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父に勝てないレンジャー隊長、江戸で柳生十兵衛と将軍家光の悪友になり悪を斬る!  作者: 月神世一


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3/10

EP 3

抜く価値もねぇ

「カチッ」

澄んだ金属音と共に、信長の右手に握られた黄金の小箱から、オレンジ色の炎が立ち上った。

「なっ……!?」

火打ち石も使わず、指先一つで火を生み出す光景。江戸時代の人間からすれば、それはまごうことなき『妖術』だった。

一瞬、門下生たちの動きが完全に止まる。

実戦において、その「一瞬の硬直フリーズ」は致命傷に直結する。

「……隙だらけじゃのう」

タバコに火をつける動作から流れるように、信長の巨体が地を這うような低い姿勢で前傾した。

「ええい、妖術使いめ! 騙されるな、斬り捨ていッ!」

我に返った先頭の男が、上段から日本刀を振り下ろす。

柳生新陰流の洗練された太刀筋。無駄のない、美しい剣術だ。

だが——。

(お遊戯会かよ)

殺し合いの泥濘でいねいを知るレンジャーの目から見れば、それはあまりにも『行儀が良すぎた』。

信長は抜刀しない。

振り下ろされる刃の軌道を紙一重で見切り、一歩、深く相手の懐へと踏み込む。北辰一刀流の神速の踏み込みだ。

「抜く価値もねぇわ。おんどりゃあ、腰の飾り(刀)を振るのが遅すぎるんじゃあ!」

ガラ空きになった男の顎へ、下からカチ上げるような強烈な掌底しょうていを叩き込む。

ゴッ! という重い衝撃音が響き、男は白目を剥いて崩れ落ちた。脳震盪。完全に意識を刈り取った。

「なっ……!? き、貴様ァ!」

残る二人が逆上し、左右から同時に斬りかかってくる。

信長は左手で腰の『夕日丸』の鞘を掴むと、鞘のままカァン! と右側の男の刃を弾き飛ばした。

同時に、左側の男の腕を絡め取る。自衛隊徒手格闘(CQC)における冷酷な関節技だ。

「がァァッ!?」

「親父の地獄に比べりゃ……」

ギリィッ、と肩の関節が限界まで軋む音。

そのまま相手の勢いを利用して、一切の慈悲なく背負い投げを敢行する。

ドゴォォォンッ!!

男の背中が江戸の固い土に激突し、肺から空気が弾け飛んだ。

ものの数秒。剣術の名門であるはずの門下生三人が、抜刀すらしていない素手の男に、無傷で完全に制圧された。

信長がゆっくりと立ち上がり、乱れた迷彩服の襟を直した、その時だった。

『ピッ、ピッ』

突然、信長の左腕から無機質な電子音が鳴り響いた。

G-SHOCKの時報だ。

「ひぃっ……!?」

腕の関節を極められ、地面で呻いていた男が、その音を聞いて顔面を蒼白にした。

「か、体の中から奇妙な音が……!? や、やはり妖術使い……化け物だァァッ!」

男は気絶した仲間を放り出し、腰を抜かしながら這うようにして逃げていった。

「……おいおい、仲間を見捨てて逃げるのかよ。軍隊ウチなら即刻懲罰モンだぞ」

信長は呆れたように溜息をつき、先ほど火をつけたメビウスを深く吸い込んだ。

紫煙を江戸の空に吐き出しながら、周囲を見渡す。遠巻きに見ていた町人たちが、怯えた顔で蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「……さて。派手に暴れちまったが、この時代の『警察』みたいな奴らに追われるのは面倒だな」

G-SHOCKの盤面を確認するが、当然ながらGPSも通信も繋がらない。

この騒動が、江戸の剣術界——ひいては幕府の中枢を巻き込む大事件の火種になるとは、この時の信長はまだ知る由もなかった。

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