表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5/22 紙版1巻発売予定!】魔術師は死んでいた。  作者: 彩白 莱灯
解放

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/146

第145話 友人

 声をかけられても、揺さぶられても反応がない。

 それなのに魔力はどんどん高まっていき、水はどんどん形を大きく作っていく。

 その形はこの世界で言うところのウロロス。

 私の知識で言うところの蛇とか龍といった長細く鱗を持つ生き物。

 水でできたその巨体は、私を容易に飲み込んで、体内で溺れさせてしまうことが出来そうなほど。

 プール程の水が何倍あるのかと言った量を持っていそうだ。

 それが、まだまだ増えている。



「ナオっち! しっかりしろ!」

「ナオー……お願い、こっち見てぇ……」



 二人が懸命に呼びかける。

 けれど当の本人は魔力の放出をやめない。

 やめられない。

 目は見開かれて、口は開け放たれて、意識もどこかに飛んでしまっている様に無反応。

 そもそもの魔力が少ないと聞いているナオさんが、ここまでに魔力を使っていて大丈夫なのか……って、久しぶりに他人事のように考えてしまっているな。

 このままじゃあ、みんな危ないかな。



「お二人は通路の方に行ってください」

「この状態のナオから離れたくない!!」



 美しきかな、姉弟愛。

 だけど今は悲しいことになりかねない。



「私がどうにかします。なので二人は下がってください」



 魔力によって起こる普通の風が、空洞の中を満たす。

 行き場のない強風が吹き荒れて、髪が乱れる。

 目元に巻いた布が靡く。

 水が混じって全身が濡れる。

 話し始めてからずっと神妙な顔をしているセンさんが、一層目を鋭くして、まるで睨んでいるように私を見る。



「……どうにかできんの?」

「どうにかします」

「どうすんの?」

「……とりあえず、受け止めますかね」



 ますます大きくなって、表情すら描かれていく水のウロロスを見上げる。

 体調すらも長くなって、受け止めきれなくとも水量でどうにかなってしまいそうだな。

 どうにかなってしまわないように、せめて二人だけは避難させたい。



「それなら俺も残るよ」

「私もっ」

「ダメです」

「なんで!?」

「危険です」


「なんでアンタが残ることは許される?」



 いつもの間延びした口調はどこに行った。

 目付きだけでなく言葉尻も鋭くしたセンさんに、少し怯んだ。

 でも。

 それでも。

 譲れない。



「適任ですからね。私が」

「はっきり言えよ」

「詳細は知りませんが、センさんは土。属性的には有利ですが、あの大きさに対抗できますか? ライラさんは火。属性的に不利ですし、もしかしたら二人とも共倒れになります」

「できるよ。だから俺も残る」

「それと。もしここが埋まってしまった時は、センさんの魔法でここから出してください」




 まあ、考えたくないパターンだけど。

 生き埋めだって正直ありえる。

 どこまでの水を吸い上げているのか、地響きがしている。

 可能性はゼロじゃない。

 だからこそ早く言ってほしい。

 目は見せていないので、なるべく語気を強めて言った。

 生き埋めパターンを話すと、センさんは納得していない目を見せながらも、状況を察したようだ。

 言い返す様子はなく、ただ体が動かないと言ったところか。

 ライラさんは自覚があるのだろう。

 ナオさんの手をそっと離した。



「無事じゃないと、許さない」

「私も、中途半端にする気はありませんよ」

「遊びの約束、守ってね」

「善処します」



 死亡フラグじゃん。

 ライラさんがセンさんの腕を引き、通路の魔法陣があるところまで振り返らずに走った。

 何拍か空いて、光が漏れる。

 魔法陣は無事使えたようだ。

 これで魔法陣がある部分が崩れていたら、流石に隠し通せない。

 水属性は使わない。

 不利だけど、学校で申請した火属性で対抗するために魔力を練る。



 ―― ……変わってやろうか?



 生優しい言葉が脳裏に響く。



「いいえ。私がやります」


 ―― 意地か?


「いいえ。いや、うん。そうですね。意地です」


 ―― 素直でよろしい。なら、見届けよう。お前がダメなったら私様も終わる。つまらない幕切れはやめてくれよ?



 善処します、と呟いて。

 再度魔力を練る。

 火属性の魔法は何となく怖くて、あまり進んで練習もしていなかった。

 誰もいないのだから、有利な土属性や問答無用に取り込める闇属性で対抗すればいいのに。

 もしくは同種の水属性で対抗してもいいのに。

 それでも火属性を使うのは、やはり意地だ。

 同級生として。

 巻き込んだものとして。

 助けられない、不甲斐ない医療関係者として。

 ……友人として。

 まあ、こんなものはただの自己犠牲なのだが。

 そこまで理解していても、どうしても真っ向から受け止めたいと思ってしまった。

 じじさんを大切に思っての、葛藤を。



「さあ、ナオさん。どうぞ?」



 聞こえているかわからないが、そう囁く。

 微かに身を震わし、焦点のあっていない目が私を視認する。

 魔力と水で作られたウロロスが、二つの頭から隠す気もない牙を剥き出しに、食い散らかしやろうと向かってくる。

 私は両手を広げ、唱えた。



(アム)特級魔法(レヴン) ≪炎熱の太陽は我が灼熱に焼かれる≫」






 ―――――……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ