竹刀の剣士、異世界で無双する 28 リーファ
28 リーファ
あたしは、リーファ、10歳。南子ども組のメンバーだ。リーダーのティングとは幼馴染で、南子ども組をまとめる役目を、ティングと一緒にしている。
村長に、
「村を強くするために、剣道を習ってみないか?」
と声をかけられて、ティングと一緒に名簿に名前を書いた。
そのあと、ヨウスケ師匠の練習、稽古といったっけ、それを受けた。
師匠の稽古は、衝撃だった。あたしのような子どもが、大のおとなに打ち込むことができ、勝つことができるのだ。ティングとは違い、素早く間合いを詰めたり、牽制の技を出したりして、相手を追い込んでいくのは、あたしのスタイルに合っているようだ。
そうやって男のおとなの人に勝ちながらほかの試合を見ていると、同じ女性のメリサさんの試合が目についた。メリサさんは、あたしほどスピードが速いわけではないけれど、相手の間合いや、相手が打ち気になったところを潰すのが上手い。
あたしはいつの間にかメリサさんを「メリサ姉さん」と呼んで、稽古に誘うようになっていた。あたしは、一人っ子だ。貧しいダヒトの村では、たくさんの子どもを作ることは敬遠されるらしい。あたしは一人っ子で、両親に大切にされてきたのだから、その境遇に文句を言ってはいけないことは分かっている。でも、メリサさんのようなお姉さんが居たら、・・と思ってしまう。美人で、物腰の落ち着いたメリサさんは、私の理想のお姉さんなのだ。
そんな姉さんだけど、剣道の稽古は厳しい。メリサ姉は間合いの取り方が上手くて、あたしが素早く間合いを詰めても、落ち着いて一歩下がるだけで間合いを外す。メリサ姉の動きを誘っても、簡単には乗ってこない。こんな冷静な人は初めてだ。
「ねえ、メリサ姉さん。」
あたしは、自分から声をかけた。
「どうして、姉さんは私の攻めに乗ってこないの?」
あたしは、直球で質問してみた。メリサ姉は、少し動揺していたが、答えてくれた。
「きっと、あなたの攻めが分かりやすいからでしょうね。単純に間合いを詰めるだけ、竹刀を動かして隙を作るだけでは、簡単に誘いに乗れません。次の一手を考えれば、自分が打たれることは想像できます。なので、わたくしは誘いに乗らず、次の一手を見極めようとしているのです。」
メリサ姉さんの言っていることが分からなくて、詳しく教えてもらうことにした。
「そうですね。例えば、リーファが一足一刀の間合いからぐっと間合いを詰めてきたとします。」
それは、あたしがよく行う攻めだ。
「多くの人は、あなたの攻めを警戒して、逆に自分から先手を取ろうとして、面打ちや小手打ちを繰り出すでしょう。」
その通りだ。ほとんどの人はそうしてきた。
「でも、そうすると、こちらが動く分、あなたにスキをさらすことになります。あなたもそこを狙っていたのでしょう。出端ごて、摺り上げ小手、摺り上げ面、などいくつかの応じ技が使えるはずです。
なので、わたくしはあえて仕掛けず、あなたの次の手を見極めようと考えたのです。」
「どうして、そんなに余裕があるのですか?」
「余裕と言うものは、ありませんね。常に必死です。でも、相手の狙いが読めたのなら、それを避けたり、利用したりするのは、当たり前ではありませんか。」
メリサ姉さんは、特別なことではなく、当たり前のことだ、と言う。なるほど、剣道と言うものは、相手の次の手だけでなく、その次、また、その次をも想定して戦うものなのですね。どうやらあたしは素早さだけで、強くなった気になっていたようです。もっと強くならねばなりません。




