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竹刀の剣士、異世界で無双する 34 マーローさんの家族奪還作戦

34 マーローさんの家族奪還作戦


 領都に入ると、なるほど、聞いていたように人口過密になっているようだ。2階までは石造りやレンガ造りの建物だが、3階以上は木造になっている建物が多くある。中には6階だてのアパートのようなものもある。前世で地震大国だった日本人としては、安全性が危ぶまれるが、この国では地震は起こったことがないそうだ。門の近くは貧民街になっているようで、細い路地がたくさんあり、ぼろをまとった裸足の子どもが走り回っている。一応、住宅地のあちこちに小さな広場があり、井戸が作られているようであるが、下水はないようで、町のあちこちに糞尿をため込む蓋つきの肥溜めが作ってあるようだった。この、肥溜めが畑の肥料に利用されているらしい。「人の糞尿は、肥料としてはあまりよくない。」と聞いていたが、この町では、多すぎる糞尿の処理に困っているのだろう。大通りにまで、臭いが漂ってきた。

 馬車に揺られて、大通りを進むと、がらりと風景が変わった。木造の集合住宅は無くなり、石やレンガ作りの3~4階建ての建物が増える。ここが中層区民の場所らしい。建物の1階は、店や工房になっているところが多い。それなりに、見栄えのする服を着ている人が通りかかる。俺たちの宿はこの中層区民街にあるそうだ。毎年使っているが、例年は10名ほどの利用が、今年は37名になっている。宿屋の主人もこの人数は想定外だそうで、分宿を提案された。いつもの宿屋に20名。隣の宿屋に17名だ。村長はその条件を飲んで2宿分の料金を払う。

「大丈夫ですか?お金は足りますか?」

と聞くと、

「心配するな。この時のためにためてあった金を使うだけじゃ。」

と心強い言葉。

「では、お世話になります。」

と、頭を下げた。

 さて、部屋割りも終わり、村長の部屋で作戦会議だ。メンバーは、村長、グリッツさん、シラックさん、俺、シーダさん、ロッケスさん、グリーガーさん、ミネルバさん、ヨナスさん、そしてマーローさんだ。マーローさんは村長と同部屋になっている。

「まずは執事のシャイトス邸の位置じゃ。」

村長の声に、マーローさんは領都の地図を出す。大まかな区画と、道路が書いてあるだけの簡単なものだ。

「シャイトス別邸はここ、中層区民街と、上層区民街の境目にあります。別邸の周りは壁があります。壁の外は、小さな森になっています。別邸の中には、護衛兵が10人ぐらいいます。」

マーローの指さしたところに、俺は木で作った赤駒を置く。

「正門はこの大通り側にありますが、反対側の路地に裏門もあります。両方とも、警備兵が5、6人います。」

俺は、門のそばに小さい赤駒をおいていく。

「門のほかに、この辺りの壁は崩れています。周りは小さな森なので、隠れるのに都合がよいでしょう。崩れているところは、身軽なものなら突入可能です。向こうが警戒していなければ、普段は兵士はいません。」

俺は壁の崩れた位置に、×印を書き、こちらの小さい白駒を置く。×印は二か所もあった。

「屋敷の見取り図はありませんが、私が屋敷に呼ばれた時のことを思い出すと、私の家族は地下牢にいると思われます。」

地図の屋敷の駒の隣に、「地下牢」と書いていく。

「執事のシャイトスはどうしましょうか?」

ヨナスさんが尋ねる。

「わしらの襲撃を受けて、出てくるようであれば戦う。出てこなければ放置じゃ。」

村長が答える。

「シャイトスの強さはどのくらいですか?」

グリッツさんが尋ねる。

「昔は武官として鳴らしたそうですが、今は贅沢に慣れて、見る影もありません。」

と答えたのは、マーローさん。

「地下室のカギはどこですか?」

俺が尋ねると、マーローさんは

「それは、分りません。地下室の入り口近くにあるのか、シャイトスの執務室にあるのか・・・」

と苦しそうに答えた。

「ふむ、情報が足りないようじゃ。が、仕方あるまい。今から情報収集をするのは、時間がかかるのう。兵は拙速を尊ぶともいうそうじゃ。シャイトス側がこちらの情報を持っていない今こそ、スキがあると見るべきじゃの。」

村長が言った。「兵は拙速を尊ぶ」なんて、こちらの世界にも兵法家の孫子のような人がいたのだろうか。と思っていると、村長が続けた。

「では、作戦はこうじゃ。

 まず、正門からは、シーダ隊とロッケス隊が襲撃をかける。同時に裏門はヨナス率いる弓隊じゃ。目的は、門付近を混乱させ屋敷の護衛を引き出すことじゃ。そして、ヨウスケ殿率いる子ども隊、グリーガー隊、ミネルバ隊が壁の崩れ目から侵入する。ヨセフはグリーガー隊についてくれ。ビスナールはミネルバ隊じゃ。グリーガー隊は正門へ向かい、護衛兵と戦いながら、中から正門を開ける。ミネルバ隊は裏門を開けることがまずは任務じゃ。ヨウスケ殿と子ども隊は、屋敷内に突入。奇襲で屋敷内の護衛をできる範囲で無力化し、屋敷のメイドに話をつけて、執務室へ案内してもらう。そこで、執事のシャイトスを拘束。シャイトスを人質に取りながら、地下室へ案内させるのじゃ。ほかの者も、持ち場を制圧後、ヨウスケ殿と合流じゃ。マーロー殿は、裏門から入ってもらい、できる限り早くヨウスケ殿と合流じゃな。そして、マーロー殿の家族を救い出したら、もう一つの崩れた壁を使って逃走じゃ。

 今回は速度が何よりも重要じゃ。じゃから、ヨナスの弓隊には、毒矢を使うことを許可する。ほかの隊にも、剣や槍に毒を塗ることを許可する。

 捕まえたシャイトスじゃが、今後使えるかもしれん。一応は殺さずにつれてきてくれ。無理なら始末してもかまわん。

 そうじゃ、無抵抗の者はなるべく殺さんようにしてくれ。こちらの顔が見られるのはまずいので、全員覆面をしてくれ。一応、物取りの犯行に見せかけるため、屋敷内の財宝は奪ってくるのじゃ。じゃが、見える範囲のものでよいぞ。財宝を探してうろうろしておって、捕まったら間抜けもいいところじゃからな。

 マーロー殿の家族を助けられたら、いったん貧民街に逃げ、しばらくしたらこの宿に戻ってこい。

 何か、質問はあるかの?」

俺たちに否やはなかった。

「では、今晩、夜更けに決行じゃ。それまでに隊の者には言い含めておくように。そうじゃな、マーロー殿の遺言を守るため、家族を救いに行くといっておくとしよう。」


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