もし終わったら…
食堂にて、進まぬ飯を眺めながら昨夜を思い出す。
「どしたん話聞こか」
背の低いイヌタロウ母の言葉を受け流しながら
「それはイヌタロウが悪いね」
ユキを取り返す為には此処に居てもしょうがな
「じゃ…下げるね」
「ちょっと待って!?」
「やっとこっち見た」
生気の無い目と至近距離で見つめ合う。
「美味しくなかった?」
「いや……」
真顔で訊かれ、反応に困ってしまうシエラ。
「ふーん……デートは失敗」
「違う!!何もかも!!!」
「元カノにバッタリ出会って修羅場でしょ?」
「ちが……わない!?」
「グレーテルから聞いたよ」
完全にペースを握られ言いたくもないリアクションを返してしまう。
「『ユキ』 大事なひとなんだ」
「……」
そもそも何でグレーテルから聞いてるんだろう。イヌタロウじゃないんだ。
「お母さんそういう時の方法知ってるよ ご飯全部食べてくれたら教えてあげる」
癪だけど、この人なりの答えが気になるから急いで全部喰らったシエラ。冷めてもご飯は美味しかった。
「全部自分のものにするのさ 私も『ヒデヨシ』を知るまでは欲望のままに全部を喰らったんだよ」
「…それはどういう意味?」
『トモエ』は人差し指を唇につける。空になった皿たちを回収して厨房の奥に行ってしまった。
「下品」
思った言葉が口に出た。でも納得もしてしまった。真剣に悩んでいたのがバカらしくなり、登録されたばかりの連絡先を眺める。
『ハンス』という男なら、迷惑をかけても良い。そんな気がして、勇気という思いを感じる前に電話をかけた。
与えられた仮面『アップル』の能力は『侵食』。ユキには手っ取り早く手駒になって貰いたい。一日仮面を付けたまま過ごして貰ったがユキに異常は見当たらない。
パレードは失敗と嘆く。フェイはその方が良いと笑う。クロは決めポーズを取る。
ユキは考えていた。もしシエラと仲直り出来るのなら。
「フェイ 頼みがあるんだけど」
「どうしたのユキ?」
「みんなで水着を買いに行かない?」
ユキは、海でバカンスを望んだ。




