15、イヌタロウは善意の塊
「パレード 結局アンタ何がしたかったの?」
「下見…とでも言いましょうか?」
「ライブ会場の下見は大事よね!おじさん分かるわ!」
「何この暑苦しいおじさん…」
「情熱的と言って頂戴!!」
「ユキ…いや『アップル』 そろそろ答えは決まった?」
「……『マリス』 本気なのね?」
ユキは渡された仮面を睨みながら、マリスの姿をした「フェイ」を見据えた。
「シエラちゃん…ごめんね…」
仮面を受け取ったユキを見て、フェイは怪しく笑う。
「待っててね…『ルア』…」
おじさんは大事なシーンを、ふざけた態度でパシャリと撮った。
「僕を映すな!尊厳が穢れる!」
「良いじゃない!チーム『MALICE.exe』の結成なのよ!祝わずに居られないわ!」
緊張が台無しにされ、フェイとユキは同時に溜め息を吐く。そしてお互いに、少しだけ楽しそうに笑う。
一方その頃、シエラはまたブランコを漕いでいた。ユキも居なくなりカエルも姿を見せず、帰る家も無いシエラは孤独を満喫していた。
「……実力のシエラって言われてたのに 何よこのザマは」
夕焼けを黄昏れながら呟く。ユキの次に思い出すのはあの少年「シュク」だった。唯一の味方になってくれそうな人。でも私はその手を払った。後悔しているかと訊かれたらそうなのかもしれない。結局、私は一人じゃ何も出来ないんだ。
「イヌタロウ!公園!遊具!遊ぶ!」
「グレーテルその格好で遊んだら洗い物が……」
静かな私を嘲笑うかのような声。二人の兄妹の様な人影に視線を向ける。
……髪がピンクの青年とゴスロリの少女。私じゃなくても視線を集めるだろう。
「ブランコ!私ブランコ初めて!」
「はしゃぎ過ぎて語彙力が幼児退行してる……まぁいいか!」
「良くないわよ!!」
近づく二人に怒号を浴びせてしまった。勢いで出た叫びに口を抑える。青年は口を開けたまま、少女は泣きそうになっていた。
「……ごめんなさい」
「私も…はしゃぎ過ぎてヨウジタイコウしてごめんなさい……」
少女も謝罪をする。私が悪いのに。
「うるさくしてごめんな! 君がシエラ…で良いんだよな?」
ピンクの青年は私を知っている?シュクに続いて怪しい人物が増えていく事にまたイラつきを覚える。
「あなたは……まさか喋る犬の飼い主?」
「そう!そうだけど飼い主…いや飼い主か?」
あの時、戦闘を中断させた可笑しい青年だ。
「俺はイヌタロウ!ヒーローに憧れてる正義の味方だ!」
「そのイヌタロウにこれからお世話になるグレーテルだよ!」
「しかし俺の親も良く承諾したよな 身寄りの無い女の子を世話してくれるなんてよ!」
ゴスロリの少女は身寄りが無い。それを言えば、私もそうだ。
「……良かったら一緒に来るか?ウチの親の飯は美味いぞ?」
否定する前にお腹が返事をしてしまう。思えば、まともに食事を取れていない。
「イヌタロウ!ハーレム!」
「そういう事言うんじゃありません!」
「……ご馳走になるくらいなら」
どうせ諦めかけていた。ならどうにでもなれ。私は、イヌタロウという青年の手を握った。




