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父に勝てないレンジャー隊長、江戸で柳生十兵衛と将軍家光の悪友になり悪を斬る!  作者: 月神世一


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EP 5

信長と知恵伊豆の取引ブラック・オプス

翌日の深夜。

再び柳生家江戸屋敷の離れに、黒塗りの駕籠かごがひっそりと到着した。

降り立ったのは、家光ではなく、幕府の頭脳たる松平信綱(知恵伊豆)ただ一人であった。

信綱は離れに足を踏み入れると、胡座をかいて銃剣コンバットナイフの手入れをしていた信長と、刀の刃こぼれを確認していた十兵衛の前に、一枚の絵図面を広げた。

「……勘定奉行・稲葉大隅守が裏で取り仕切る、抜け荷の集積所の見取り図だ」

信綱の言葉に、信長はナイフを置き、図面を覗き込んだ。

「江戸の湊から少し離れた、入り組んだ入江の倉庫群か。……仕事が早いな、オッサン」

「御庭番を総動員して裏付けを取った。明後日の丑三つ時、異国からの荷を満載した大型船がここへ入る。そして、その荷と引き換えに、幕府の禁制品である大量の金銀や武具が運び出される手はずだ」

信綱は懐から扇子を取り出し、ピシャリと手のひらに打ち付けた。

「よいか、信長。上様は『現場は任せる』と仰ったが、政治を司る私から、あえて冷酷な条件ルールを提示させてもらう」

信綱の目が、一切の感情を排した為政者のそれに切り替わる。

「お主たちが狙うべきは、稲葉の印が押された『抜け荷の連判状』および『取引の裏帳簿』のみ。そして、この作戦は幕府、ひいては上様とは『一切無関係』に行われるものとする」

「……」

「もしお主たちが小野派一刀流の剣客たちに敗れ、あるいは捕らえられた場合……私は幕府の権限をもって、お主たちを『ただの抜け荷泥棒』として処断する。上様の関与を疑わせる痕跡は、私が全て消し去る。……それが不満なら、今すぐこの話から手を引け」

それはつまり、失敗すれば一切の救済措置はないという死の宣告。

十兵衛の顔に緊張が走った。

「知恵伊豆様。それはいくら何でも……」

「構わんよ、十兵衛」

信長はG-SHOCKのバックライトを点灯させ、時間を確かめながら不敵に笑った。

「要するに、『非公然作戦カヴァート・オプス』ってやつだろ? 存在しない部隊が、存在しない任務をこなし、失敗すれば国は一切の関与を否定プラウシブル・ディナイアビリティする。……現代こっちの特殊部隊じゃ、日常茶飯事だ」

信長は立ち上がり、信綱を見下ろしてニヤリと歯を見せた。

「俺は、オッサンみたいな『優秀な冷血漢』が仕切る作戦、嫌いじゃねぇぜ。上が保身と国の天秤をきっちり計算してるからこそ、現場(俺たち)は余計な気を使わずに暴れられるってもんだ。……失敗した時の責任ケツは俺が持つ。その代わり」

信長は図面の『倉庫』の一点を指差した。

「作戦のやりプロセスには一切口出しすんな。俺と十兵衛の二人で、この拠点を完全に制圧クリアリングして、証拠をかっ攫う」

「……よかろう。見事証拠を持ち帰った暁には、私が責任を持って勘定奉行・稲葉を法廷おしらすに引きずり出そう。上様の大義名分は、私が完璧に整えておく」

信綱と信長。

身分も生きる世界も全く違う二人の間に、冷徹な『プロフェッショナルとしての契約』が結ばれた瞬間だった。

「交渉成立だ。……で、十兵衛。偵察スカウティングの首尾はどうだ?」

信長が水を向けると、十兵衛は一枚の書き付けを取り出した。

「うむ。知恵伊豆様の図面と合わせ、敵の配置がおおよそ割れた。……信長、予想通り厄介なことになっているぞ」

十兵衛が隻眼を細め、書き付けを指差す。

「倉庫周辺の警備は、ざっと五十。多くは鉄砲を持った足軽やゴロツキだが……問題は、稲葉が雇い入れた『小野派一刀流』の凄腕たちだ。特に、現場の指揮を執っている男……名を、**神子上典膳みこがみてんぜん**という」

「ほう。強ぇのか?」

「強いなどという次元ではない。小野派の極意『切り落とし』を完全に己の血肉とした、正真正銘の『人斬り』だ。拙者とて、正面から撃ち合えば五分か、あるいは……」

天下の天才剣士・柳生十兵衛にそこまで言わしめる男。

その事実が、今回の任務の致死率リスクが極めて高いことを証明していた。

「……上等だ」

信長の瞳の奥で、戦士としての本能が青白い炎を上げた。

「相手が本物の殺意キル・インテントを持った兵士なら、俺も容赦なく『軍隊の暴力』を使わせてもらう。鉄砲隊だろうが、一刀流だろうが関係ねぇ」

信長は腰に提げた『夕日丸』の柄をポンと叩いた。

「準備しろ、十兵衛。明日の夜、敵の拠点に潜入インフィルする。小野派一刀流の面を拝みに行こうじゃねぇか」

幕府の権威を揺るがす巨大な陰謀と、暗躍する凄腕の刺客たち。

最強の悪友バディによる、死と隣り合わせの隠密作戦ブラック・オプスの火蓋が切られようとしていた。

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