴーレムネットワーク、か」


「はい。今後、この能力がどこまで広がっていくのか、正直、私にも予測がつきません」


創は、収納の中に広がる、あの淡い光の網を思い浮かべた。


一年前の自分に、これを見せたら、きっと信じないだろう。ハズレ職と笑われ続けたゴーレムマスターが、収納という、これまた不人気なスキルと重なり合い、こんな景色に辿り着くとは。


「――ノア。俺たち、とんでもないところまで来ちまったな」


「……はい」


ノアの声には、笑いを堪えるような響きがあった。


「本当に、そう思います」


夕暮れ時、ダンジョンの入り口を出た創は、しばらく空を見上げていた。


採掘の日々も、ノアとの出会いも、自己ゴーレム化も――すべてが、この瞬間へ続いていた。


「――さて」


創は、静かに拳を握った。


「ここから、何を始めよう」


その問いに答えはなかった。


だが、一つだけ確かなことがある。


もう採掘屋として生きるだけでは終われない。


この日、世界はまだ知らない。


ハズレ職と呼ばれた一人のゴーレムマスターが、新たな時代の扉を開いたことを。


第18話、お読みいただきありがとうございます。


「ユニークスキル共鳴」――思いがけない形で、新しい能力が姿を現した回でした。


これまで積み重ねてきた採掘の日々も、ノアとの出会いも、自己ゴーレム化も。すべてが、この瞬間に繋がっていたのだと思うと、感慨深いものがあります。


「ここから、何を始めよう」


その問いの答えは、次話から、いよいよ動き出します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。