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父に勝てないレンジャー隊長、江戸で柳生十兵衛と将軍家光の悪友になり悪を斬る!  作者: 月神世一


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17/28

EP 17

非致死制圧ノン・リーサルとクリアリング

脱臼した手首を押さえ、床をのたうち回る跡部剛蔵。

人質という唯一の盾を失い、三十人の用心棒も全滅した今、彼に残された手札は存在しないはずだった。

だが、死に物狂いになった悪党の執念は、まだ完全に潰えてはいなかった。

「……こ、殺せ! 奴らを殺せェッ! 『影』ども、何をしておる!!」

跡部が血を吐くような声で叫んだ瞬間。

離れの天井板が数箇所、音もなく跳ね上がり、黒装束に身を包んだ三つの影が舞い降りた。

跡部が裏で飼っていた、非合法の暗殺集団(忍び)である。彼らの手には、鈍く光る苦無くないと、毒を塗られた小太刀が握られていた。

「チッ、まだ伏兵ハイドがいたか!」

信長は咄嗟に町娘を背中で庇い、鋭く声を飛ばす。

「竹千代、十兵衛! VIP(人質)のカバーに入れ! 俺が空間を制圧クリアリングする!」

「承知した! 上様、拙者の後ろへ!」

「うむ、娘の安全を最優先とせよ!」

十兵衛と家光が娘の周囲を固めるのを確認すると同時、信長は黒装束の一人に向かって地を蹴った。

忍びの一人が、信長の顔面を狙って小太刀を突き出す。

だが、信長の動きは、彼らの知る「武芸者」のそれとは全く異なっていた。

直線的な踏み込みではなく、上半身を小刻みに揺らしながら死角ブラインド・スポットへと滑り込む、現代特有の戦術機動。

「……なっ!?」

標的を見失った忍びの腕を、信長は外側から絡め取り、そのまま自身の肩を支点にして強烈な腕挫十字固め(アームバー)をスタンディングのまま極めた。

「ゴキッ!」という鈍い音と共に忍びが悲鳴を上げ、小太刀を取り落とす。信長はすかさず相手の延髄に手刀を叩き込み、一瞬で意識を絶った。

「馬鹿な、影の動きをこうも容易く……!」

残る二人の忍びが、動揺しながらも信長へ向けて毒塗りの苦無を放つ。

「遅ぇよ」

信長は床に転がっていた用心棒の刀を足の甲で跳ね上げ、手元でクルリと回して苦無をガキンッと弾き落とした。

そのまま流れるように前傾姿勢を取り、部屋の隅にある襖の陰へと素早く身を隠す。

「消えた!?」

「どこだ!」

忍びたちが警戒して背中合わせになる。

信長は襖の陰から、壁に沿うようにしてジリジリと足を進めた。視界を少しずつ広げ、安全を確認しながら死角を潰していく技術——現代の特殊部隊が室内戦闘(CQB)で用いる『カッティング・パイ』の動きである。

(……一人、二人。ターゲット確認)

息を殺し、忍びたちの完全に背後を取った信長は、音もなく背後から襲いかかった。

一人の首に腕を回してチョークスリーパー(裸絞め)を極めつつ、もう一人には強烈な前蹴りを浴びせて壁まで吹き飛ばす。

壁に激突して肺の空気を吐き出した忍びの胸ぐらを掴み、容赦のない頭突き(ヘッドバット)を見舞う。

「ガァッ……!」

二人の忍びもまた、一滴の血も流すことなく、完全に昏倒して床に崩れ落ちた。

「……フゥ」

信長は小さく息を吐くと、念のために離れの奥にある隠し部屋や押し入れの扉を次々と開け、敵が潜んでいないかを素早く、かつ徹底的に確認していく。

「よし。空間の制圧クリアリング、完了だ。……オール・クリア。もうネズミ一匹潜んじゃいねぇ」

信長がTシャツ姿のまま親指を立てる。

その徹底した『安全確保』の動きを、十兵衛は感嘆の眼差しで見つめていた。

「……凄まじいな。剣を持った武芸者だけでなく、闇に潜む忍び相手にも、全く隙を見せずに制圧してしまうとは。あの『死角を一つずつ潰す歩法』……理に叶いすぎている」

「うむ。信長の戦いは、個人の武勇を見せつけるものではない。ただひたすらに、味方の安全と任務の完遂のみを追求した『本物のいくさ』よな」

家光もまた、信長の背中に、天下を束ねる軍団長に相応しい器の大きさを見ていた。

「ひぃッ……あ、あ、ああッ……!」

部屋の隅。

最後の切り札であった暗殺者たちをも、赤子をひねるように無力化されてしまった跡部剛蔵は、もはや言葉すら発せなくなっていた。

脱臼した手首を押さえ、ガチガチと歯を鳴らしながら、後ずさりすることしかできない。

信長は、床に落ちていた跡部の脇差を拾い上げると、ゆっくりと悪徳奉行の目の前まで歩み寄った。

「さて、オッサン。護衛アグロは全部片付けた。逃げ道も、裏門を縛り上げてるからゼロだ」

信長が冷たい見下ろす視線を向ける。

「あとは、アンタが溜め込んだ『裏帳簿』のありかを吐くだけだ。……言うまでもないが、嘘をついたら、次は手首の脱臼じゃ済まねぇぞ?」

悪事を暴き出すための決定的な証拠エビデンス

時代を超えた最強の悪友トリオによる「お裁き」の準備が、いよいよ整おうとしていた。

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