竹刀の剣士、異世界で無双する 36 襲撃の後始末 1
36 襲撃の後始末 その1
「うむ、作戦は大成功じゃ。みんなよくやった。」
村長がみんなをねぎらう。
「おかげさまで、家族を取り戻すことができました。本当にありがとうございます。このご恩にどうしたら報いることができるでしょう?」
マーローさんが頭を下げた。奥さんと子どもたちも一緒に頭を下げる。
「そうじゃな。マーロー殿は、今年の領都大会には出るのかな?」
村長が問いかける。
「いいえ。去年は、領都大会、イーファンド地区大会、王都大会と駆け上がったのですが、私の闘技術はあまり受け入れられなかったようで。『蛇』の様だ、言われて気味悪がられまして・・、今年は出場を断られました。」
「ほう、あなたのような使い手を断るとは、領都には強い人が多いのですか?」
俺が思わず尋ねる。マーローさんより強い人が出てくるとなると、うちのチームではちょっと厳しいかもしれない、と思ったのだ。
「いえ、おこがましい言い方ですが、わたしの知っている範囲ではそこまで強い人はいないと思います。新たにどこからか雇ったのでなければ・・・。」
「えっ?雇う?領都大会に出るには、その村や町の出生届が必要なのですよね?よそから雇うことができるのですか?」
俺の疑問に、『やっぱり!』と言う顔をしているのはグリッツさんだ。
「グリッツさん、何か知っているんですか?」
「いや、詳しいわけではないが、領都では、何年も前から出生届を売りに出したという噂があってな。」
「出生届を売る?」
俺は頭が?マークで一杯になった。
「マーロー殿。詳しく知っておるかの?」
村長がマーローさんに話を振る。
「はい。私も詳しくはありませんが、私の前の優勝者は北のノーチラス地方出身だと聞いたことがあります。その人は、王都大会に行けなかったのですが、そのあとの消息は聞きません。おそらくは、始末されたのかと・・・。」
びっくりだ。領都で、そんな不正が行われているとは。
「ふむ。これは、根が深そうじゃのう。わしらの手には余るわい。」
その通りだ、闘技大会のルールをめぐる争いにかかわるには、俺たちでは知識も、経験も、人脈も足りない。今は無理だ。
「そうですね。出生届の問題は今は置いておきましょう。ではマーロー殿は、領都側は今年も強い人を雇うかもしれないと考えているのですか?」
「はい。私の出場を断ったということは、それなりの強者にあてがあるということでしょう。」
なるほど。マーローさん以上の使い手が相手とは、これは厳しいな、と考え込んだところで、シラックさんが発言した。
「村長。では、我らの村でマーロー殿を雇ってはいかがですか?もちろん選手ではありません。選手たちの練習相手としてです。」
その手があったか!ナイスだ、シラックさん!
「そうですね。このチームのコーチとして雇いましょう。練習の相手だけでなく、対戦相手の情報もほしいですね。それに、マーロー殿なら相手の分析も得意でしょう。試合中のアドバイスも手伝ってほしいところです。」
「ふむ、どうじゃなマーロー殿?」
村長さんが聞くと、
「私でよろしければ、お役に立てるよう努力いたします。よろしくお願いします。」
「では、このまま、マーロー殿はわしらとともに行動してもらうことにする。ただし、マーロー殿はこの領都ではそれなりに顔が売れておるじゃろう。申し訳ないが、マーロー殿はもうしばらく死んだことにしておいて、普段は覆面をつけてほしい。」
村長が告げると、
「了解しました。」
とマーローさんは頷いた。
そのあと、マーローさんと家族は宿の一室に入っていった。奥さんや子どもたちの疲れを癒したいのだろう。襲撃に参加した者たちもそれぞれの部屋に帰っていく。もう、夜明けも近い。部屋には、村長さん、グリッツさん、シラックさんと俺が残った。




