竹刀の剣士、異世界で無双する 27 村内大会 決勝トーナメント
27 村内大会 決勝トーナメント
さて、準決勝リーグも終わり、勝敗数で勝ち上がったのは、村長のコサロさん、門番長のグリッツさん、副団長のシラックさん、そしてイシャの四人だ。これは、順当と言えるかもしれない。組み合わせは、俺の独断で、コサロさんーシラックさん、グリッツさんーイシャにした。今まであまり当たっていない組み合わせだ。
第一試合は、赤がグリッツさん、白がイシャになる。
「始め!」
と審判の俺が声をかける。
両者とも、慎重に間合いを詰めている。イシャは狼の癖なのか、頭を低くして、地を這うように進む。対して、グリッツさんは中段のまま相手の間合いを計っている。うん、さすがグリッツさん、いい構えだ。竹刀の握りも柔らかいので、どんな攻撃にでも対応できそうだ。
間合いが詰まった。イシャがすっと頭を上げ、グリッツさんの竹刀を正面から見つめる。と、そのとたん、グリッツさんの突きがイシャの口に向かった。イシャは、慌てず体を左にずらして、突きを横から噛みついて止める。まさか突きを噛みついて止めるとは思わなかったのだろう。一瞬グリッツさんの動きが止まった。そこで、すかさずイシャは右足で竹刀を抑え、頭を竹刀の下にくぐらせて、グリッツさんの右ひざを噛んだ。
「ひざあり!」
俺は、思わず白旗を上げた。イシャのアクロバティックな動きに目を奪われていた。この動きに対応するのは、俺でもすぐには無理だ。イシャの闘技はまさに狼流闘技術になっている。グリッツさんも同じことを考えたようで、二本目は放棄した。試合が終わっても難しい顔をしている。イシャの技にどう対応するか考えているのだろう。
準決勝第二試合は、赤がシラックさん、白が村長さんである。
「始め!」
の合図で、両者とも一足一刀の間合いにまで進み出てきた。シラックさんは剣先を回すように右から、左からと中心を取ろうとしている。対して村長さんは竹刀を動かさず、どっしりとした構えを見せている。シラックさんが左右から攻めても、村長さんは動じないので、シラックさんはいったん仕切り直そうと一歩下がった。そこを村長さんはスキと見たのか、一歩大きく進み、シラックさんの手元をたたこうとした。相手が引いたところを攻めての小手だ。しかし、シラックさんはそれを予想していたように、軽く半歩後ろに跳びながら竹刀を振り上げた。村長の小手が空を切る。すかさずシラックさんの面が決まった。小手抜き面。基本技の一つだが、ここまできれいに決まったのはなかなか見たことがない。しかも、手の内を強く絞っていたため、防具越しでもかなりの衝撃を与えたようだ。
「面あり!」
俺は、赤の旗を上げた。村長は面打ちがかなり効いたようで、二本目を放棄した。
さて、いよいよ決勝戦。赤が狼のイシャ。白は副団長のシラックさん。二人のどんな技が出るかワクワクしてきた。
「始め!」
審判の俺の合図で、まず飛び出したのはシラックさん。狼は5mぐらいなら一気に跳べると知っているのだろう。やや、遠間で中段に構える。対してイシャは、頭だけを下げて後ろ脚は力を入れて張ったままだ。これは、思い切って飛び込み、一撃で勝負をつける構えだ。
と思ったら、イシャがシラックさんの左側に跳んだ。シラックさんも体の向きを変えイシャに正対する。竹刀の握りを柔らかくしているので、竹刀がぶれることもない。イシャはそのまま前に突っ込むかと見せかけて、今度は右に跳んだ、しかも、連続の二段跳びだ。これにはシラックさんも追いつけず、体軸がぶれた。そこをすかざすイシャはシラックさんの右ひざに噛みつく。
「ひざあり!」
俺は、赤旗を上げた。シラックさんは、なすすべなしと言う表情で二本目を放棄した。
第一回村内大会は、イシャの優勝に決まった。




