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竹刀の剣士、異世界で無双する 33 領都入場

暑さにぼんやりしていて、投稿を忘れていました。申し訳ありません。

33 領都入場


 領都は、高い壁がそびえる城郭都市だった。壁の外は広々とした畑作地域になっている。8月の今、黄金色に小麦が実り、収穫を待っている。村長の話では、冬小麦らしい。一面の小麦畑の中を、馬車が進む。領都に近づくにつれ、旅人や馬車の数が増えてきたので、少しゆっくりと進んでいく。都市を囲む高い壁は、石垣でできている。村長の話では、大きさのそろっていない石を積んでいくのには、特殊な技能が必要だそうだ。それで、都市の人口が増えた今も、新しく壁を作り直すことは難しいらしい。また、領都の門は一つの街道につき3つあるらしい。中央の1番大きな両開きの門は、お貴族様専用。その左側に、商人などの馬車隊が通れる中型の門。右側には、平民や徒歩の旅人専用の小さな門があるということだ。

 俺たちは馬車隊で、領都大会出場者なので中型門に並ぶことになる。門で通行証を見せて、荷物を確認してもらうらしい。そこで、問題が持ち上がった。マーローさんは、荷物置き場の空き樽に隠れてもらうことにしたが、14人のごろつきどもをどうするか、と言うことだ。麦畑の中ほどにある休憩小屋付きの広場で馬車を止め、村長、グリッツさん、シラックさん、俺が相談を始める。

 ごろつきどもには、マーローさんは死んだと伝えてある。なので、そのまま盗賊として、門番に引き渡すという方法もある。もう一つは、俺たちの護衛として、旅の途中で雇ったという形にしてしまう方法がある。グリッツさんは、引き渡すほうを主張した。そのほうが面倒がないということだ。それもそうだが、俺は護衛にしてしまいたいと思った。一つには、捕まってからここまでの、ごろつきどもの態度が非常に良かったこと。もう一つは、これから領主の執事シャイトス邸を襲撃するにあたって、人手がほしいことだ。さすがに襲撃に正選手を連れて行くわけにはいかない。でも、村から来た護衛隊にもなるべくケガはしてほしくない。なので、ごろつきどもを使いたいと思ったのだ。村長もシラックさんも、俺の考えに賛成してくれた。そこで、ごろつきたちと話すことになった。

 休憩小屋の裏にごろつきどもを集めて、村長が語り掛ける。

「のう、ごろつきどもよ。もうすぐ、領都に着く。お主らを雇ったマーローはすでに死んでおる。そこでわしらは、お主らの扱いについて、決めなければならんことになった。

 一つには、このまま盗賊として兵士に引き渡す、と言うものじゃ。お主らは、領都付近の盗賊退治のつもりであったらしいが、わしらは盗賊ではなく領都大会出場者じゃ。大会出場者を襲ったものは、九属縛り首と決まっておる。また、お主らがわしらに負けたところは、マーローの雇い主が確認しておるそうじゃ。お主らが、いくら『だまされた』と言っても、取り合ってもらえんじゃろう。

 もう一つは、わしらの護衛になることじゃ。わしらは領都大会に出るつもりじゃ。しかし、わしらは領都にはあまり歓迎されておらんようじゃ。お主らのように、誰かが邪魔をしてくるかもしれん。一応護衛は連れてきておるが、人数は多いほうが良い。わしらは貧乏な村じゃから、十分な賃金は払えんかもしれん。しかしきちんと護衛の仕事をして、生き残ったのであれば、ダヒトの村に住むことを許そう。畑の開墾も許す。運悪く死んでしまったものについても、家族がいるのなら、ダヒトの村に迎えて仕事を与えよう。

 さあ、どちらを選ぶ?」

 うん、選ぶといっても、選択肢はないよね。確実に家族もろとも殺されるか、運と実力で生き残りを目指すかだもんね。村長って、やっぱり悪辣あくらつかもしれない。などと思っていると、

(村長が、悪辣あくらつなのではない。お主が甘すぎるのだ。生き残りをかけて戦うことは、当たり前ではないか。)

イシャの念話が届いた。そうか、平和な日本で剣道を楽しんでいた俺には、この「生き残る」という感覚が抜けているのかもしれない。剣持先生の「常在戦場」とは、まさにこの「生き残る」ことを目指していたのではないか。剣道は確かに強い。しかし、生き死にではなく、競技の要素が増えてしまったのかもしれない。その甘さが、マーローとの立ち合いに出て、4連撃の最後の甘い踏み込みになったのではないか。

(そうだね、イシャ、ありがとう。どうも、俺は生き残るという感覚が甘いようだ。反省するよ。)

と返事をした。

 さてごろつきどもは、村長の話を聞いて、ぼそぼそと相談を始めた。しかし、ほとんど選ぶ余地がないのは明白だ。先頭の一人がおずおずと手を挙げて、

「俺は、村長に従います。」

と言った。すると、続いて何人かが手を上げ、最終的には、全員が護衛の任務に就くことになった。そこで14人を、3人と2人の5組に分け、護衛組のシーダさん、ロッケスさん、グリーカーさん、ミネルバさんの下に3人組をつけ、弓を使える2人はヨナスさんの下につけることにした。

 全員の縄を解き、装備品を返す。

「もし、不審な動きがあれば、今度は即座に切り捨てる!」

とグリッツさんがダメ押しをしていた。

 隊列を整えて、マーローさんを樽の中に隠し、俺たちは門に向かった。

 村長が、門番に通行証を見せ、護衛の数に違いについて説明する。その間に、兵士たちが馬車の中を確認していく。領都大会出場者と言うことで、確認はすんなり終わり、領都に入ることができた。


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