現実の名前は・・・。
間があいてしまいましたが続きを。
ちょっと短いのですがちょっとここで区切りますね(^^;。
この時間なのにすでに日は高く、建物の影も自分の影も短くくっきりと写っている。
少し汗ばんだ額をハンカチで拭いながらドアをくぐると、
「おう、篠崎。もう外回り出歩いて大丈夫なのかよ?!」
背をポンと叩かれた。
「ああ、見た目がけっこうまだ痣が残ってるけど大丈夫なんだ、そろそろ溜まった仕事も片付けないと」
同僚にそう返事をした。
「しかしねえ、お前そんなに飲む方じゃないのに酔ってそんなに怪我するとはね~」
微妙な微笑で手を振って同僚の会話を遮ると、煙草を吸うでもなく、喫煙室でコーヒーを片手に座った。
窓からは熱気が伝わるほどの日差しが照り付けている。
篠崎航平、それが自分の名前である。
ちょっと知られた会社の、でもしがない末端のサラリーマン、それが自分の肩書。
それが正しい、はず、だが、
先日、飲み会で泥酔したらしく、その後に大怪我をした。
そうなっている。
その間の夢が。
奇妙に意識に残っている。
同じような暑さでも湿度のないからっからの砂漠のオアシスのような街。
町はずれの古道具屋に、銀灰色に琥珀の瞳の、怪しい大陸マフィアのような、しかし端正な長髪の男。
大怪我をした自分を介抱し、記憶が戻るまで保護してくれた。
あの街は、あの店は、あの男は、・・・幻だったのか?
あの街の魔女はささやいた。
「記憶は絶対に戻るわ、大丈夫。あっちとこっちとどちらを選ぶ?」
と。
その、あの街での自分の名前が、
エリオット・チャン、と―――。
篠崎、エリオットの耳にかすかに響いていた蝉の声が、突然蝉時雨に変わった。
次の瞬間、
「先日からおかしいと思ったが、君、生きていたのかい?」
低い囁き声が背後から聞こえ、
振り向いた眼に銀の刃が光っているのが写る。
「部長?なぜ・・・??」
「あの時、とどめをさしておけばよかったよ、篠崎君。君の知ったことは知らなくていいことなんだ、目撃者が居ると困るんだよ」
そこへもう一人女の声がかぶさる。
「部長、ダメよう、ここでやったら。別の場所にしましょ?」
変に甘ったるい声が気だるげに小さく響いた。
篠崎は、手首を後ろ手にひねりあげられ、縛られた挙句、女の用意したであろう車に押し込まれ、そこで意識は途絶えた。
彼の手にしていたコーヒーだけが、ただ喫煙室のテーブルに残されていた。
エリオットの本名が出てきました。
わかった途端こんな仕打ちに(^^;。。。
今回こういう感じの話なのですが、こういうところからじっくり書くサスペンスとかミステリもありかなあと思っています。ちょっと違う形で。(サスペンスなのかな?




