記憶の彼方に・・・。
さて、あっちの話とクロスオーバーしてまいりました。
わからないかたは「異世界相棒!」の方をご覧くださいませ(^^;。
「ちわ~、三河屋です~!奥さん、なにかご用事ございますか~?」
開けた扉から、ラウの陽気な挨拶の声が響く。
「あらあ、三河屋さんこんにちは。今日はね、・・・ってあなた三河屋さんなんていう屋号じゃなかったでしょ?お店??」
奥さんと呼ばれた女性は、重厚な造りの部屋に似合わず、気軽な感じでそう答えた。
確か、魔女と言われているこの町の重要人物だと聞いていたが、装いも至って軽装で、街中の冒険者のような出で立ちである。
地図を広げ眺めながら、こちらを振り返った。
年齢不詳の、好奇心が漂いつつも深みのある瞳が印象的な女性だ。
「まーまー。今日はそういうことにしといてくださいよ。そちらの異国の故郷ではそういうのが店員の挨拶と聞いてましたよ?」
ラウは軽妙にアヤシイ笑みを口の端に浮かべ、そう嘯いた。
「ふふ・・・、なかなか博識なのね?まあそこの席へ。私のほうは用事はないけど、そっちが用事あるんでしょ?」
「さすが、魔女殿。ご明察で。この者、今私が保護しておりますが、そちらのお仲間なのかと気になっておりましてね」
ぐいっと後ろから押し出されて、エリオットが前へ出た。
「初めまして。ここでは、エリオット・チャンと呼ばれております・・・」
なんとなくきまり悪いようなもじもじした様子で挨拶をした。
すると、
「おい、古道具屋。魔女と会いたい用事のある時は、私か副官をまず通せと言ってあるだろう、何度目だ、あんたな・・・?」
険のある声が横から響く。
「おや、これは魔導士殿。ご機嫌うるわしゅう」
「機嫌がうるわしい様子には見えないだろう?」
箒でも逆さに立てそうな声音の、魔導士と呼ばれた男はそう言って近くまで来た。
背の高さはラウより少し低いくらいだろうか、でもまあ平均的に見て高いほうであろう。
顔は整っているが、目つきの鋭さと威圧感がすごい。
・・・平均・・・的な??・・・どこの平均、なのだ?
エリオットは頭の隅にそんな疑問が浮かぶ。
そこへ、魔女の声が小さく響いた。
歌だ。
この歌は。
聴いたことが ある・・・。
彼女が歌の1番の歌詞を終える頃には、エリオットの眼から涙が一筋、零れ落ちた。
魔女は、エリオットに近づくとハンカチでそっと彼の涙をぬぐう。
「・・・あなた、私の知り合いじゃないけど、やっぱり日本人ね。・・・大丈夫、今記憶が無くてもちゃんと思い出せるわ。思い出したあと、一度向こうに帰りなさい。そしてどちらを選ぶか、鍵をあげる。こちらとあちらのどちらかをね」
「まじょ、さま」
「ラウさん。このひと、私の知り合いではないけど、同じ国の人だわ。記憶が戻るまでこっちで預かってもいいけど、どうする?」
ラウは一呼吸置いてから、
「魔女殿、お申し出ありがとうございます。ですが、話し相手にしばらく預からせてくれませんかね」
「珍しいわね、この人、連れ候補?・・・まあそれもいいでしょうね。何かあったら相談してくれてもいいわよ、・・・門番さん?」
そう笑顔で、最後は小さくささやく。
「かしこまりました、次期管理人殿」
ラウは口元だけに笑みを薄く浮かべるとそう言って、先ほどの魔導士に一礼すると、エリオットを連れて部屋を出て行った。
「・・・そうか、魔女殿は・・・。この中つ国に残る魂のものではないだろうに、あの旦那殿の願いを叶えるためにここに居るんだな。もちろん、現管理人殿に喚ばれたこともあるだろうが」
ラウは扉を開け、空に消えてしまうような言葉をつぶやいた。
その言葉に不思議な顔をしているエリオットに、
「いや、君も。ここにいるあちらの世界の人間はほとんどがここにいるはずのない者なのに、なにかの理由でここに居る者ばかり、か」
真昼の太陽は二つ輝き、眩しいばかりだった。
課長相変わらずだな・・・、じゃなくて、割といろいろな核心をついてますが、長い話じゃないからいいかなって・・・(^^;。。。(作者)




