竹刀の剣士、異世界で無双する 39 領都大会 予選リーグ 幕間
39 領都大会 予選リーグ 幕間
予選リーグは6試合ある。俺たちのチームは3試合だ。初戦の次は少し休憩ができる。休憩の間に、チームの組みなおしをした。中堅の村長さんが負傷したので、全体のバランスが変わって来る。
これからは、先鋒 ランス
次鋒 リーファ
中堅 シラックさん
副将 メリサさん
大将 グリッツさん
という布陣で戦うことにした。
試合場の隣の練習場で、切り返し、基本打ちの練習をさせながら、ほかのチームの練習も見る。全体として、足さばきを重視している選手はいないようだ。ほとんどの選手が、両足を並べて立っている。一部の選手は、片方の足を前に出して構えているが、重心は前か後ろのどちらかに偏っており、かかとも床につけている。足を素早く動かして戦う、という考え方が無いようだ。しかし、マーローさんは両足のかかとをわずかに浮かせて、素早い動きをしていた。マーローさんのような足さばきは一般的ではないのだろうか?
「マーロー殿。あなたのように、かかとを浮かせている選手が見当たらないのですが、かかとを浮かせる構えは、一般的ではないのですか?」
俺は、隣のマーローさんに聞いてみた。
「そうですね。私もかかとを浮かせるようにと、教えてもらったことはありません。あの構えは、練習するうちに自然と身に着いたものです。かかとを浮かせたほうが、素早く動けるので、私のスタイルに合っていたのです。そんな私が、『蛇』と嫌われたのですから、かかとを浮かす構えを取る人は、いないと思います。」
マーローさんは、自嘲気味に答えてくれた。
「辛いことを聞いてしまって、すみません。でも、マーロー殿の言う通り、かかとを浮かせている人はいませんね。でしたら、うちが有利です。」
おれは、マーローさんに謝りながら、自信を深めた。
「ヨウスケ殿。どういうことですか?かかとを浮かせるか浮かせないかで、そんなに変わるものですか?」
横から、バルガスさんが聞いてきた。
「バルガスさんも、足をべったりと床につけるタイプでしたね。そういう構えは、相手を迎え撃つのには適しているかもしれません。でも、自分から技を出したり、相手の攻撃に合わせて素早く動くことは難しいのです。」
と話すと、横から村長が話しかけた。
「その通りです。ヨウスケ殿は、あのシラックを相手に、足さばきだけで勝ってしまわれた。あの技を見て、私ももう一度戦ってみよう、と思ったのです。今でこそ、シラックは足さばきを身につけたのでかなり強くなりましたが、初めのころはヨウスケ殿に手も足も出ませんでした。」
村長が、俺の黒歴史を話したので、とても恥ずかしい。
「ともあれ、バルガス殿も、足さばきを身につければ、二刀の技をもっと生かすことができますよ。」
と、苦笑いしながらごまかした。
「ほう。私もまだ、強くなれると?」
バルガスさんは、キラキラとした目で俺を見る。
「はい。剣道には二刀流の教えもあります。バルガス殿は基礎はできていますので、熱心に稽古すれば、今よりもっと強くなれるはずです。
マーロー殿の技も、まだ進化の余地はあります。私の元の世界には「合気道」という闘技術があります。「合気道」とは、相手の力や勢いを利用して勝つという術です。マーローさんが求める闘技術に近いと思います。」
と俺が話すと、マーローさんは、
「アーイキドーですか?どんな闘技術でしょう?」
と質問する。
「アーイキドーではなく、合気道です。言葉で説明するより、見せたほうがいいですね。
マーローさん。私の手を握って、引き寄せてみてください。」
俺は、マーローさんに右手を出した。マーローさんは左手で俺の右手を握り、自分のほうへ引き寄せる。その瞬間に、俺は右足を前に出して間合いを詰め、左手の親指と人差し指の間でマーローさんの首元を突く。マーローさんの体勢が崩れたすきに、俺は右足でマーローさんの両足を払う。マーローさんが後ろに倒れるところを、握っていた手で止めた。
「私の師匠は、合気道も修めていたので手ほどきを受けました。本当に初歩の技しか使えないので恥ずかしいのですが、合気道と言うものは、こういうものです。」
俺は、マーローさんを立たせながら話した。
「なるほど、相手の力や勢いを利用するということは、こういうことですか。勉強になりました。」
マーローさんが頭を下げる。
「いえいえ、先ほども言いましたが、本当に初歩の技しか使えないのです。私がマーローさんに教えることはほとんどないので、一緒に技を磨いていきましょう。」
「ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。」
マーローさんに深々と頭をさげられた。




